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神狼物語【中編・完結】  作者: 清水 朝基
語り終えて
13/13

 ――こうして、この白日宮(しらひのみや)は創建された。神舞いの言い伝えの裏側には、このような事情があったのだ。

 はてさて、お前も、もう気づいていよう。

 白梅(しらうめ)様こそ、我らがお祀りする白日姫神(しらひのひめがみ)様なのだ。

 不思議そうな顔をしているな。確かに、これほどに尊い姫神様が、まさか、この世に生きていらっしゃったとは、思えまい。

 しかし、これは真実なのだ。

 これを見よ、若竹(わかたけ)よ。何であるかわかるか。(あお)(ぼし)様が、この宮で、晩年をお暮らしになられた時、綴られた日記だ。白日宮の宮司が、代々受け継いできたのだ。

 神舞いののち、青星様は、長きにわたって、よき政をお敷きになられた。その功績は、『天康事記(てんこうじき)』の通りだ。

 とはいえ、あれは、一の皇子(みこ)様であらせられる初星(はつぼし)様の御下命により、編纂された記録。いわゆる、外聞の悪い出来事は、書かれていない。

 初星様にとっては、民を混乱に陥れた(ちち)(みかど)は、恥と映ったのであろう。もしかすると、幼い頃にお寂しい思いをなされたことも、お恨みになられていたやもしれないな。

 とにもかくにも、真実は隠されてしまった。ゆえにこそ、白日宮の宮司となる者は、跡を継ぐ者に語り、日記を守り続けてきたのだ。

 都合が悪いのなら、燃やしてしまえばいい、とな。本当に、お前は面白いことを言う。

 そう捨てず、最後まで読んでみるといい。この日記を受け継いでいく意味が、きっとわかるであろう。

 若竹よ。忠心篤き者の名を継ぐ者よ。お前に、この真実を託そう。これからは、お前が、この白日宮の宮司だ。一心に勤め、励みなさい。

 もはや、我らのように、自在に変化(へんげ)できる者は、ほとんどいなくなってしまった。

 今では、似姿を忘れてしまった者や、耳のみ、尾のみ、はてまた両方を持たずに、生まれてくる者も多い。

 人と名乗り始めた、二本足の獣達。鉄の武器を振るう、あの者達が、いずれ、この豊葦原(とよあしはら)を統べるようになるだろう。

 しかし、忘れるな。驕りは、破滅への一歩だと。大切な者を、取り返しのつかない境遇へと、追い詰めるのだと。

 いささか、脅しが過ぎたな。そう、怖がらずともよい。白梅様は、確かに、おつらい目に遭われたが、決して不幸ではなかったのだから。

 信じていないな。仕方ない。ここを見てみよ。文字が、茶色いだろう。

 青星様が崩御なされたのち、初星様は、この日記を、火にくべられてしまった。

 しかし、神意かな。一切焼けることはなく、この通り、全て元のままだ。その時に浮かび上がったのが、この文字なのだそうな。

 どれ、わかったであろう。この日記を残す意義も、白梅様が不幸せではなかったという意味も。

 お前には、まだ時がたくさんある。幾度も読み通し、感じたことを、どうか次に受け継いでいってほしい。

 さて、話はこれで終いだ。教えるべきことは、全て伝えた。

 あとは、お前に任せて、ゆっくり隠居生活でも、楽しむこととしよう――。

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