表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/280

12話:カフェから諦めが始まりそうです

 「びっくりしたでござろう?」


 「確かに腰抜かしそうになったわ。何者なんだあの人」


 声優の天道ユリアとの握手会が終わり、広場の休憩所のベンチで話す翔矢と卓夫。


 卓夫が自分の事のように話し、ドヤ顔しているのに翔矢は無性にムッとしたが、ビックリしたのは否定できない。


 「ファンの間でも、あの記憶力と初対面の人を一瞬で判断するのは、超能力だとか色々言われてるでござるが、詳細不明でござる」


 「おっ宮本じゃんか!!」


 「翔矢君、卓何とか君やっほーーーー」


 後ろから話しかけてきたのは、悠菜と真理。買い物帰りなのか、2人とも両手に袋を持っている。


 「おっ、こんなとこで会うとはなー」


 まさか、ここで2人に出くわすと思はなかった。

 

 翔矢は反射的に天道ユリアの写真集の入った袋を後ろに隠し、話題がこっちに行かないようにした。


 なんか女子には絶対に見られたくないと思ったからだ。


 「ふっ二人とも荷物いっぱいでどうしたんだ?」


 「真理ちゃんと洋服買いに来たんだー」


 そう言うと悠菜は持っているビニール袋を、バッっと前に出した。


 「全部服か?さすがにちょっと多くね?」


 女子の買い物事情は分からないが、その服の量は明かに異常に見えた。


 「これには深い深い理由があるんだ……」


 「ねーーー!!」


 質問に答えた真理に悠菜が目を合わせて、同調する。


 「深い事情でござるか?」


 「一生、女子と縁が無いであろう、卓何とか君にも教えて進ぜよう!!

 事のてん末を!!」


 なんか悠菜に変なスイッチが入ったようだが、ここにいるメンバー全員が、悠菜のこの状態を何度も経験したことがあった。






 *****





 

 「これは、まだ2年生になったばかりの事。

 1年生の時は別々のクラスだった私と真理ちゃんは、2年生になり同じクラスになり再開を喜んだのでした。

 しかし、そんな幸せな生活も長くは続かなかったのです。」


 何故か悠菜は、物語風に語りだした。

 

 まぁ稀によくある症状だ。

 

 しかし、これには真理はポカンとしている。だが、悠菜は気にする様子もなく話を続ける。


 「ある日、私と真理ちゃんが買い物に行こうと、駅で待ち合わせをすると、2人は自分の目を疑いました。

 なんと、2人は全く同じ田舎のファッションチェーン店『シママチ』の服を着ていたのです。


 恥ずかしくなった2人は、その日の予定を中止にして服を買うときは一緒に、まとめて買うと約束したのです。


 という訳で今に至るよー」


 ようやく説明が終わったようだ。


 「うん……それでいっぱい買ったのは理解したが、物語風に話すほどの事情じゃなかった気がする」


 翔矢はもちろん、卓夫と真理も呆れて目が点になっている。


 それはさて置き、悠菜の服はだいたいカジュアル系。対して真理は少し派手目のギャル系。


 この2人の服が被るとは、田舎のファッションチェーン店『シママチ』恐るべし。


 「病院で子供に本読んでる癖で、説明するときとかついつい物語風に話しちゃうんだよねー」


 「悠菜本当にいい奴だなーーー」


 「拙者には当たりが強いでござるが、やっぱり悠菜殿は優しいでござるよなーーー」


 「照れますなーーー」


 真理と卓夫が、悠菜の病院の話に涙ぐみ、悠菜が頭をかいて照れている。


 「2人とも落ち着け。病院でいくら子供に絵本など読んでも、そんな癖は付かん」


 こうなった時、つっこみを入れるのは、大抵翔矢の役目だ。


 しかし、最近は家に帰ると、もっと強烈なボケ担当がいるので、たまには休みたいと思ったり思わなかったりする。


 だが、話が大幅に逸れたお陰で、声優のイベントに参加しサイン入り写真集まで買ってしまった事には話が行かなそうだ。


 「おい、悠菜。そろそろ行かないとパンケーキ売り切れるぞ!!」


 「そでした!!そでした!!」


 真理の一言にいきなり悠菜も慌てだした。


 「どしたの?」


 あまりらしくない2人に翔矢が訪ねる。


 「新しくスタスタがオープンしたから悠菜と一緒に限定のパンケーキ食べに行く予定なんだ」


 「翔矢君も一緒に来る?」


 真理の説明の後に悠菜が誘ってきてくれた。


 『スタスタ』とは全国に展開する大手コーヒーチェーン店で、この前めでたくド田舎県にもオープンしてローカルニュースなどでかなり話題になっていて翔矢もコーヒー好きとしてかなり気になっていた。


 正直かなり行きたいが、そうなると、この後ろに隠しているサイン入り写真集が見つかってしまうかもしれない。


 どうすればいいか翔矢が迷っていると真理が口を開いた。


 「ちょっと悠菜―――!! 宮本を誘うのは、まぁギリOKとして今誘うとオタクの卓夫までついてくるじゃーーーん」


 と露骨に嫌そうな顔をする真理。


 悠菜はともかく、真理は本気で卓夫を嫌ってるにかと思ってしまう事がある。


 「あーーーそっかーーー盲点でしたわーーー

 翔也君。今回はごめんねーーーーー」


 悠菜が手を合わせて謝る。


 「ちょっと酷すぎではござらんかーーー」


 卓夫が怒りと悲しみが混ざったような何とも言えない声を出しているが今は無視して話を続けよう。


 「いや、スタスタは気になるけど女子同士で行く予定だったんなら気にしないで行って来いよ」


 スタスタは本当に気になっていたが、店ならいつでもある。


 今はサイン入り写真集を隠すことを何より優先すべきなのだ。


 「それじゃあまたな」

 「バイバーーーイ」


 「おう」


 真理と悠菜が別れの、あいさつをしながら立ち去ったので翔矢も軽くあいさつを返す。


 「スタスタのパンケーキ……食ってみたかったな」


 2人の姿が見えなくなったところで、翔矢の本音が漏れてしまった。


 「じゃあ、翔矢殿だけでも行けばよかったではござらんか!!」


 当然だが明らかに機嫌の悪い卓夫。


 「いや……俺だけ行くのも薄情だろ」


 「散々拙者の事を馬鹿にして、薄情は今更な気もするでござるが……じゃあ今からでも2人でスタスタ行くでござるか?」


 「……男2人でパンケーキはきついだろ」


 「あー言えば、こー言うでござるなーーー。じゃあ今日は解散にするでござるか?」


 「そうだなーーー」


 何か大事なことを忘れている気がするが……まぁいいかと翔矢は思った。


 今日は解散して帰ることにした翔矢と卓夫であった。






 *****






 翔矢と卓夫と解散した後に、有名コーヒーチェーン店のスタスタにやってきた悠菜と真理。


 「結構並んでますなーーー」


 「でも何か、あの行列変じゃないか?」


 商業ビルの店のあるフロアまで来て、スタスタの看板が見えるところまでやって来たのだが、真理が行列の異変に気付いた。


 「いやいやーーーーそりゃあスタスタならオープンして少し経っても混みますだよ。

 確かにすごい行列だけど特に変な所なんて……ギョギョギョ」


 行列に近づくにつれ全容があらわになり、悠菜も異変に気が付いた。


 「なんか卓夫君のそっくりさんがたくさんいらっしゃる?」


 行列の先はスタスタで間違いないのだが、行列に並んでいる人のほとんどが、クラスメイトの大久保卓夫と似たような雰囲気を持った人物であった。


 天道ユリアの握手会イベントの帰りに寄った人がほとんどと言うのが真相だが2人はイベントがあったことすら知らない。


 「スタスタって東京にあるというオ厶ライスに愛情注入する系の喫茶店だったっけ?」


 「違うと思う」


 キョトンとした顔で首をかしげながら放たれた悠菜の発言を、一瞬迷ったが真理は否定した。


 「真理ちゃん……今日はやめとこうか?」


 「だな」


 2人は、卓夫の事をネタとして馬鹿にしているだけで、特にオタクに対して差別意識などないつもりだったが、異様な雰囲気と自分たちの場違い感から、今日はスタスタを諦める事にしたのだった。






 *****






 場所は変わり翔矢の部屋。


 ペネムエは、考え事をしながら魔法の道具を床にズラリと並べていた。

 

 (暗殺の任務であれば、何度失敗しても1回成功すれば、それで任務完了と言っていいでしょう。

 しかし、わたくしの任務は護衛……何度守っても相手が諦めない限り永遠に任務は繰り返されます。

 そして翔矢様を死なせてしまう事はもちろん、怪我をさせる事もあってはならない。

 ……やはりこの戦い。守る側が圧倒的に不利……わたくしに務まるでしょうか?)

 

 魔法の道具はだいたい身に着けやすいようにアクセサリーや衣服の形をしているが、もちろん必ずしもそうとは限らない。


 ペネムエは1本の槍を魔法のポーチから取り出した。


 (神槍ブリューナク……天界学校を卒業する際にアルマ様から授かった神器……)


 自分の身長ほどもある大きな槍を見つめ再び考え込む。


 (さすがにこれは……使うわけにはいかないですよね)


 ペネムエはポーチにブリューナクをしまった。


 このポーチは魔法の空間につながっていて、制限なくなんでも入るすぐれものだ。


 (相手の天使は、敵であるかもしれませんが悪ではない……

 相手がどんな天使か分かりませんが、魔法を使えないノーマジカルでブリューナクの攻撃を受ければ無事では済まないでしょう)


 任務はあくまで護衛。アルマも敵の天使の殲滅などは決して望まないはずだ。


 ガタン


 「ただいまーーーー」


 翔矢が部屋の扉を開ける音とともに帰ってきた。


 「おかえりなさいませ」


 ペネムエはペコリと頭を下げて出迎える。


 「うわーーーこれ全部魔法の道具なの?」


 翔矢は床に並べられえた道具を見て唖然とした。


 「はい。まだ1週間ほど日はありますが、道具の調整など進めておりました」


 話ながらペネムエの視線は翔矢の持っている袋に行く。


 「何を買ってこられたのですか?」


 「ん……あぁ女の子に見せるの恥ずかしいけど、卓夫に強引に声優のイベントに連れていかれて、これはサイン入り写真集」


 少し恥ずかしそうに紙袋から天道ユリアサイン入り写真集を取り出す。


 「お綺麗な方ですね。こういう年上の方が翔矢様の好みなのですか?」


 「え……確かに綺麗だと思うけど、イベントに行ったの、たまたまだし好みって訳では……」


 思わぬペネムエの質問にあたふたしながら答えてしまった。


 嘘は言ってないが、こういう場合ペネムエの心の声を聴く能力ではどう聞こえるのか少し気になった。


 「左様でございますか……ところで翔矢様は、確か登山用のリュックを買いに行ったのでは?」


 「あっ!!」


 イベントだの何だのでペネムエに言われるまで完全に忘れていた。


 (登山は去年までのリュックを使おう……)


 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ