旅立ちの朝
「ここ…は…」
俺は布団に寝かされていた。薄暗い部屋だ。
「目が覚めたのか、良かった」
男の声がした。男は水を差し出した。
「確か、俺、森で刺されて…」
そうだ、俺は刺されて…俺は生きているのか。
腹には包帯が巻かれている。
「君が盗賊に刺される所をちょうど見てね、俺の家に運んで治療したよ。無事で良かった」
「ありがとうございます…見ず知らずの俺なんかを助けてくれて」
「いや、いいさ。ところで、君の名前は」
「焔…日輪焔です」
男の表情が一瞬変わったような気がした。
「俺は暁天道だ。よろしく」
その言葉が言い終わるより先に俺の手は男の首に伸びていた。が、躱された。既に奴の姿はなく、背後から声だけが聞こえた。
「少なくないからね、俺を恨む人間は」
奴は驚く様子もなくそう言った。
「俺はお前を…お前を殺すためだけに…ぐっ」
刺された傷から血が吹き出す。
「落ち着け、話を聞かせてくれないか。今の君に俺は殺せないしね」奴は俺の包帯を巻き直しながらそう言った。
「いいぜ、話してやるよ」確かに剣も手元にない
今の状態じゃ勝ち目は無いだろう。
それに村が滅んだ理由も知りたかった。
「十年前、俺の村、煌の紫峡村はお前に滅ぼされたんだ。大切な人達も皆死んじまって俺だけが生き残っちまった。なんで…なんでお前は…」
「紫峡村か、覚えてるよ。あの村は禁忌に触れたんだ。君を生かしておいた理由もそこにある。真実を知りたくはないか。俺に着いてくれば教えてやる」
「ふざけんな!俺は十年間お前を殺すためだけに生きてきたんだぞ!」
「今の君なぞ返り討ちにしてやるぞ。傷が治るまででもいい。着いてこないか」
「目的はなんだ」
「さぁ、なんだろうな」
「あぁっ…くそっ…むかつく野郎だ。まぁいい。
こんなとこで犬死するわけにはいかねぇんだ!
従ってやるよ!けどな、お前が隙を見せれば
いつだって殺してやる!覚悟しとけよ」
「頼もしい限りだ、では準備をしてくれ。
明朝には出発する」
こうして俺たちの旅が始まった。
燃えるような暁の朝だった。




