赤いナツミ
なんて言ってたらホテルのディナーでたこ焼が出てきた。
しかもセルフって。
こういうのは女子が得意かと思いきや、なかなかどうして男子の方が形になってる。
広い座敷の会場で漆器のようなお盆にいかにもホテルっぽい料理が並ぶ。
正直、綺麗にかしこまってる料理よりも地元に密着した居酒屋とかで出る塩分が高そうな料理の方が良いんだけどな。
「ミナ、そんな料理あったっけ」
隣に座っているミナのお盆の中には俺には無い料理があった。
「あぁ、たこ焼めんどくさいからもんじゃ風にした」
「…………」
まあ、味は変わらないか。
――――――
腹を満たしたらお次は風呂。
どうも野郎同士の裸の付き合いは苦手だ。
別に自信がない訳じゃないよ。えっ聞いてないって。
ま、しれ〜っとさっさと入ってしまおう。
このホテルでは男女別々の浴槽みたいだ。
ま、なにかを期待していた訳じゃないし〜。
「ちょっと〜待ったっ〜」
「どした、ソラ」
「そっちは女湯だ、カズ」
「お前はそんなキャラじゃないだろ」
「わりぃ、わりぃ」
さらっと大胆だな、カズも。
あっつ〜。
なんで世間一般の適温ってこんな高いんだろう。
ぬるいスペースも設置してほしいわ。
部屋に戻ると男子だけの部屋のはずなのに、なぜ女子がいる。
いわゆるイケイケな奴らだ。
そしてなぜ、風呂に入った後なのに枕投げが始まるのか。
「イテッ」
「わりぃ、ソラ」
「んのやろぉ〜」
「わ〜、ソラが怒ったぁ〜」
その後の俺の活躍はあらためて書く必要もないだろ。
枕投げの帝王の称号を手に入れた俺は疲れたのでホテルのロビーに足を運んだ。
一階のロビーは本来なら先生が監視として一人はいるはずだが、なぜかいない。
風呂でもいっているのだろうか。
ホテル特有の無駄に柔らかいソファに座って枕投げの疲れでも取ろう。
明るすぎない照明の下で、ゆったりとした音楽を鼓膜に響かせていると不思議な事に自分の部屋と勘違いしてくる。
目を閉じればたいした違いはない。
眠い。
「あれ、リーダーじゃん」
「んあっ」
「ってナツミか」
「隣、邪魔するよ」
二人掛けのソファを我が物で占領していた俺はナツミの襲来に無条件降伏をした。
「珍しいな、ナツミが独りなんて」
「えっ」
「あ〜、まあね」
ナツミは俺の方をチラリと見て大袈裟に視線を逸らす。
まあ、人それぞれだわな。
「リーダーは部屋戻らないの」
「みんな、トランプしてたよ」
「あ〜、パス」
「早く寝たいし」
俺も大袈裟にだるさを表に出してソファを深く座り直した。
「リーダーって面白いね」
ナツミが俺の真似をしてソファに深く座り直してなんか言ってきた。
なんか続きがありそうでちょっとめんどいな。
返答に困ってたらナツミが話を続ける。
「正直言って団体行動苦手なんだよね」
「でも、苦手オーラ出してたら居場所なくなるしね」
そう話すナツミの横顔は妙に大人に感じていて、俺は相づちをうつのすら忘れていた。
「リーダーもそういうタイプじゃないの」
「ってか、リーダーはやめろよな」
大人から一気に幼い笑顔に変え俺を年寄り扱いしてくるナツミ。
みんな、色々と考えて今の場所にいるんだな。
なんか自分があらためて考えなしの様な気がしてきた。
「お〜い、そろそろ部屋に戻れ〜」
スポーツ新聞片手に教頭が近づいてきた。
「「は〜い」」
俺達は素直に柔らかいソファから立ち上がり戻る事にした。
部屋があるのはこのホテルの十階なのでエレベーターに俺達は乗り込む。
扉を開けてナツミを先に乗せる。
「おっ、紳士だね、リーダー」
ナツミの冗談に俺は寝ぼけまなこの笑顔でスルーした。
「じゃあね、リーダー」
「あ〜い」
自分の部屋に戻っていったナツミはまた自分の居場所を確保をするために明るさを絞り出すのだろうか。
そう考えたら、少しナツミの背中が小さく見えてしまった。
「おっ、ソラ」
「どこいってたんだ」
「罰ゲームありのババ抜きやってんだ」
「負けたら好きな人に告白な」
部屋に入ると、悪のりしているクラスメイト達の元気な声が突き刺さってきた。
俺も少しは頑張るかな。居場所を確保するために。
って、ジョーカー入ってるし。




