番外編~涙の向こう側side千秋②~
「修学旅行! 一緒の班になろうよ!」
今や大親友のたまちゃんにそう言うと、たまちゃんも笑顔で
「もちろんだよ!」
と即答してくれた。
二人で手を取り合っていると、
「なぁ、田上と添田。俺らと同じ班にならないか?」
バスケ部の石橋が声を掛けてきた。
(……はいはい、どうせ狙いはたまちゃんでしょ)
そう思いながら見ていると、
「ら?」
たまちゃんが、きょとんと首を傾げる。
「そう、俺ら」
石橋はそう言って、隣にいた石塚さんを指差した。
(あぁ、やっぱり。石塚さんは“誘うための口実”ね)
そう納得しかけたところで、ふと視線が止まる。
たまちゃんの隣の席で、さっきまで寝ていたはずの人物──田川だ。
石橋と石塚さんに、縋るような目を向けている。
(だったら、自分で誘えばいいのに……)
そう思いながら傍観していると、
「え? 別にいいけど、男子は石橋君だけ?」
と、たまちゃんらしい頓珍漢な質問が飛び出した。
石橋が軽くズッコケる仕草をしてから、
「そんなわけないじゃん。聡と俺と小野っち!」
満面の笑みで答える。
その瞬間、たまちゃんの表情がわずかに曇った。
(なるほど……田川が直接誘えない理由は、これか)
そう思って見ていると、石橋がすぐにフォローに入る。
「もしかして、迷惑?」
この辺りは、さすがというか抜かりがない。
こういうところ、本当に上手い男だ。
「え? 何で? そんなことないよ」
無理に笑うたまちゃんに、
「良かった~」
そう言ってから、
「田上たちなら、繭花を任せられるから」
と話をまとめる。
──あくまで
“田川はオマケ、主役は石塚さん”
という体裁を崩さない。
(いや、見事だな……)
そう感心しながら横を見ると、
たまちゃんの隣でずっとハラハラしていた田川が、
ほっとした顔をしている。
(青春だなぁ……)
どこか一歩引いた場所から、そんなふうに眺めていた私が、
このあと自分も恋をすることになるなんて──
この時は、思いもしなかった。




