最終話 結婚が認められた国
そして、一年後。
先輩記者は勇者太郎の国へ向かう馬車に乗せられ混乱していた。
「えっと、これはどういうこと?」
「転職しました! 今日から私は先輩の監査官です! 分かりましたか?」
「いや、全然わからない」
馬車の中には自分以外に後輩記者もとい、後輩監査官?が同乗している。
頭にはトレードマークのキャスケット帽、服装は神官の法衣、久しぶりに話をする彼女はなんだかすごくアンバランスな恰好をしていた。
「えへへ、さすがに四百年は長いので、先輩の返事を聞きたくて、勇者太郎さんの力も借りて、先輩の保釈勝ち取っちゃいました」
向かうところ敵なしの笑顔でニコニコ笑う後輩監査官。
なにが始まるのか、先輩記者は恐る恐る聞いた。
「えっと、これから僕はどうなるわけ」
「刑期を減らすために教会に寄付をしたり、慈善活動をしたり、勇者太郎さんの国のために働いたりするみたいですよ」
「あー……なるほど」
『そそ、俺っち本業魔法使いでいろいろヤンチャして牢屋に入ってたんだけど、太郎っちが条件付きで釈放してくれたわけ、いやー太郎っちマジ心にパンダ飼っているわ』
ふと勇者太郎の仲間の一人、金髪の男の台詞が脳裏よぎった。
つまるところ、彼と同じ立場になるということなのだろう。
「それで、その……先輩?」
頬を赤らめ、ニコニコしながら後輩監査官は先輩記者の顔を見つめてきた。
先輩記者は困ったように頭を掻いた。
「返事をきかせてください」
彼女の真っ直ぐな瞳に先輩記者が映った。
どれだけの努力をしてきたのだろうか、彼女の計りしれない努力に敬意を持ちながら、先輩記者は後輩監査官の視線をしっかりと受け止めた。
(まったく一度断ったはずなのに。本当、彼女にはかなわないな)
先輩記者は一つ大きな息を吐き、彼女に答えた。
「そうだね。一緒に暮らそう。だってあそこは僕みたいな異形でも結婚が認められた国なのだし」
先輩記者は、自分の気持ちに妥協はしなかった。
その言葉に後輩監査官は先輩記者に抱き着いた。
「じゃあ、結婚式ですね!」
「それはちゃんと刑期が終わってから」
「それはずるいですよ!」
言葉とは裏腹にニコニコと笑う後輩監査官、先輩記者もつられてクスリと笑った。
二人を乗せた馬車は、誰しもが自由に結婚できる国へと向かい進んでいく――――。
その後、勇者太郎の国には一つの出版社ができる。
立ち上げたのは先輩記者と後輩記者の二人。
その出版社から発行される雑誌には街並みやオススメの食べ物などの紹介され、勇者太郎の国のガイドブックとして観光客に重宝されることになる。
ガイドブックは何度か作り直されたが、この本のはじめには決まってこう記されている。
『ここは異種族でも結婚が許された国、誰しもが幸せをつかむために努力し、賑わい、それが大きな力となっている国である。様々な文化が混流し、あなたにとっても新しい発見があるはずだ。
しいては、これを読むあなたにも素敵な出会いがありますように』
これでおまけは完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もしよかったらご評価・ブックマークよろしくお願いします。




