27 修行
魔力の基礎修行は2週間に渡って行われた。
最初は各自の手元に立てた蝋燭の炎に魔力を込め、その変化が大きくなるように繰り替えし手をかざした。
これを繰り返すと自らの魔力の流れを意識的に感じ取れるようになる、とのことであった。
アイルは皆とは違い蝋燭の炎が動かなくなる魔力の特質があったので、皆から離れて風の吹き付ける屋上に出た。
3階建ての兵団事務所の屋上からは通りの雑踏がはっきりと見渡せた。何やらコモドドラゴンという羽なし竜の一種がどこか近場で獲られたらしい。通りの人々が茶灰色を下竜の下等種に群がり騒ぎ立てていた。なんでも腹を割いて気付け薬の一種を作るらしい。
アイルは通りから流れてくる雑音を遮断して集中した。
両手を蝋燭にかざした。炎の表面は研磨剤で磨かれたかのように硬質な表面へと変化した。リンダいわくこの様態の魔力を身にまとえば野生動物のごとく気配を消して隠密行動ができるようになるらしい。蝋燭から立ち上る熱い空気と夏の日差しにアイルの背中は汗ばんだ。僅かな微風を濡れた背中に感じた。硬質の炎は凛としてアイルの手元に屹立していた。
そのとき誰かが階段を登ってくる音が聞こえた。
「すげー。本当に固まってるよ」
声の主はハリスだった。彼は義勇兵団同期の輩じみた背の高い男だった。逆立てた茶髪に腕には入れ墨が掘ってあった。
ハリスが横からアイルんお手元を覗き込んだ。




