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Solomon's gate (試作_3回目失敗)  作者: にしてつ
2章 義勇に起つ
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22 領主への報告

 その日の午後、ブリスコー領主であり北部連合騎士長であるクルツ・フォン・ハインツベルグが前線から帰還した。

 北部連合は パルパット砦の奪還に成功した。

 北部に点在する名もない村の村民やトリコロ村の住人達も、ともにブリスコーに避難してきた。


 ブリスコー騎士団の城塞の一室では避難民の扱いについて喧々諤々の議論が繰り広げられていた。

「私は反対ですな、税も兵役も果たさないでいた人間たちを庇護するのは」隻眼の武官が異議を唱えた。

 クルツが応えた。「わしも若い頃は頭の固い騎士団の仕組みに反発して冒険者稼業をやっていたからな。独立心が強い彼らの生き方もわかる。彼らの大半は自給自足で暮らしているわけだしな。それが北部人の生き方として称揚されてきた部分もあるわけだ。ただ今回魔物の侵略に本格的に晒されて、国家の庇護下にあることの利点も重々理解できたはずだ。つまりこれは、順序が逆だが合法的な支配に成功したんだよ。過程はどうあれ我々は彼らを支配下においた。彼らは手づから自由の一部を手放したわけだから、当然今後は国家に忠誠を誓うだろう」

「本当にそうなるでしょうか」若い武官が言った。「納税を拒否し、内部から反乱を起こすやもしれません」

「国民の義務を果たさないものがいれば、ここから追い出すだけだ。出るぶんには拒まん。しかし庇護を求めるものには、そうする。まあ例えが悪いが人狩りに成功したとでも思え」

「エルフが保護されてることに意義を唱えるものもいます」モノクルをかけた官僚が言った。

「誰だ」

「ケルドン伯です」

「なるほどな。まあ当然かもな」クルツは嘆息した。「わしから説得しておこう」クルツは続けた。「して報告にあった灰の魔術師の一人を殺した少年達は。ルーベン殿の村民だという少年だが・・・」

「外に控えさせています」


 アイルとルイは扉を開けて部屋に入った。

 アイルは右後方に気配を感じた。振り返るとねずみ色のローブをかぶっていた男が部屋の隅に静かに佇んでいた。赤い唇が印象的な、吸血鬼を思わせる美しい男だった。彼はまっすぐアイルを観察していた。

「ほう、気づいたか」クルツは感心して声を上げた。

「して、君たちはアスタロトの像を見たそうだな。その時の様子を詳しく話せ」

 アイルたちは話し始めた。領主の館で灰色の魔術師たちに遭遇したこと。魔術師が生首に囲まれてアスタロトの像を崇拝していたこと。魔法使いは恐らく死体を操る魔術の持ち主であること。そしてデュラハンが襲いかかってきたが、村長が命をかけて相打ちにしたこと。

「その魔術師の死体は、館の地下にあるんだな?」

 アイル達はうなずいた。

「なるほど。地下室の水を汲み出せばいいんだな?しかしまあ放っておいてもいく分かは地面に吸われていると思うが・・・」

「バケツで汲み出せるので工兵を派遣すれば問題ないかと思いますが・・・」モノクルの官僚が応えた。

「アスタロトか。なるほど・・・」領主は独りごちた。そしてアイルたちに話しかけた。

「君たちは大魔法使いスタウダマイヤーを知っているかね」

「存じません」

「同じく」

「なるほど。以前より北部前線ではオーク共との戦争が続いているが、こいつらの裏には国賊の魔法使い共がいる。悪魔に魅せられ国を裏切り手先となった魔法使いたちが。その悪魔こそがアスタロトだ。アスタロトは信望するものに無限の叡智を授けるという。魔法使いたちはアスタロトの持つ無限の叡智に惹かれて頭が狂ってしまっているのだ。

 我々はこの魔術師たちを抹殺しなければならない。そしてゆくゆくはアスタロトを滅ぼす必要がある。しかしここで問題があるのだ」クルツは息を継いだ。「我々はアスタロトの魅力、というか思念のようなものについて測りかねてる・・・一体どれほどの距離と時間で魔法使いの精神が影響を受けるのか。それは精神の強さとは関係があるのか。そもそも味方の軍に裏切り者はいないのか・・・。我々は前線にあまり長く魔法使いを派遣できない。しかし奴らは魔法使いを使う。そして、我々が長年かけて編み出した極大魔法に大しては要塞の防御は力不足なのだ。そんなわけで、我が軍は常に戦力不足に悩まされている」クルツはアイルの目を真っ直ぐ見ていった。「君たちは魔法使いの一人を殺している。ぜひ義勇兵に参加したまえ。国家は君たちのような有能の忠誠を待っている」


謁見を終えた後、アイル達は認識票と遺書を騎士団に手渡した。文官は認識票の数字を調べて戻ってきた。

「兵の名はフルトンです」文官は言った。

「フルトン・・・」アイルは口元でその名を繰り返した。

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