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灰色の空  作者: 灰色の猫
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たまのデート

ある日の二人です。

あまりにもヒロインしてないミナのために書きました。


 ある日の放課後。

 授業は終わりいつもと変わらない放課後。




「ミナっ」


 校舎の玄関で靴を履こうとしているミナを呼び止める俺。

 玄関に生徒の姿は少ない。この際、多くても少なくても関係ない。



「どしたの、ソラ」


 靴を履き終えたミナが外からの光を背中に受けて俺の方に振り替える。俺はまだ下駄箱に着いたばかりだった。



「一緒に帰ろ」


 付き合ってはいるものの、あらためてするこういう誘いはなんか照れる。



「いいよっ」


 ミナの笑顔は変わらず眩しくて温かった。普段のいたずらが無ければ、とは思うがそれも含めてミナなんだろうな。



 校門を過ぎて辺りを見渡す。見える範囲に学生はいない。



 俺は左側に歩いているミナの右手の甲に俺の左手をコツンと当てる。


 情けない話だが、いまだにスマートに手を握れないでいる。


 当てるのを合図にして、ミナは俺の手を握ってくれる。

 人指し指と中指だけだどね。


 恋人繋ぎなんて夢でしかしたことがないな。




「ちょっと家に、寄って、かないか」


 まだ何回かしか言った事のない台詞をミナがいない方向を見ながら呟いた。



「変な事しないならいいよっ」


 ミナは俺の前に立ち目線を合わせて笑顔で答える。



「変な事って」

「しないよ……多分」


 俺の答えを待たずにミナは俺の手を引っ張って歩度を速めていく。


 変な事しても良いって事かな。違うか。




――――――




「ソラぁ、ジンジャーエールが飲みたい」


 他人の部屋でくつろいでいるミナがさっそく注文してきた。

 なんで俺より先にベッドに横になってるんだよ。


「はいはい」

「ちょっと待ってて」


 当然の様に従う俺も俺か。





「おまたせ」


 二つのコップを持って自分の部屋に入る。意外な光景にさすがにびっくりした。



「おい、ミナ」

「ミ〜ナ〜」



 寝てるみたい。この短時間で。



 どうしよ。ジンジャーエール温くなるし。



 今なら、変な事してもばれないかな。いや、変な事じゃないし。ただ近くで顔見るだけだし。



「ミ〜ナ」

「寝てるよね」


「……」


 よしっ。頑張れ俺っ。



 あらためて、ミナの顔を近くで見るけど。


 肌がすげぇ。やっぱり男子とは違うなぁ。



 まつ毛長いし。

 たまに信じられなくなる。ミナが俺の彼女だって事に。


 俺は床に膝立ちしながら仰向けに寝ているミナをしばらく見とれていた。

 部屋は置き時計の一定のリズムで刻まれる音だけが唯一時が止まっていない証になっていた。





 もうちょい近くで。



 もうちょい。




 もうちょ……



「ソラぁ」


 パッとミナの目が開き眉間にきれいなしわが寄る。


 やばい……


 怒られるのを覚悟しながら顔を離して目を閉じていたら……


「っっっ」



 目を閉じていた分、不意に唇に訪れた衝撃を余計に劇的にした。



「変な事しようとした罰だから」


 白い歯を見せながらミナは声も出さずに笑っている。

 いやそこまでしようとは思ってなかったんだけど、とは言わないでおいた。




「ソラ」

「一緒に寝ようよ」


 え、ジンジャーエールはと思いながらもミナの要望に応える事にした。



 好きな人の吐息を感じる距離にいたからか、俺もすぐに夢の様な現実から夢へと旅立った。



 一時間かそこら寝てしまったようで目が覚めたら、今度は間近にミナの顔があった。



「おはよう」


 俺は呆けたみたいだった。



 そのあと飲んだジンジャーエールはぬるかったけど、なんかほっとした気がした。

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