白+黒
ミナの家の前にいる俺は不思議と落ち着いている。
もう少ししたら、この玄関からミナが出てくる。
正直、告白までの流れはノープランだ。
ただ、想いを伝える。その事は間違いなく実行する。
「おまたせ〜」
「って、おろ」
「なんか今日のソラ、雰囲気違うね〜」
「そういうミナこそ」
「口紅塗ってるのか」
「おっ」
「そういうとこ気付くのはポイント高いよ〜」
「でも、これはラメが入ったリップクリームだよ」
ポイント高いのか。
よっしゃっっ。
あとは直接言えないんだけど、ミナがホットパンツを履いてる。
ミナの太ももが眩しくて直視できない。
上は白のタイトなシャツ。色々眩しくて目が。
「どしたの、ソラ」
「い、いやなんでもない」
「ミナ、その荷物は」
珍しくミナがバックを持っている。
「ん〜内緒」
「そっか、まあそれじゃあ行こうか」
「うんっ」
ミナのこの笑顔。もっとたくさん見たい。
よし、頑張るぞっ。
夏まつり会場に来たミナは、あっちの店、こっちの店と大忙しだった。しまいには、何ヵ所か焼き鳥を買い食べ比べしてるし。
それが終わったら、たこ焼き。えっ……まだ食うの。
次はクレープ屋。別腹タイムか……
さすがにクレープ屋は一つしかなく、長い行列に俺達は並んだ。
俺が並んで買うからミナは休んだら、と提案するが「一緒に並ぶ」その一言で却下された。
ちくしょ〜
かわいいです。
狭いスペースに人がたくさん並んでいると、俺達の距離も自然と近くなる。
「なんかソラ、いい匂いするね」
ミナが匂いの出どころを探して、色々嗅ぎまくる。
近いっ。近すぎるっ。
「あっ、髪だな」
「姉にワックス借りたからな」
「女物かぁ、こういう匂い好き」
よし、今度買ってこよう。姉ちゃん、ありがとう。
ミナの香り当てゲームが終わったところで、やっと順番がまわってきた。
「ミナは何にするの」
「やっぱ、チョコバナナでしょ」
「だよね」
「すいません、チョコバナナ二つください」
「あいよ、六百円だよ」
「じゃあこれで」
「あい、四百円のお返しで」
「まいどっっ」
「ソラ、いいの」
「おごってもらって」
「いいのいいの」
「いつかのお返しだから」
「うん、わかった」
「ありがとねっ」
にしても今日のミナは素直だな。
やっぱり祭りだからテンション高いのかな。
「ふう、食べた食べた」
「ほんと、食べ過ぎだよ」
「よく太らないな」
「普段は食べないからねぇ、今日は特別」
……なんかタイミングを図るのもしんどくなってきた。
お腹一杯のとこ悪いが、
ミナには告白も受け取ってもらおう。
「……ミナ、ちょっとあっちで休憩しよう」
「う〜ん、いいよ」
ミナの手を取り、人気のないところにリードしていく。
さすがに周りに人がいる中ではできない。
「や〜だ、こんなとこ連れてきて」
なんか酔ってるみたいだな。
近くに川が流れていて、川の音が祭りの音よりも大きく聴こえる。
やっと、この時がきた。
「……ミナ、聞いて欲しい事がある」
「どしたの、ソラ」
俺はミナの右手を両手で握り締め、ミナの目をまっすぐに見つめる。
……するとミナが、なぜか優しい表情になり、俺の目を見つめ返してくれる。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
いや、たいして時間は進んでないのかもしれない。
でも、二人の時間を今からでも進めたい。時計の針が錆び付かないうちに。
「ミナ、大好きだっ」
「俺と付き合ってくれ」
言えた。
やっと言えた。
俺は安堵したのか、握っていた手の力を弱める。
ミナのこたえは。
すぐに神に願って俺は手の力を強める。
するとミナの目から涙が。握り過ぎて痛かったのか。
もしかして……
やっぱりミナは俺の事を。
「やっと」
「やっと言ってくれたね」
「ソラ」
えっ、どういう事なんだ。
「ずっとその言葉を待ってたよ」
「わたしもソラが大好きっ」
その言葉を聞いて叫びそうになった瞬間、大きな打ち上げ花火の音が鳴り響いた。
まるで俺の気持ちを表現してくれている様だ。
花火の光に照らされているミナを見つめながら
「ありがとう、ミナ」
「遅いよ、ソラは」
怒られてしまった。
「ごめんね、待たせて」
そう言ってミナを抱き締める。
小さい頃から一緒にいた女の子を俺は初めて抱き締めた。
思っていた以上に細く、想像以上に温かった。
「もう、こんなんじゃ足りないんだから」
ミナはそう言いながら俺を抱き締めかえしてきた。
ちょっと痛かったが、我慢しよう。これがミナを待たせた罰なんだから。
まだまだ二人だけの時間は続きます。




