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灰色の空  作者: 灰色の猫
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23/51

おじゃま虫


 休みなく走り続けた俺達はすぐに学校に着いてしまった。


 走り終わったのに、まだ手を繋いでいる。


 もう少しだけ。





「ちょっと、プールサイドで休もう」


 ミナ先輩が提案する。

 俺はその提案を受け入れる。

 結果、手離しちゃった。


 ミナ先輩が座るので、俺もくっついて座る。大丈夫かな。


 さすがにうざったいかな。

 恐る恐る、ミナの顔を覗くと……



「なっ、なによ」


 目が合ってしまった。どうやら嫌ではないらしい。


「い、いや別に」

「夜のプールって、なかなか雰囲気あるよな」


 俺は照れ隠しに話題を逸らす。


「そうだね」

「みんなで授業で泳いでいる時とは大違いだね」

 そう呟いているミナを見ると、月の光をプールの水が反射し、ミナを淡いブルーで照らしている。

 しばらく俺は見ていた。今までもこんなミナの横顔を見れたかもしれないのに、自分が傷つくのが怖くて避けてた。



 今までの分を取り戻す様に、俺はじっと見ていた。


 さすがに、俺の視線に気づいて、見過ぎだと言わんばかりに俺を小突いた。


 不意に押されたせいで体制を崩し、ポケットから財布とあるものが落ちてしまった。



「もう、ソラったら大げさなんだから」

「なんか落としたよ」



 あっ、しまった。



「ソラ、これって……」

「いや、ミナ」

「いや、これにはワケガアッテネ」


 俺は動揺してしまい、うまく喋れない。



「やっぱり、興味あるの……」


 ミナが俺を見ながら、静かに聞いてくる。暗くて表情がわかりづらい。


「まあ、あるっちゃあるけど」

「でも俺にはまだハヤイカナ〜、なんて」


 早くも嫌われたかな。

 ミナが何も喋らない。




「あたしはね……」


「興味あるよ」


 えっ、まじで。



「だって、好きな人とする事だもん」

「手を繋ぐのだって、会話するのだって」

「キスするのだって」



「好きな人と繋がる事だって」


「わたしは……」

「ソラとならしてみたいな」

「もちろん不安はあるけどね」


「でも、ソラとならその不安も乗り越えていける気がする」



「ソラは……」

「私とじゃ、嫌かな」



「も、もちろん、嫌じゃない、よ」


 あ〜、男として物凄く情けない対応をしている気がする。

 どう対応していいか困っているとミナがおもむろに……



「ちょっ、ミナっ、何してるの」


「服を着てよっ」



 ミナは何も言わず、シャツを脱ぎ、下のホットパンツまで脱ごうとしている。



 ミナっ、ダメだっ。

 こんなとこで。

 俺も予習がまだ終わってないのに。



「何を考えてるの、ソラ」



 へっ。

 いやエッチな事考えてましたが……



「これ、水着だよ」


 はいっ……


 えっ、下着じゃないの……あっ、白い水着だ……どっちにしても、俺には刺激が……



「何を考えてたのかな、ソラ君〜」


 いや、絶対勘違いするでしょ、これは。



「っていうか、ソラも脱ぎなさいよ」


 そう言いながら無理やりパンツ一丁にされた。


 女子に乱暴された。もうお婿にいけない。



「さあ、泳ぐよ」


「えっ、まじで」

「ちょっと待っ……」


 問答無用でまたしても落とされた。


 体制を立て直し、辺りを見渡すとミナもプールに入り離れたとこに移動していた。



「さあ、エッチなソラ君こっこまでおいで〜」


 ミナが挑発してくる。エッチなというのは、この際認めよう。

 俺の泳ぎを披露するチャンスだ。



 ……少し時間は掛かったが、無事に辿り着けた。


「すごいね、ソラっ」


 ミナが自分の事の様に喜んでくれた。頑張ったかいがあった。


「ソラ、もう少し近付いて」

「どうした、なんかあったのか」

 俺が水しぶきを立てないようにゆっくりと近付く。



 するといきなり、ミナが俺の頭に手を回して身体を引き寄せた。


 それなりに勢いはあったのに。

 ミナはゆっくりとでも優しく俺の唇に自分の唇を合わせる。



 ミナは緊張しているのか、目を閉じている。

 俺も真似して目を閉じて、ミナの身体に手を回し更に身体を引き寄せる。

 お互いに心臓を感じる位に近い。


 やっと、やっとだ。


 ミナの鼓動を感じる事ができた。

 そして、俺の鼓動をミナに伝える事ができた。

 そうして、ミナとのキスを無事に終えた。


 今したキスを確認するかの様に、お互いを見つめあう。



「今のは頑張ったご褒美だからね」



「……足りないよ」


 俺がねだるように呟くとミナも応えるようにまた身体を引き寄せ合う。

 その時……


「あれ〜」

「ちくしょ〜」


「先越されたか〜」


聞き慣れた声が夜のプールに響く。



 えっ、カズの声。なんで今……



「あ〜」



「ソラ君とミナちゃんだ〜」


 ユリカの声もする。あ〜、せっかくの〜〜。


 俺とミナは無意識に距離を取る。



「なんだ、お前らも泳ぎに来たのか」

 カズが悪気もなしに、海パン一丁になり準備体操を始めている。



「お前らも……」

「カズとユリカは泳ぎに来たのか」


 俺は確認するように、あわよくば帰ってくれと願いながら質問した。



「いや〜、祭りで射的でどっちが多く当てるか勝負してたら、引き分けでさ〜」

「なんかお互い、譲れなくて」

「じゃあ水泳でもっかい勝負だってなってね」


 カズが淡々と話す。


 なぜ今っ。何度そう思ったか分からない。



 ユリカも水泳というか、


勝負事になると引かないみたいだ。



 俺とミナは呆れて、とりあえずプールサイドに上がった。


 でもタオルがない。さすがに夏といえどまずいな。



「じゃ〜ん」

 ミナが青い猫型ロボットの様にバックからタオルを取り出す。



「えっ、最初からここに来るつもりだったの」

「水着といい」



「そうだよ」

「わたしのプランとしては、ここでソラが泳げるのを確認してそのご褒美に、じゃあ付き合ってあげるって言うつもりだったの」


「ちょっと予定は変わったけどね〜」




「俺が頑張って告白したおかげで、ご褒美がキスに変わったわけだ」


「ま、そういう事」




「だあ〜」

「なんで勝てないっ」


「カズ君、まだまだ甘いよっ」


 もう一勝負終えたのか、カズが水面を両手で叩きながら悔しがっている。


「ソラっ、審判やってくれよっ」


 カズが無神経に、俺を勝負事に巻き込もうとしている。



「いってきなよ、ソラ」

 ミナがそう言いながらタオルを俺に渡してくれる。ちゃんと二人分持ってきたみたいだ。



「大丈夫、これから時間はたくさんあるから」

 ミナのこの一言で俺も審判になる決心がついた。


「わかった、いってくるよ」

 ミナからタオルを受け取り、気の利かない二人に合流する。もう邪魔されないようにしっかり判定してやる。



 結局こうなるのか、と思いながら暗い中五度目の判定を下す。


 こうして、俺とミナの初めて尽くしの夜は終わりを告げた。



改めてよろしくね、ミナ。

あの二人はなんなんでしょう。

ユリカも分かっててやってるような気が……



とにかく無事に二人は想いを交わす事ができたのですが、これからもよろしくお願いします

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