開拓村の夏まつり2
日が沈みだした頃、僕の発案で浴衣姿の魔法使いたちが湖畔に集まっている。
「平穏な暮らしと豊かな恵みに感謝します。偉大なる母神さまの慈悲に感謝します。偉大なる先祖の冥福をここに祈ります。そして……」
湖畔に作られた夏祭り会場にニウブの厳かな祈りが響いた。
そして、次を引き継いだキキョウが大声で叫ぶ。
「盛り上がって行こうぜー!!!」
叫びとともに、合図の雷を上空に放つ。
『ヒューーーーー、バーン! ぱらぱら……』
『パーン! ドーン!! パパーン!!』
すると、湖上の筏から光の筋が打ち上がり上空に大きな大輪の花が広がる。
そして、キラキラと眩い光が明滅して消えて行った。
「すごい……」
「きれい……」
騒ぐよりも先に、見たことのない花火の美しさに心奪われて、しばし静かに見つめる村人たち。
「さぁさぁ! 手持ち花火も有りますよ!」
ニウブに手持ち花火を渡されて、ようやくキャッキャッと騒がしくなる。
「こらクマ! 人に花火を向けるな!!」
「え? なんで!」
「熱いだろうが!!」
「クマちゃん熱くないよー」
「お前は、着ぐるみ来てるからだろう!!」
「あーこのキラキラをオシャレに使えないかしら?」
「服に縫い付けたら良いじゃん!」
「エル、そんなことしたら燃えちゃ……待って! 冷却魔法使いながらだったら行けるかも?!」
「うぃーヒック! カルゥミィアァ……。今夜は放さないんだからぁ~」
「もう酔ってるの? お祭りは始まったばかりじゃない。今夜は寝かさないつもりだったのに!」
「そういえば、打ち上げ花火おわったのに、タスクさんまだ戻って来ませんね」
村人それぞれが祭りを楽しんでいたころ。
そのころ、僕は湖に浮かぶ大きな筏の上に居たのだった……。
「花火打ち上げるのに夢中になってたけど。もしかして! 祭りの間、置いてきぼりなんじゃ……」
シギに運んでもらった僕は、自力ではすぐに湖畔に帰ることが出来ないのだった。
しかし、なんとか自力で筏を漕いで湖畔に着いたころには、すでに会場は閑散としていた。
「ぼくのなつまつりが……」
「タスクさん、お待ちしてましたよ」
紺色に金魚の模様が入った浴衣姿のニウブが、線香花火を持って僕を待ち構えていた。
「夏祭り、浴衣の少女と線香花火……」
松明のゆらぐ光に照らされたいつもよりチョットだけ大人びて見える少女。
夢でも見てるんじゃないかと、見とれていると。
「どうかしましたか? やっぱり、似合わないですかねぇ……」
「違う違う! すっごい……似合っててかわいい」
「さぁ、一緒に花火しましょ!」
僕は、久しぶりにニウブにドキドキしながら一緒に線香花火を楽しむ。
「線香花火って、花火なのになんか寂しい感じがしますね」
「うん。華やかじゃないし音も小さい。それが、祭りの終わりの寂しさを感じさせるからじゃないかな」
「終わっちゃいましたね……」
最後の線香花火が落ち、祭りの終わりを告げる。
しかし、僕はこの日のために用意しておいたモノを懐から取り出した。
「こ、こ、これ……! ニウブに」
僕は緊張で声を上ずらせながら、紫色に透き通る石のネックレスを渡す。
「いつも、ありがとう!」
「え? わたしに?」
「浴衣には……似合わないけど、いつもの服には良いと思って」
「ぴゃー! 紫のガラスなんて見たことないです!」
「いや、ガラスじゃなくて……。とにかく首に付けて見て」
「向きを変えると光が変わりますよ! すごいですよ!」
細かくカットされた多面体のアメジストは、向きを変えるごとにキラキラと光を乱反射していた。
はぐれ人の交易ついでの探索で見つけた石を割ったら出て来たアメジスト。
この日のために、内緒で加工していたのだ。
「ありがとうタスクさん! 大切にしますね」
目を輝かせながら嬉しそうにしているニウブ。
僕は、その姿が見られただけでとても幸せな気分に包まれていた。
夏は始まったばかり。
しかし、もうすぐ完成する水車が動き出せば、カルミアが僕の部屋へとやってくるだろう。
僕は、いつもそばに居てくれるニウブの事を思う。
初めて会った時から、心を奪われたんだけれど、この4か月近くの間にその人柄に触れて、だんだん思いは強くなっていった。
そんな彼女の望みを叶えることに、僕は耐えられるのだろうか?
ずっと、この瞬間で時が止まってくれたら良いのにと思いながら、僕は月明かりの下で立ち尽くし




