第七十一話 ミカエルの回想13
すみません。体調悪化関係により、投稿が遅くなりました。申し訳ございません。
今回のミカエルの回想シーンでは、一人称ではなく三人称視点に切り替わる場面がありますのでご注意ください。
あれから陽は落ち、外は深い闇に包まれていました。地下牢にも夜は訪れていましたが、鉄格子の前に立つ衛兵達が灯す魔導灯のおかげで、内部は薄明るく照らされています。
「……静かですね……」
石造りの壁へ背を預け、小さく息を吐きました。
地下牢と言えば、怒号や泣き声が飛び交う場所という印象がありましたが、この場所は違います。
感じるのは、衛兵達が交代しながら歩く足音と、時折揺れる魔導灯の小さな音だけ。
思っていた以上に、落ち着いた空間でした。
「人間の牢というものも、案外悪くありません」
ベッド代わりの藁へ横になると、天井を見上げます。
手錠も牢も、天使である私にとっては大した意味を持ちませんので、その気になれば、今この瞬間にでも外へ出ることはできます。
しかし、それはこの城の実態を確かめた後にしましょうか。
足音が少しずつこちらに近づいてきて、最後には私の牢の前で止まりました。
「……リョク。来い。呼び出しだ」
「承知しました」
十中八九あの王様でしょうね。全く、面倒なのですが、仕方ありません。
無言のまま私が居る牢に衛兵が五人入ってきて、二人は私の脇の横にぴたりと張り付き、残りの三人は先導するかのように前を歩き始めました。
私は連れられるがままに歩き出し、地下牢を出ると、冷たい石造りの廊下が真っ直ぐ先へ伸びていました。
壁には一定間隔で魔導灯が設置され、隙間から見える外は暗いものの、廊下は昼間と変わらぬ明るさを保っています。
「こっちだ」
前を歩いていた衛兵の一人が短く告げます。本来ならば、ここが最下層のはずです。
しかし、私達は昼には無かったはずの更に下へ続く階段を降り始めました。
「失礼。私が通った時にはこれ以上下は無かったのではありませんーー」
「余計な質問をするな。貴様はただ、黙ってついてくるだけでいい」
……数万年前の私がこれを聞いたら周囲の衛兵は確実に血祭りでしたね。
今はこの様な性格なため、考えた所であまり意味はありませんが。
「足元、気を付けろよ……」
「変な所で優しいのですね」
「黙れ」
酷いです……。これが今の人類ですか……。
*
階段を降り切り、そこからは一つの道となった。
ミカエルは衛兵に先導されて進んでいた。その時、不意に強烈な鉄の匂いがミカエルの鼻を突いた。
その時を持って、瞬時にミカエルは考えを改めた。
(あの王は、人を間接的に殺しているとは思っていました。国王が自身の手を汚す必要性がありませんからね。だからこそ予想外でした……。まさか自身の手で殺しているとは……)
ミカエルに怒りはない。罪を犯した者達を裁く者が国王と言う役職に変わっただけだ。
ただ、少なからずの驚きがあったのも否めない。
「我々はここまでだ」
唐突に、前を歩いていた衛兵が道の脇に避け、ミカエルの脇にいた衛兵もいつの間にか居なくなっていた。
「逃げ出す兆候があれば始末する様に国王陛下から命じられていたがその心配はない様だな」
「……私に、ここから一人で進めと?」
「そうだ。ここから逃げ出すのも良し。素直に従ってこの先に足を運ぶのも良し。但し、後者を選んだ場合は、後戻りはできんぞ」
その答えは、もはや決まっているも同然だった。ミカエルの心には一切の迷いがないからだ。
「当然、進みます。国王直々の呼び出しですからねぇ。行かねばなりませんよ……それに………」
(裁定者として、その先にある舞台を見なければなりませんからね)
心情とは裏腹に、ミカエルの瞳は正面を見据えていた。その先にある光景を予想し、何を考え何を思ったのか、この時では分かりようも無かった。
お読みいただきありがとうございます!恐らく、次でミカエルの回想は最終になると思います!




