10話 勇者の弟子と準決勝
「ちょっと待って!勇者様に夜這いをかけたのってケイさんだったんですか!?」
ケイさんの攻撃を躱して、攻撃を仕掛ける。
「勇者様はあたしを拒んだわ! それなのに、なんでよ! なんであんたは恋人になれたのよ!!」
ケイさんは2本のロングソードを平行にして私の剣を押し返す。
私はそのまま後方に吹っ飛ばされた。
(勝手な思い込みでジオ様に迷惑かけて!何なんですか!)
「私だってまだ恋人にはなってません!」
体制を立て直し、ケイさんに向かって駆け出した。
「勇者様にご恩を返したい気持ちは私にもよーくわかります!」
私はケイさんに連続攻撃をかける。
「あなたに何がわかるのよっ!」
ケイさんはそれを全て2本のロングソードで受け止める。
「でも迷惑をかけちゃダメじゃないですか?」
私は一旦距離をとってからケイさんの左側に回り込む。
「うるさい!あんたを倒さなきゃ気が済まないのよ!」
ケイさんは左手のロングソードを横なぎに私を迎え撃つ。その後ろには右手のロングソードが一段ずれて追従している。
このままでは攻撃を入れる隙が無い。
私は左手のロングソードを直前までひきつけ、
「私も勇者様にふられました!」
体をひねりつつ剣の切っ先に飛び乗った。
「えっ!」
重量級の幅広ロングソードを強力な『身体強化』で保持しているのであれば私の体重程度ではびくともしない。
私は更に左手のロングソードを蹴って、右手のロングソードに飛び移る。
ロングソードを足場に進路を変え、ケイさんに向かって踏み出す。
体をひねりつつ前転しながらケイさんのがら空きになった右肩から背中にかけて切りつけた。
そのまま空中で一回転しケイさんの背後に着地した。
「勝負あり! 勝者ララ!」
会場に大歓声が上がった。
ケイさんは2本のロングソードを構えたまま固まっている。
私はケイさんに歩み寄った。
「私も勇者様に告白してふられたんです」
ケイさんが一瞬固まりそれからこちらを振り返った。
「ケイさんと一緒です」
「勇者様は困っている人がいれば必ず助けてくれます。みんなの幸せを守ってくれています。でも自分の幸せには関心が無いんです」
「あたしだってわかってたわよ! 勇者様の寝室に忍び込んだ時、勇者様はこう言ったわ「自分はいずれ戦いの中で命を落とす。自分が幸せになる事も誰かを幸せにすることもできない。君は別の幸せを見つけなさい」って」
ケイさんは泣き出していた。口惜しさと悲しさで顔がグチャグチャになっている。
「感情の無い顔でそう言われて、ああ、この人があたしを好きになる事は無いんだなって悟ったわ。勇者様への思いはその時に吹っ切れていたのよ」
「でも、あんたはふられたってのに何でそんなにいきいきしてるのよ!」
「私はまだ勇者様を幸せにすることを諦めていませんから!」
「勇者様は自分が幸せになる事は出来ないって言ったかもしれませんが、私はそうは思いません。きっと何か方法はあるはずです。今は少しでいいから勇者様のお役に立てないかと思って、こうやって剣の腕を磨いてるんです」
「・・・強いのね・・・あたしが勝てないわけだわ・・・」
「ケイさんも強かったです」
「ありがとう、あんたなら、本当に勇者様を振り向かせる事ができるかもしれないわね?」
「はい!そのつもりでがんばります!」




