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284話:瞬間移動からパビリオンが始まりそうです

 ワープパネルを踏み、パビリオンのあるエリアへと移動した翔矢達。

 とはいえ相変わらず人混みは続いており、移動したという実感は得られていなかった。

 

 

 「あれだけ注意を受けながら立ち止まってしまうとは、マスターもウッカリさんですな」


 「アルネブ様、翔矢様はワープパネルというモノを初めて体験されたのです。

 わたくし達の感覚で、いきなり上手く使うというのが厳しかったかもしれません」

 

 

 2人の会話は翔矢の耳にも届いていたが、先ほど聞こえた声が頭から離れず上の空だった。

 

 「翔矢様、大天界祭中はワープパネルを使う機会も多いかと思いますので馴れてくださいね」

 

 

 翔矢の反応が無かったのでペネムエは思わず頬を人差し指で2回ほど突いた。


 

 「とっとゴメンゴメン聞いてたよ、次から気をつけるね」

 

 「聞こえていたなら良いですけど、それにしても上の空でしたね?」


 「何処かに可愛らしい女子でもおりましたかな?」

 

 

 冗談半分の質問だったが、ペネムエは思わず殺気を放ってしまった。



 「ちょっ違うよ!! えっと……ワープパネルって踏んでから他のワープパネルに移動するまでどれくらい時間経ってるの? 一瞬SF的な空間が見えたんだけど」

 

 「確か移動の時間は、わずか1ミリ秒に過ぎません、そのプロセスをもう一度ご覧になってみますか?」


 「いや……プロセスはいいや1ミリ秒、とんでもなく短いのは伝わった。

 じゃあ次にワープパネル分だ人と同じ空間にいて会話なんて事は?」


 「面白い着眼点ですね、仮に同時に踏んだとして移動は1人ずつです」

 

 「仮に1ミリ秒以内に踏んだと仮定しても会話する時間などありませぬな」


 「女神アルマ様のような時間停止魔法を使えれば理論上は……と言った所でしょうか?」 

 「そっか」

 

 

 回答に納得がいかないと訴えるかのように翔矢は顎に手を当て考え事を始める。

 

 

 「何か気になる事でも?」


 「いや、ワープしている時に名前を呼ばれた気がしたんだよね」


 「マスター、失礼ながら気のせいでは?

 1ミリ秒など名乗る事もできませぬ」


 「仮に誰かが翔矢様とコンタクトを図ったにしても非効率ですね。

 テレパシー系統の魔法を使った方が早いです」


 「盗聴される可能性は高まるがな、してマスター、会話の内容はそこまで大がかりな魔法を使用して伝えるような内容でしたかな?」


 「いや……挨拶程度な上に相手の名前も分からねぇ」


 「となれば気のせいか、馴れない空間で体が妙な反応を起こしてしまったのかもしれません」


 「そんな事より、いよいよ見えてきたのではないか? 大天界祭のパビリオンとやらが」


 目の前の光景に翔矢は息を呑んだ。

 恐らく、それぞれの世界を象徴していると思われる日本ではお目にかかれないような建物の数々。

 何となくヨーロッパをイメージするような建物が多いように見えるが、ガラス張りから黄金に金属まで、さながら世界観の闇鍋という雰囲気だ。



 「すっげぇ……これ全部見ていいの?」


 「もちろんです、大天界祭の期間が長いとは言え、パビリオン以外にもイベントは多いですし全部を見るのは厳しいかと思いますが」


 「どこから見るか……地球の似たようなイベントなら、この国の見たいとかあるけど、前知識がゼロだからな……」



 パビリオンの上には国旗のようなモノが掲げられているが、それを見たとて、どんな世界なのか、展示物は歴史的なモノなのか食事処なのか種類すら分からない。



 「ペネちゃん、オススメの世界とかないの?」


 「そうですねぇ……最初ですし日本人がイメージするザ・異世界みたいな所が良いですかね?」



 ペネムエは目を凝らし、上空を眺め適当な世界を探す。

 すると青の背景に雲の絵が描かれた旗が目に止まり思わず笑みが溢れた。



 「ここは……翔矢様にも馴染みがある世界が見つかりましたよ」


 「え? 俺に馴染みのある異世界なんてあったかな?」



 翔矢に考える隙を与える間もなく彼の右手を左腕でガッシリと掴んだ。

 その後アルネブと目が合い渋々と彼女の右腕を摘むように掴む。



 「おい……我は汚くないぞ?」


 「心が」」


 「手が汚いとかよりも傷つくのだが?」



 それ以上この話をすることなくペネムエは目をそっと閉じた。



 「本当は眉間に指を当てると、それっぽいんですが両手が塞がってしまいましたので」


 「と言うことはいよいよ?」


 「ふん、瞬間移動など珍しくもない」



 アルネブが怪訝そうな表情を浮かべると『シュン』と風を切るような音と気がついた頃には、違う場所に移動していた。

 様々な種類の建物が並んでいる今回は、ワープパネルの時よりも瞬間移動に実感が湧いたようで、翔矢は目を輝かせている。



 「すっげぇ!! 今のが本当の瞬間移動!? よく見えなかったけど!!」


 「よく見えてしまっては瞬間移動ではないので、しかしお褒め頂き光栄です」


 「ふっふふん、しゅ瞬間移動など適正さえあれば珍しくもないですがな」



 なにやら強がっている様子のアルネブ。

 ペネムエは勿論のこと、魔法についての知識の浅い翔矢にも分かるほど、その反応は露骨なものだった。



 「アルネブ様、素直に褒めて頂いても良いのですよ?」


 「何を!? 丁寧っぽい口調をして失礼な奴め!!」



 アルネブの背後には植物の根や葉がウネウネと生い茂り臨戦態勢。

 今日何度目かの一触即発となった。



 「アルネブ、ペネちゃんの瞬間移動って実際どれくらい凄いの!?」


 「さすが天使と言いましょうか、視界の範囲内の移動とは言え、制度と速度、まさに瞬間移動と呼ぶに相応しいですな、いかに適正と魔力が高かろうと、そうそう出来ることではございません」



 翔矢に意見を求められたのが嬉しかったのか、ペラペラと口が動いてしまったアルネブだが、得意気な表情を浮かべているペネムエと目が合い我に帰る。

 ハメられたのだと気がつくのに、そう時間はかからなかった。



 「おのれぇ!!」


 「そんな事より、なんでここの世界のパビリオン選んだの?」


 「このマークで何となくピンと来ませんか?」



 指刺された雲の描かれた旗を見上げ翔矢は考え込む。

 ペネムエの言う雲と言えば思い当たる節が1つしかない。



 「マジックラウド!?」


 「その発祥の世界クラウディアでございます」



 よく見ると旗だけでなくパビリオンの建物まで薄黄色の雲の形になっている。

 翔矢が吸い寄せられるように触れると、最高級のクッションに触れているかのような心地よさを感じ少しばかり眠気まで襲ってきた。

 それに気がついたのかペネムエは翔矢の頬をギュッと抓った。



 「いっ痛いよ……」


 「失礼いたしました、しかしクラウディアはリラックスという面では技術が桁外れの世界。

 多忙な日本の現代人では油断すると危険ですよ」


 「高校生だし社会人みたいな疲れ方はしていないと思うんだけどなぁ……」


 「ペネムエよ、そんなマスターにとって危険な世界をチョイスせずとも良かったのでは?」



 アルネブの言葉にペネムエはハッと大きなミスを自覚したような表情を見せ翔矢に申し訳なさそうに視線を送る。



 「いや……別に大丈夫だよ、それより混んでない内に入っちゃお?」


 「他の世界の文明、我も触れるのは初めて、心が踊りますな」


 「わたくしも馴染みがあるのでチョイスしましたが、世界をじっくり見て回った事はありませんでしたので」



 3人がパビリオンの中へと入って行くと、ペネムエが普段使っているようなマジックラウドに乗った青年が出迎えてくれた。



 「いらっしゃいませ、まさか私たちのようなマイナーな世界のパビリオンに早々に来てくださる方がいるとは」



 中は壁どころか床まで雲で覆われており、足場が悪い。

 歩いた経験の無いような床に、翔矢は数歩足を踏み入れただけでよろけてしまう。

 その様子に青年はハッとした表情を見せた。



 「あっ申し訳ありません、我々クラウディアの人間は常にマジックラウドで移動しておりまして、他の世界の方々のように地に足を付ける経験がありませんで、そこまで気が回らず」


 「いや……最初から足場が悪いと分かってれば大丈夫、田植えみたいなもんだ!!」


 「我も魔王なので普段は玉座に座っておる、歩かなすぎて足場など逆に気にならぬ」



 2人は足をバタバタさせ何とか足場に慣れようとしている。

 そんな中、ペネムエが自分のマジックラウドに乗っているのが見え気まずい空気が流れた。



 「郷に入っては郷に従えと言いますし……」



 その言葉に受付の青年は再びハッと何かに気がついた表情を見せた。



 「あっマジックラウドなら大量にありますので、出し物としてレンタルしましょう!!

 お2人様はどうなさいます!?」


 「「いる!!」」



 声を揃えた翔矢とアルネブは、いつの間にか腰まで雲の床に沈んでしまっていた。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。


 下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。

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