食レポ
昨日、ぐだぐだながらも行動学習の方向性を決めた俺とナツミ。
今日の朝から早速俺はカズに、ナツミはアリサとケイコに提案してみる事にした。
「おっ、良いんじゃないか」
「俺、八ツ橋食べ比べしてみたい」
意外にもカズはあっさり提案を呑んだ。食べ比べできるかはまた別の話だが。
今日は授業で学習内容の打合せの時間を設けてはいないからまた放課後だな。ある程度まとまったら担任に提案してみるか。なにせあまり例が無さそうだからな。
「なにっ、八ツ橋がどうかしたのっ」
ミナが質問ついでに後ろの席から脇を狙ってきた。
甘いぜ、ミナ。
その程度の攻撃、今の俺なら……
「えっ、
八ツ橋食べたいっ」
不意打ちでユリカが横からタイミングをずらして脇を狙ってきた。
なんとか反応してかわそうとするが身体が動かない。
それもそうだ。
カズが俺の両腕をがっしり抑えて動けない様にしてるもんな……
「だっひゃひゃ、さひゅがにひきょひょうだ……っっ」
朝の教室に俺の悲鳴がこだました。
結局、ミナとユリカに脇を責められ質問に答える前に担任が来た。
やっぱり、この四人が一緒にならなくて良かった。まともに行動できる気がしない。
――――――
やっと放課後だ。
今朝の三人の攻撃の後、ずっと神経使って警戒してたから疲れた。いつもより長く感じたし。
「今朝の悲鳴はなかなか良かったよ」
ナツミが冗談交じりに自分の椅子を持ってきて俺の机に資料を置いた。
昨日とは違い、教室には俺らだけみたいだ。
「冗談言うなよ」
「カズまで協力されたら逃げ場がないんだし」
俺はその三人組がいないのを良いことに、椅子を浅く座り背もたれに首を置き教室の天井を見上げた。
思ってたより汚かった。
「そういえば、二人はどうだった」
俺は起き上がり、放課後に教室にいる意味を思いだしナツミに残りのメンバーの意思を確認した。
「二人とも賛成だよ」 「楽しそうで良いね、だって」
ナツミは京都大阪のグルメ雑誌に目をやりながら答えた。
ってか、行動が早いな。
「カズ君はどうだったの」
「カズも賛成だって」
「八ツ橋食べ比べたいっ、だとさ」
「じゃあ決まりだね」
あとはどんな風に食を学ぶか、何を食べるか、だな。
「ソラ君はなにか食べたいのはないの」
ナツミが雑誌から俺へと視線を変えて聞いてきた。
リーダーよ、何か良い案を出せよと言わんばかりの瞳だ。
「どうせなら、マイナーなのが食べたいよ」
期待に応えられたかどうかは置いといて先に話を進めよう。
「観光向けじゃなくて地元の人が好んでる物が」
「それを調べていけば食を通じてその土地の特色が見えてくるんじゃないかな」
言い終えてナツミの方を見たら、えらくニヤニヤしていてちょっと引いた。
「どうした、なんか変な事言ったかな、俺」
変わらずニヤニヤしているナツミに真相を尋ねた。気持ちが悪い。
「いやね」
「さすがリーダー」
「良いこと言うなと思って」
音の出ない拍手をしながらナツミはそう述べた。
「あ、ありがとう」
よく分からないがお礼を言っておこう。
「それじゃ」
「リーダーが良いこと言ったところで、今日は帰ろっか」
影のリーダーからの提案を呑んで俺達は帰る事にした。
なんかいいように扱われている気がする。
俺達が玄関に着いた時に、突如として外が暗くなり細かい雨が降ってきた。一気に水分が身体にまとわりつき手足が重たく感じる。あの天気予報士、珍しく当たったな。
「うそ〜」
「傘持ってきてないよ〜」
「あの予報士の事だから信じてなかったのに〜」
どうやらナツミの家と夕方のチャンネルは同じの様だ。
ここはもうひとつ、優秀なリーダーを演じますか。
「えっ、傘貸してくれるの」
「俺の家、近いしね」
「相合い傘してこっか」
「ミナに悪いからやめとくよ」
「おっ、お熱い事で」
「ありがとねっ」
「それじゃあ、また明日」
校舎の玄関を駆け抜け鞄を気休め程度の雨避けに使い帰宅部らしからぬ脚力で家路についた。
最近は秋の空気も感じられ、肌についた制服がひんやりと冷たい。
今日は熱い風呂に浸かろう。その後は冷えたジンジャーエールでも飲んでさっさと寝よう。
家に帰ればリーダーでもなんでもない。ただのおっさんくさいガキなんだよな。




