表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
102/106

歪な愛が先走る

綾葉は、思いが叶って架を祖母と一緒に住む家に連れてくる事ができた。自分を待たせた事、怪我を負わせた事へのせめてものお詫びだと言っていた。愛情が自分にないのかもしれない。そう、何度も、自問自答した。長い時間を架と過ごしてきた。架の事は、全て知っている。キラキラした世界に架葉、住んでいる。その架の眼差しを受けるなら、それだけでいい。架を支える道を選んでいこう。

「何をしているの?」

自宅に戻るなり、パソコンで、何かを見る架が気になった。

「約束を守ろうと思って」

「誰との?」

架は、その名前を出すのを躊躇った。

「後輩だよ」

「後輩?」

綾葉は、それが誰だか、わかったが、気づかないふりをした。

「そう、それなら、見なくては、いけないわ。お茶の用意をしてくるわね」

キッチンにいる祖母に、架を一人にするように、声を掛け、部屋を出ていく。

「あぁ、そう。架。新しい人生を始めるの。莉子とは、離婚できたの?」

「あぁ・・離婚届を用意して置いたんだが、なかなか、取りにこなくて」

莉子は、離婚する気がない訳ではなく、藤井先生の退院後のサプライズステージの練習で、忙しく、会う暇がなかった訳だが、綾葉は、そう、受け取らなかった。

「離婚する気がないのかしらね?架。お願いよ。私だけを見て欲しい」

「わかったよ・・・」

時折、綾葉には、狂気を感じる。ここまで、追い詰めたのは、自分だ。元は、こんな子ではなかった。

「心陽にも、知ってもらわなきゃ。もう、架は、誰とも、合わないって」

黙って、ヘッドホンを付け、オンラインに見入る架を横目で、見やると、綾葉は、部屋を出ていった。

「どうしているんだい?」

祖母は、架が、綾葉の帰宅に付き添って、くれた事を安堵していた。このまま、綾葉と架が、一緒に生活してくれれば、何も、問題ない。息子夫婦が、残した宝物を守りたい。

「莉子との離婚が成立していないの」

綾葉は、不満をぶち撒いた。

「きっと、離さないんだわ。架葉、天才ですもの。父親が汚職で、捕まっても、架を自由にしないつもりなのよ」

「なんて、酷い女だろうね」

祖母は、綾葉を抱きしめた。

「おばあちゃんが、お前を守ってあげるよ。絶対、離婚するよ。あの女は、悪い女だからね。架も気づくよ」

「おばあちゃん、ありがとう」

綾葉は、そう言いながら、少し、言葉を選びながら、言った。

「でも、あまり、やりすぎないでね」

「何を言うんだい?何も、していないよ。ちょっと、懲らしめてやるだけだよ」

「心陽が、困る姿を見るのは、嬉しいけど。ピアノ教室の子供達が、疑われたら、嫌だわ」

「何を言うんだい?歩けない老婆を気遣って、ピアノ教室の子供達が、楽屋に入れてくれたんだよ。心陽の祖母だと言えば、入るのは、簡単だったよ。子供達が、目を離した隙に、ドレスを切り裂くのは、大変だったけどね」

「お疲れ様。きっと、ショックでコンサートどころでは、なかった筈」

「ろくに演奏なんて、できやしないよ」

2人は、架に、飲み物を作っていった。これからも、3人で、生活をしていく。ようやく、長年の夢が叶う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ