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「な、何なの…一体……。」

瑞歩が口許をワナワナさせながら、私たち二人を交互に見てくる。

私は、何て口にすれば良いのかわからずオロオロするばかり。

星香は、やっと告げたかと安堵している。

彼はと言うと。

「珠稀が俺の事を……。嬉しすぎる。」

とここぞとばかりにムギュって抱きついてきたかと思ったら、頭上で"チュッ"と小さなリップ音が……。

キスされたのだと気付き、更に顔を赤くさせる私。

「ここぞとばかりに見せつけるなよ。」

と周りの声。

「こんなの…ただのピエロじゃん……。」

と呟く声が聞こえて来た。

その声の方へ目を向ければ、瑞歩がスカートを両手で握りしめプルプルと震わせながら、俯いていた。

あっ、私……瑞歩の事、何も考えてあげてない。

何て思ったら。

「瑞歩。最初からわかってたよね。まぁ、珠稀は上手く隠していたけど、最近はちょこちょこと出てた筈だよ。それに木崎の方は隠す事もなく、珠稀にちょっかい掛けてたんだから、瑞歩が入る隙なんて無いって。それでも諦められずに行った行動は、全て裏目に出てただけ。瑞歩の行動が二人を更に近付けさせたことには、私がお礼を言うよ。」

星香が、私の言いたい事を口にしてくれた。

瑞歩が、彼に手を出そうとした事で、自分の気持ちに確信を持てる様になったのだもの。

「何…それ……。星香が、言う事じゃない……。」

瑞歩がそう口にした。

「そうかもしれない。だけど、珠稀の想いを知っていた私としては、珠稀をけしかけてくれて"ありがとう"なんだよ。」

星香の言葉に私は、口をパクパクさせるしかなかった。

だって、誰にも話したことがないのに星香は気付いていたのだから……。

「って言うか、瑞歩も気付いてたんでしょ?ずっと…この半年近く一緒に居たのだから。」

星香の言葉に微かに頷く瑞歩。

えっ、嘘……。

「気付いていたよ。珠稀ちゃんが、木崎くんに惚れている事…。だから焦ったの。今なら、まだ間に合うと思った…の。」

その声は、弱々しく、鼻声だった。

「えーっ、それ、俺だけが気付いてなかったのか……。」

落胆した声で言うのは彼で、周りがドッと沸いた。

えっ、何で皆笑ってるの?

私が疑問符を浮かべていると。

「お前ら、とっくにチャイムが鳴ってるぞ。早く席に着け!」

教科担任に怒鳴られて、私たちは慌てて席に着く。


一体なんで笑ってたんだろう?


その授業中ずっと考え込んでいた。








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