プロローグ
「くっそ…眠い」
まぶたをこすりながら、無駄に長い通学路を歩く。
あいつが夢に出るようになってから、どうも眠りが浅い気がする。
授業中とかにうとうとしてる時には出てこないのに、夜になると決まって現れる。
でももう出てこないと言ってたし、まあいっかな。
「オッス隼斗。朝からさえない顔してるじゃんか、何だ寝不足か?」
「おはよ佐吉。ああ、それがさ、恋人が毎晩寝かせてくれなボフッ!」
「寝かしつけてやるよほら歯を食いしばれ」
「その台詞は殴る前に言うだろうが」
「ああ、そうだったなわるいわるい」
殴られた脇腹をさすりながらとりあえず睨んでみる。
睨むことしか出来ないのは、まともにやり合って勝てる気がしないからだ。
その今年の身体測定は164.2cmという高校二年生にしては小さめ僕に対しこいつ、佐吉は175を3cm上回るのだ。しかもただ身長が高いだけじゃない、その身体は無駄のない筋肉の集合体のようで、身体能力も抜群。体育祭ではどの競技にも引っ張りだこである。
体育祭だけじゃない、運動部からも引っ張りだこなのだ。しかしどれも興味がないから、と断っているらしい。
学力の方は中の下ほど。数学は学年でも五本の指に入るのだが、文系教科の点数が軒並みひどいのだ。
中学からの腐れ縁で、勉強とかも見てあげたときもあるけど、もともと頭の回転は悪い方では無いと思うんだけどなぁ…。
「なに人の顔じろじろ見てんだよ、ひっぱたくぞ」
ほんとにこいつは…。
「オハッ、二人とも!何!?朝からデートなのかな!?あ、もしかしてウチ邪魔しちゃった!?」
「「ひっぱたくぞ」」
「まって!?突然の武力行使はダメだと思うんだけど!?」
朝からテンション高めのひな子は弁明でいっぱいいっぱいそうである。
去年からこんな感じで、おっちょこちょいな所もあるけれど、面倒見がいいところもあったりする、根はまじめな奴なんだと思う。
「…って感じな訳で、ウチをたたく正当な理由はないから、たたかないでほしいんだけどな!?」
若干涙目でそう結論づけたひな子は、満足げな表情を浮かべながら校門の方へ駆け上がっていった。
そのすらっとして長い脚は健康的な肌色で、黒ソックスによってより一層白っぽく感じた。脚以外も手も胸も首も胸も、すらっとしてる。
「今なんかものすごく隼斗を殴んなきゃいけない気がしたんだけど?」
「気のせいじゃないかな?」
僕も校門へ駆け上がりそう伝える。なんだこいつ、心読めるのか?気をつけるか。
「ならいいけどさ」
「俺はさきにいくぞ」
「まってよーウチも行くー」
いつも通りの朝の事であった。




