妬み
二学期に入り何週間か経ち、外で鳴くセミの声もなくなり相変わらずテンションの高い担任の声が響くようになったこの頃。
夏のジメッとした嫌な空気も薄くなり、乾いた晴れ空が続く様になった。もうすぐ秋かな……
季節は変われどミナの俺に対する脇腹攻撃は依然として続いている。
最近はユリカが事前に教えてくれるので俺が椅子で飛び跳ねる回数も減った。早く席替えがしたい……
席が近くなったからなのか違う要因があるからなのかは分からないが、カズが宿題を忘れた日は後ろの席になったユリカから見せてもらっている。
といっても、ユリカの場合は答をそのまま教えるのではなく解き方を教えている。
そのおかげなのかカズの最近の成績は徐々に上がってきている。
成績と同じ様に二人の親密度も上がれば良いのに……
その一方で俺とミナは。基本一緒に帰って、たまにミナが俺の部屋に来るだけで特別なニュースは何もない。
それどころか、ミナは最近カズと仲が良くなった。
元々男子とはあんまり絡まないミナだったが、席が近くになった事もあるせいかカズに絡む事が多くなった。
俺に脇腹攻撃が出来ないときはカズに仕掛けていく。
まだユリカがとっさにカズに対して話しかけられないのを良いことに、成功率がなかなか高い。
たまにユリカと一緒に野球部の様子を見ているみたいだ。
たしかにカズはかっこいい。
ハッキリとした顔立ちに抜群の運動神経。母性本能をくすぐる様なちょっと抜けたとこもある。
この気持ちはなんなんだろう。
この行き場のないもやもやしたものはどうすればいいんだろう。
―――――
「それは嫉妬だね」
姉から直球でそう言われた。
もやもやしたものを感じ始めてから俺はため息が多くなっていたみたいだ。あまりにも多いので、夕食中にため息を指摘され相談してみたら嫉妬だと言われた。
これが嫉妬。
恋愛ドラマでは欠かすことのできない感情だ。嫉妬するほど好きって事だよ、と補足されたがなんか割りきれない。
というか、自分のこんな勝手な感情でミナやカズにまで疑惑の念を抱いている自分が情けないし、申し訳なく感じる。
誰かが悪いわけでもないのに誰かのせいにしたくなる。
依然として箸の進まない俺を見かねて姉が更に付け足した。
「じゃあ、ソラは何かを頑張っているのか」
「そのカズって子に比べて負けない何かを持っているのか」
「ただ、好きっていうだけでは異性は振り向いてくれないよ」
「……ごちそうさま」
そう言い残し姉は食べ終えた食器を持って台所に行き、そのまま風呂場に行った。
その言葉を聞いて理解はした。だけど、納得は出来なかった。
たしかにカズは野球を頑張っている。同じ男の俺から見ても尊敬するし、そういうところに惹かれている女子もいるのだろう。
納得はできないというかしたくなかった。してしまったらこのもやもやした物が更に大きくなってしまいそうだったから……
「ごちそうさま」
俺は食器を片付け自分の部屋に戻ろうとした。すると母親が珍しく一言呟く。
「ソラはソラらしくいけばいいのよ」
「……うん」
俺は気のない返事を残し、自室のベットに横になる。音楽を嫌っていう程鼓膜に響かせて脳内を空っぽにしようと努力する。
それでも答は出てこない。
音楽プレーヤーの電池が無くなる前にいつしか自分の意識が無くなっていた。




