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現実に戻って
僕は小説を書き終えた。初めて書いた小説だったからとてもぎこちない言葉遣いや、ベタな展開、よくある突拍子もないハッピーエンド、我ながら酷い出来だと思った。でも、これが一番良い物語だと思った。僕が望んでいた世界がそこには広がっている。こうなれば良かったのに、こうなって欲しかったのに。そういう後悔と欲望の捌け口に、僕は小説を使った。もう、彼女はこの世界にいない。校門前で目が合った彼女も、教室でいきなり話しかけてきた彼女も、憧れの青春を話す彼女も、一緒に委員会に行った彼女も、図書室で話し合った彼女も、いつも元気に挨拶してくる彼女も、冗談を言う彼女も、遊園地に行った彼女も。どこにもいない。もう、どこにも。
僕はいまだに彼女から借りっぱなしの小説を持ちながら、その跡を辿っている。それにもう意味がないことも、どうしょうもないことも分かってる。でも僕は辞めることができなかった。そうしているうちに小説の中の全ての場面を巡り終えた。最後は夕方に綺麗な浜辺で二人がキスをするという、なんとも彼女が好みそうなベタで甘い展開だった。僕は一人で夕日が沈みかける浜辺に立つ。綺麗な海だ。夕日のオレンジが波に色を付けて美しい景色が広がっていた。ふと潮風が唇に触れる。僕の目からは、自然と涙が溢れていた。




