決戦前夜
俺は今、リビングの電話の前に立っている。
他の家族はケージに入れられた小動物を観察するかのごとく様子を見ている。
馬鹿にされている感じもあるが、今はそれがありがたい。
明日は、夏祭り。
前にミナを誘いはしたが、ちゃんと覚えているかどうか。その確認の電話をしたいが。
告白すると決めてから、ミナと話す事に緊張してしまう。
もちろん、電話も。
え〜い、俺は決めたんだっ。
電話の呼び出し音がなる。
長い。
いないのかな。
親が出たらどうしよう。
「はい、どち……」
「イトウサンノオタクデショウカ」
しまった。被ってしまった。
誰が出たかも分からない。
「もしかして、ソラ」
ミナだった。
「う、うん」
「ソラです」
受話器の向こうと、電話の置いてあるリビングが笑い声で響く。
「どしたの、ソラ」
「なんかあった」
「いや、明日の約束、覚えているかなと思って」
「あ〜」
「大丈夫大丈夫、今思い出したから」
良かった、電話しといて。
「それじゃあ、明日の六時に迎えに行くから」
「わかった、待ってるよ〜」
人の覚悟も知らずに、相変わらずだな。
電話を切ったとたん、リビングにいた家族から拍手が。
なんだなんだ。
「やっとミナちゃんとねぇ……」
母親は泣く真似をしながら仏壇にいる父親に向かって報告を始めている。
「明日はいよいよかっ」
姉が、プールの管理人の男性と同じような悪い顔をしている。まだ二十歳なったばかりだろ。そんな顔するなよ。
色々突っ込まれる前に自分の部屋に戻ろう。
自分の部屋から窓を眺めた。月がなぜかいつもより明るく見える。
気分を落ち着かせるためにイヤホンを付けて大音量で音楽を聞く。
どんな曲でも俺はこれで落ち着ける。
そのままベッドに横になっていると、寝てしまったようだ。
気付いたら日付が変わり、バッテリーが切れて音楽プレーヤーも止まっていた。
再び、窓に目をやると。
月は移動し今度は星達が輝いている。
俺は根拠のない自信を感じ、今日の夜の決戦が待ち遠しくなってきた。
星達に見守られる事で、俺は深い二度寝につく事ができた。
当初は苗字は考えてませんでしたが、物語の進行上必要になったので急遽考えました。
他の人物も後ほど作品上で発表したいと思います。