進入-1
「これを着ろ」
空を飛んで神の城に着く頃、孝太郎とルーナはシラキからフード付きのマントを渡された。
「ワタシ達はあくまでスパイだ。顔は隠しておけ」
「そういうお前は変身術見破られたりしないのかよ……」
「ワタシは魔王の手下だ。そんな初歩的なミスを犯すわけがない」
自信満々にシラキは言った。
「さあ、行くぞ」
誰よりも早くシラキは空から城へと侵入していった。目指すは城の隅の小さな庭だ。庭に入る手前で、シラキは呪文を唱えた。
「キーマス!」
すると、目の前が一瞬だけ赤く光った。
「結界を破った! 早く入れ!」
ルーナが言われてすぐに中へ入り、孝太郎はシラキに手を引かれながら中庭へと転げ落ちた。
「うわっと!!」
刹那、尻餅をついて落下した孝太郎の頭上に黒い何かが降ってきた。孝太郎が避けた先に落ちたそれは、死んだカラスだった。
「へ!?」
「ワタシが結界を破ったことに神は感づいてるだろう。これはカモフラージュだ。カラスが結界にぶつかったと思わせて時間を稼ぐんだ」
「そんな子供だましな!」
信じられないと疑う孝太郎。それに対してルーナは早口で説明をする。
「いいんだよ。結界に当たって鳥が死ぬ事なんてよくあるから。それより、早くここから離れるんだ。誰か来てしまう」
「こっちだ!」
刹那、シラキは走り出していた。向かう先は三階くらいの高さの、普通の家と同じくらいの大きさのレンガ造りの建物だ。
鉄のドアを開け、二人が中に入ったことを確認するとシラキも中に入る。中は真っ暗で何も見えない。
「フレリア」
シラキが呪文を唱えた。指先から炎が出て、その光りで辺りの様子を伺うことができる。
目の前には階段、両脇には通路があり、鉄のドアが均等に並べられている。ドアの上には番号札が付いていた。
「なんだここは……」
まるでダンジョンのような、とても神のいる施設とは思えない禍々しさに孝太郎は絶句した。
「軍隊の施設……ってわけでもなさそうだね。どっちかって言うと……収容所」
ルーナは険しい表情を見せた。
「ってことは、罪人の……」
「罪人と言っても、神にとっての、だけどね。」
「孝太郎! ルーナ! 上に上がるぞ」
突如シラキが声をあげた。
「え!?」
「おい!」
シラキは階段を駆け上がった。孝太郎達も後に続く。二階は一階と同じ間取りだったが、三階は階段を上り切ってすぐ、両開きの扉が現れた。
「ここはワタシが過去にこの城に潜入した時……神の存在を脅かす者達が囚われていた。そして、三階では……その魔力を抜き取る儀式が行われていた」
孝太郎は嫌な予感を覚えた。シラキが言うことが正しければ、この先には——
シラキはドアを開けた。すると、中には首輪を付けられた少女が捕らえられていた。彼女の座る冷たい地面には魔法陣が描かれている。周りは青白い光の球によって照らされていた。
「誰だ!?」
孝太郎達の存在に気付いた兵士がこちらに近づいてきた。
「ここは神聖なる儀式の間。たとえ神でも、許可のない者は入れてはならぬとのネレシア神からの……」
しかしその時――――魔法陣が光り、少女の長い髪が舞った。
「魔力の抜き取りが始まったのか!?」
孝太郎は咄嗟に走り出していた。
「な、何をする!?」
兵士は剣をとって孝太郎に切り掛かろうとした。しかし、ルーナがそれを阻止した。
「ライル!」
ルーナが唱えた魔法は兵士に雷撃を浴びせた。
「うあ!?」
兵士は剣を落とし、がくりと膝を落とした。
少女から黄色い光が溢れ出る。孝太郎は少女に飛び付いて彼女を魔法陣の外へ出した。光は瞬時に消えたが、少女は気を失っている。




