11話 勇者の弟子と戦闘狂
「君が『剣精』だね! 君は僕が倒す!」
(もう勘弁して!)
「なーんてね! 前の人たちがやってたから僕もやった方がいいのかなっと思って!」
(なんなのこの人?)
決勝の相手は近衛騎士団の団員でダイさん。
近衛騎士団って事はゼト様やレィア様の部下って事だよね?
「別に君になんの恨みもないよ!ただ、団長から話を聞いてから君と戦うのが楽しみでしょうがなかったんだ!」
(あ、良かった。バトルジャンキーなだけの普通の人だ!)
バトルジャンキーを普通と感じてなごんでいる私もどうかと思う。
「まぁ、前置きはいいや!早く戦おう!」
「よろしくおねがいします」
ダイさんは普通のロングソード、私は細身のミドルソードだ。
「始め!」
「じゃあ、こっちからいくよ!」
ダイさんは正面から一直線に迫ってきた。
そのまま上段から切りかかってきたので、直前で右にかわしつつ胴に切りつける。
ダイさんはそれを躱して逆方向へ跳んだ。
「あぶなっ! なるほど攻防一体なわけね! 下手に攻撃するとこっちがやられる」
「今度はこちらから行きます」
私は弧を描いてダイさんの左側から接近、直前で進路を変えて右側から切り込む。
ダイさんはそれを受け止めると思いきや、ロングソードはすでに私の背後から迫っていた。
私は紙一重で身をかがめ刀身をやり過ごすとそのまま、ダイさんの足に切りつけた。
が、その時にはダイさんは離れた場所に回避していた。
「あちゃー!『加速』使っちゃたー!」
「『身体強化』使わないつもりだったんですか?」
「団長から「使わないでどこまでやれるかやってみな!」って言われて使わないで倒すつもりだったのに!」
「まさかこんな序盤で使うことになるなんてね。すごいよ君!さっきのどうやって背後からの攻撃を紙一重でかわしたのさ?」
「刃の風切り音とか気配で」
「ふうん、そんなことまで出来るんだ」
「『身体強化は』使ってもらって構いませんよ。こちらはそのつもりでしたから」
「じゃあ遠慮なく使わせてもらうよ!」
実は私としては使ってもらった方が戦いやすかったりする。
最近気が付いたのだが、身体強化を使った方が動きが単調になるのだ。
トップスピードや破壊力が上がっても動きが読めれば対処が可能だ。
「行くよ!」
ダイさんの姿が消えた。
私は左方向に跳躍、私が居た場所にダイさんが出現し、すぐに消える。
今度は後方に一歩移動し元いた場所をミドルソードで薙ぎ払う。
キィィィィィン!
ダイさんのロングソードと接触、同時に私は右に跳躍しそのまま前に駆け出す。
駆け出しつつミドルソードを後ろに振り抜き、ダイさんのロングソードを受ける。
キィン!
受けたまま姿勢を下げて脇を抜け、背中に切りつけた。
ダイさんはすでに離れた場所に回避していた。
「あははは!やっぱすごいよ君!『身体強化』使った僕と互角じゃないか?」
「ダイさんもすごいです。『身体強化』ちゃんと使いこなしていますね」
少し侮っていた。ロン先輩より高いレベルで『身体強化』を制御している。
だてに中級部門の決勝まで残っているわけじゃない。