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灰色の空  作者: 灰色の猫
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旅立ち


 いつもより早くセットしておいた目覚ましが仕事をする前にアラームをオフにする。



 修学旅行に行くと決めてくれたミナはレモンティーを飲んだ後すぐに家に戻った。


 そして朝早くに俺の家に来る事になっている。  自分の荷物を届けるためだ。


 俺に旅行用の荷物を預け、ミナと母親は朝早くに病院に父親の見舞いに行くからだ。

 ちょうど学校から空港に向かう途中にミナの父親がいる病院があるとの事で、道中ミナを乗せていくという形にしたらしい。


 急な話だったが、担任や教頭先生が許可を出してくれ、病院も特別に朝早くの見舞いを許可したとの事。


 その報告を昨日の夜に電話で聞いて俺はほっとした。俺もミナの事で荷造りが全然進まなかったからだ。


 当のミナは早口に決まった事を告げ朝の時間の約束をして電話を切ってしまった。


 なにか吹っ切れたようなミナの口調を電話越しに聞いて一方的な電話がなぜかおかしく思えた。



 まだ約束の時間までだいぶ余裕があるからシャワーを浴びる事にした。

 朝の空気はすっかり秋になり、特に理由もないのにいつもより温度を上げる。


 目が覚めていない肌に熱いお湯は刺激が強すぎた。風呂場で小踊りしながら徐々に慣らす。



 浴び終えると身体を冷まさないように熱いレモンティーの準備をする。

 この辺りでようやく雀達の出勤となる。


 やかんが鳴き出す前に今日は火を止める。雀達が驚いてしまう。



 それでも熱すぎたのか、俺の口腔内はびっくりして危うくコップを落としそうになってしまった。


 なんだかカッコつかないなぁと思っていたら約束の時間。

 厚手のパーカーを羽織り、レモンティー片手に玄関の外で待つことにした。



 レモンティーが飲みやすくなった頃、ミナとミナの母親が車で到着した。

 荷物も病院の前で載せたらと昨日の電話で提案したのだが、なんかバス会社が学校以外で長時間停める事に渋ったそうだ。

 だから俺が持っていくのが一番、そう俺のいないとこで決まったそうだ。なんだそりゃ。



 ミナと一緒に母親が出てきてお礼を述べながら頭を下げてきた。

 ひさしぶりに会ったな。お母さんもさすがにしんどそうだ。ここまで細くはなかった気がする。


 カップを片手に失礼な対応をしていた俺にミナがでかい落ち着いた赤色のキャリーケースを渡してきた。


「よろしく、ソラ」


「ミナ、これはでかくないか」


 俺が驚きながら受けとると


「お土産いっぱい買うからちょうど良いの」



 妙に納得してしまい続く言葉はなかった。

 受け取ったのを確認すると母親は再度頭を下げ車に戻る。

 ミナも車に戻ろうとしたが、思い出したかのように俺に近づいてきて、俺からカップを奪う。



「ん、ちょうど良いね」

 少し呆れながらカップをミナから受けとると異常に軽かった。

 全部飲みやがったな。


 笑いながらミナは助手席に戻り母親は運転席申し訳なさそうに何度も頭を下げていた。


 俺は気にしないでくださいと笑いながら、ミナ達を見送った。



 さすがに風呂上がりで外にいたからか、一気に寒く感じ家に戻りもう一度やかんに火をかけた。


 今度は家の住人を起こすつもりで目一杯やかんを鳴かせてやるつもりだ。


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