終
――こうして、この白日宮は創建された。神舞いの言い伝えの裏側には、このような事情があったのだ。
はてさて、お前も、もう気づいていよう。
白梅様こそ、我らがお祀りする白日姫神様なのだ。
不思議そうな顔をしているな。確かに、これほどに尊い姫神様が、まさか、この世に生きていらっしゃったとは、思えまい。
しかし、これは真実なのだ。
これを見よ、若竹よ。何であるかわかるか。青星様が、この宮で、晩年をお暮らしになられた時、綴られた日記だ。白日宮の宮司が、代々受け継いできたのだ。
神舞いののち、青星様は、長きにわたって、よき政をお敷きになられた。その功績は、『天康事記』の通りだ。
とはいえ、あれは、一の皇子様であらせられる初星様の御下命により、編纂された記録。いわゆる、外聞の悪い出来事は、書かれていない。
初星様にとっては、民を混乱に陥れた父帝は、恥と映ったのであろう。もしかすると、幼い頃にお寂しい思いをなされたことも、お恨みになられていたやもしれないな。
とにもかくにも、真実は隠されてしまった。ゆえにこそ、白日宮の宮司となる者は、跡を継ぐ者に語り、日記を守り続けてきたのだ。
都合が悪いのなら、燃やしてしまえばいい、とな。本当に、お前は面白いことを言う。
そう捨てず、最後まで読んでみるといい。この日記を受け継いでいく意味が、きっとわかるであろう。
若竹よ。忠心篤き者の名を継ぐ者よ。お前に、この真実を託そう。これからは、お前が、この白日宮の宮司だ。一心に勤め、励みなさい。
もはや、我らのように、自在に変化できる者は、ほとんどいなくなってしまった。
今では、似姿を忘れてしまった者や、耳のみ、尾のみ、はてまた両方を持たずに、生まれてくる者も多い。
人と名乗り始めた、二本足の獣達。鉄の武器を振るう、あの者達が、いずれ、この豊葦原を統べるようになるだろう。
しかし、忘れるな。驕りは、破滅への一歩だと。大切な者を、取り返しのつかない境遇へと、追い詰めるのだと。
いささか、脅しが過ぎたな。そう、怖がらずともよい。白梅様は、確かに、おつらい目に遭われたが、決して不幸ではなかったのだから。
信じていないな。仕方ない。ここを見てみよ。文字が、茶色いだろう。
青星様が崩御なされたのち、初星様は、この日記を、火にくべられてしまった。
しかし、神意かな。一切焼けることはなく、この通り、全て元のままだ。その時に浮かび上がったのが、この文字なのだそうな。
どれ、わかったであろう。この日記を残す意義も、白梅様が不幸せではなかったという意味も。
お前には、まだ時がたくさんある。幾度も読み通し、感じたことを、どうか次に受け継いでいってほしい。
さて、話はこれで終いだ。教えるべきことは、全て伝えた。
あとは、お前に任せて、ゆっくり隠居生活でも、楽しむこととしよう――。




