第1話
太陽の日差しがたっぷりと降り注ぐ落ち着いた瀟洒な室内。
中央にはローテーブルと対面式のソファが置かれていて、青年が腕を組んで座っている。
側にはお仕着せを来た少女が立っており、彼女はテーブルの上に綺麗に畳まれた衣服をずらりと並べていた。
「本日のお召し物はどれにしますか? 滑らかなシルクの黒いシャツ、それともガラスのカフスがポイントの白いシャツでしょうか?」
意気揚々と話す少女に対して、青年は目を瞑って長い睫毛を震わせている。
「おまえは一体何をしている?」
尋ねられた少女は目をぱちぱちさせてから首をこてんと傾げた。
「何って、お召し物の準備に決まってるじゃないですか」
怪訝そうにしていたものの、やがて合点がいったように顔の前で手を合わせる。
「もしかして着替えのお手伝いが必要ですか? それなら喜んでさせていただきます!」
頬をほんのり赤く染めながらじりじり迫っていくと、これまで目を瞑っていた青年の目がカッと見開かれた。
「違うだろミゼリア。おまえの本来の役目は世話係じゃない。俺の不老不死の呪いを解くことだろうが!」
青年がテーブルにダンッと拳を打ちつける。
ミゼリアは目を見開いてビクリと肩を揺らした。
しまった。少し怒りすぎただろうか。
「今のは……」
青年が謝罪しようと口を開きかけると、その前に黄色い声が上がった。
「きゃああっ、怒ったリシュアス様もめちゃくちゃ格好いい! 好き~!!」
顔を上げたミゼリアは両頬に手を添えてくねくねと身をよじる。
自分の想像とかけ離れた反応にリシュアスは目を丸くした。
それから、げんなりした顔でこめかみに手をあてると天井を仰ぐ。
「おまえのままごとに付き合うつもりは毛頭ない。仮にも魔女ならさっさと記憶を取り戻し、力の使い方を思い出せ!」
苦言を呈するリシュアスに対して、ミゼリアは唇を尖らせる。
「それは重々承知しております。私だってできることなら力を使ってリシュアス様の呪いを解きたいですよ。でも、それができない間は、お世話係として仕えるのがお役目です。そう、リシュアス様専属のお世話係として!」
ミゼリアは専属という部分を強調する。
「……本当に思い出す気はあるんだろうな」
リシュアスがジトッとした目でミゼリアを見る。
しかし、当の本人はまるで話を聞いていなかった。




