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番外編1 相川健次の観察日記1

番外編、相川視点です


今更ながら、全てフィクションです

初めて皆川慎一郎という人に会ったのは、自分がまだ29才の時、彼がアメリカ支社から、本社の海外事業部次長として異動してきた時だった


33才という若さでの異例の人事

当時の部長がもうすぐ定年なので、彼がすぐに部長になると言うことは分かりきっていた


自分は海外事業部第1課に籍を置いていた

第1課から第3課まである海外事業部の各課長は、当然彼より年上だったし、自分の大ボスになる人だったから、色んな意味で興味があった



彼の着任初日

部長に連れられてやって来た皆川次長は、誰がどう見てもカッコイイと思わせる容姿をしていた


「本日付けで海外事業部に異動になった、皆川慎一郎です。よろしくお願いします」


顔もよければ、声もいい

しかも仕事が出来ると専らの評判

なんだこのパーフェクトな人間は


それが彼、皆川慎一郎の第一印象だった



彼が本社に帰って来て、ほどなく部長に昇進した

それから、皆川部長の仕事ぶりは凄かった


「アドバイスはすると言ったが、こんなことぐらいで僕の意見を聞くな。自分で判断しろ」

「ちゃんと相手方には説明したんだろうな?それじゃただの子供の使いじゃないか。情けない……もう1回行って来い」

「その件は、前にも言ったと思うが?同じ事を2度も言わせるな」


とにかく容赦なかった

それが正論だけに、誰も反論出来ない

年上の部下でさえ、同じように容赦なかった


でも厳しいだけじゃなく、成功したときはその事をちゃんと労ってくれて


「私の部下は、優秀ですから」


と堂々と言ってのけて、例えそれがほぼ部長のおかげで成功したものだとしても、部下の手柄としてくれていた


何かトラブルが起こったら、率先して自分が表に出て解決に導き、

「全責任は僕がとる。思う存分やれ」


と部下を見捨てるようなことは絶対しなかった



最初は、部長のやり方について行けないと嘆いていた海外事業部の面々も、徐々に部長を慕い、ついて行くようになった

自分もその中の1人だった



そんな中俺は、 何かと皆川部長の仕事を手伝うことが多くなった

部長は、俺のことを秘書にしたいと思っているようなのだが、なかなか第1課の渋谷課長がうんと言わないらしい

でも俺は、今の状況で満足していた


そんな時だった

見合いをすると聞いたのは

だからスケジュールを調整して欲しいと言われた

でも、部長は全く乗り気じゃなく


「父から薦められてね……多分どうにもならないだろうけど」


と言っていたのだ


俺もこの人には結婚は向かないだろうと思っていたので、ああそうですかとしか思っていなかった


ところがだ

見合いをしてからの皆川部長は、明らかに何かが違っていた

携帯をチェックしているときの表情とか、突然思い出したようにふっと笑ったりだとか、本当に些細なことだか、幸せオーラを醸し出しているのだ


そうして見合いから2ヶ月たった頃、結婚が決まったから、なるべく週末は仕事を入れないでくれと言われた

だから、聞いてしまったのだ


「結婚するんですか?」

「ああ」

「誰がですか?」

「僕だけど?」

「冗談ですよね?」

「こんなこと冗談で言ってどうする?」

「いつですか?」

「4ヶ月後」

「は?」

「新婚旅行にも行きたいから、それも調整してくれ」

「……マジかよ」


思わずため口をきいてしまったが、それを回りで聞いていた海外事業部の全員が悲鳴をあげたので、かき消された


部長の結婚

それはF社では、有名タレントが結婚するよりも遥かに大きなニュースだった


自分はいつも部長と行動を共にしていたため、他の社員にもいろいろ聞かれた

特に婚約者のことを

しかし、部長の婚約者を知らないので、答えようがない


でも、婚約者と会ったであろう週明けは、すこぶる機嫌がいいので、他の社員からは、スケジュールを調整して婚約者と会わせておけと、よく言われたものだ


残業していたある日

部長は婚約者に会えない日々が続いていて、多少イライラしていた

大きな仕事が控えていたので、しょうがなかったのだが、部長の婚約者はこんなに会えない人とよく結婚を決めたもんだと、最近思うようになっていた


そんな時、部長の携帯が鳴った

席でとって話していたので、仕事の電話かと思っていたとき、いきなり誰かの大爆笑が聞こえてきた

誰だよ!ただでさえ部長はイライラしてんだから、ちょっと考えろよ!


と思って見てみると、部長が大爆笑していた


はっきり言って、衝撃的だった


あの、冷静沈着、ポーカーフェイス、鬼の皆川と言われている人がが大爆笑しているのだ


衝撃を受けているのは俺だけじゃない

残業していた海外事業部の社員達も部長に釘付けだ


後輩の麻生はコーヒーを溢しているのにも気付いていないし、渋谷課長はパソコンの画面が「っ」だらけになってるし、第1課の唯一の女性、藤川さんはつまみ食いしていたポッキーが口から落ちたのも気付いていなかった


第2課と第3課の全員もそんな感じだった


それでも部長は笑いながらも電話で話していて


「呪われるようなことは」

「安心して」

「気をつけて帰るんだよ」

「また連絡する」


とか、聞いたこともないような声で喋っている

しかも携帯を切った後も、その携帯を見て愛おしそうに見つめている


俺達の視線に気付いた部長はいつも通りの部長に戻って


「何が言いたいんだ?君たち。僕が婚約者と話してて、笑っちゃいけないのか?」


と一気に空気を氷点下まで下げてくれた


その後の俺達は、はっきり言って仕事にならず


『婚約者の名前はショウコさんらしい』

『呪われるって何!?』

『あの部長から気をつけてと言う言葉が聞けるなんて』


と、社内メールが飛び交った


後々、この事は


鬼の皆川、大爆笑事件!


とF社に語り継がれることとなる


本人は知らないだろうけど……


読んで下さってありがとうございました

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