勧誘
そして、はぐれ人たちとの交渉の日。
熱気球に乗って、僕、カルミア、シギは砂金が採れた川の付近まで来ていた。
「きっとはぐれ人たちも、説明すれば分かってくれます! 特に、この気球とダイナマイトが有れば、魔法の力もそんなに必要ないって……」
「まぁ、ちょっと横風吹かせてるだけだし」
「火も料理の時くらいしか火力使ってないから、はぐれ人でも出来るでしょうね」
僕は、自分が再発明した科学技術が弱き立場のはぐれ人たちを平等な立場へと引き上げるものにする。
それこそが、人類の発展に寄与する科学の役割だと強く心に思った。
目的の川原に降りて行く気球。
はぐれ人たちも、見たこともない大きな物体が空から降りてきた事に驚き、森の中から川原に出てきた。
僕は一人、気球から降りたち、大声で呼びかける。
「お話があってきました!」
「お前は、この前の性奴隷!?」
「何しに来た?」
僕を見て警戒心を強めるはぐれ人たち。
「僕たちの開拓地。コハンの村に入植者として来ませんか?」
「いったいどういうことだい? なんで後ろにいる奴らじゃなくて性奴隷のおまえが喋る? バカにしに来たのか?」
はぐれ人のリーダーが険しい顔で言葉を投げかけて来た。
「それは、僕の発明品があなた達を勧誘する理由だからです。この発明品があれば、魔法力が弱くても村でも一人前として仕事が出来るようなります」
「信じられないね。お前は嘘が上手いじゃないか!」
「それなら、嘘偽りない真実の科学をお見せしましょう! これはダイナマイトというものです。魔法を使わなくても、強力な雷撃魔法と同じくらい破壊する力がだせます」
僕はダイナマイトを手に持って離れた場所に走っていき、大きな岩の下に置くと、導火線を伸ばしてはぐれ人の近くまでやって来た。
「耳を押さえて、火花の行方を見ててください」
導火線に火打石で火を点ける。
すると、導火線に火が付き、火花が線を伝ってダイナマイトへ向かい始める。
そして、大岩の下のダイナマイトに到達すると。
――ドッカ―ン!!!
耳をつんざく爆発音とともにバラバラになった岩石の破片が飛び散った。
「す、すげぇ……」
以前ニウブを手籠めにしようとしていたマッチョのイワが口をポカンと開けて言葉を漏らす。
「それだけじゃありません! あの大きな乗り物は気球と言って、はぐれ人の弱い火と風の魔力でも重い荷物を空に飛ばして運べるんです! 試してみませんか?」
「首領! 俺やってみたいよ!」
「まったく、好奇心だけは人一倍だねイワ……。良いよ、やってみな!」
カルミア達に代わって説明役の僕の他、イワと小柄な赤毛の少女が気球に乗り込む。
「こいつはアカネっつうんだ! 俺のスケさ」
その赤毛のかわいらしい小柄な少女を見て、イワってやっぱり僕と趣味似ているな思い。
そして、ほのかに顔を赤らめている少女に対して何とも言えない気分になった。
……あのまま捕まってたら、ニウブもこんな風になったのだろうか。
「おい! 何すれば良いんだよ?」
「あ? はい! まず、アカネさんが気球に火を送り込んで温めて下さい」
イワに声を掛けられて、ぼんやりとした妄想から復活した僕は気球の操縦法を指示する。
「すげぇ! ほんとに火の魔法だけで空に浮いてるぜ!」
夢中になったイワは、その後小一時間は気球の操縦に熱中した。
「どうですか? 科学の力が有れば、いずれ魔法が使えなくたって何でもできるようになるますよ! なので、首領! コハンの村の住人になりませんか?」
「確かに、お前さんの言う科学の力というものは凄いというのは分かった。だが……」
「だが?」
「だが、断る!」
「な、な、何でですか?」
「我らは、ゆえあってそれぞれの故郷の村を離れた者……。普通の村の暮らしなど無理だ」
はぐれ人たちの勧誘が失敗に終わるかに見えたそのとき、それまでおとなしくしていたカルミアが一歩前に進みでてきた。
「しかたないわね。では、もう一つ条件を加えるわ!」
カルミアは、首領の目を見据えて言葉を続ける。
「あなたたち、はぐれ人に10人分……。妊娠の最優先権を与えるわ!」
「ええー!!!」
僕は愕然としてはぐれ人を見渡す。
魔法が弱い分、たくましくなくては生きていけないはぐれ人たちはイワを含めてほとんどがスーパーヘビー級のマッチョ姉さん……。
イワの彼女のアカネなんて少数派のレアケース……。
「いや要らない」
「え?」
なぜかこの世界では貴重な子作りの権利を要らないと言う首領に、僕はほっと胸をなでおろす。
しかし、なんで要らないの?
「なぜなら……」
「なぜかしら?」
「なぜなら。我ら皆…………レズビアンだからー!」
………………………………。
「ああ、なるほど……」
それじゃ男なんて要らないよなーと僕は納得する。
しかし、それでははぐれ人たちを迎え入れるのは絶望的なのだろうか? と考えていると。
「それでも、受け入れるわ。どんな趣向があろうと村の他の人に迷惑を掛けないのであれば」
そう言うと、カルミアは首領のそばへ歩みを進め、
「ちょっと良いかしら」
と耳元にささやき、首領と二人で森の中へ消えた。
数分後……。
なぜか顔を赤らめて恥ずかしそうにした首領がカルミアと連れ立って森から出てきた。
そして、
「皆の者! 我らこれよりコハンの村の一員となるぞ!」と叫んだ。
「え? カルミアさんどうやって説得を……?」
「もう! カルミアのエッチ! だいきらい!!」
僕は、なぜか怒り出したシギを尻目に、交渉の成功とマッチョ姉さんたちによる貞操の危機が去り、ホッと胸をなでおろした。
そして、今回の勧誘によって村の人口は一気に30人も増えることになる。
新たな住居の建設や畑の開墾など、これから大忙しになるだろうことに、僕は気を引き締めたのだった。




