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第十三話・魔軍に出撃命令!遂に風雲急を告げる


【第十三話・魔軍まぐん出撃命令しゅつげきめいれいつい風雲急ふううんきゅうげる】



7日目の朝。

サロメに起こされ、二日酔いの頭を抑えるメロス。

しかし、行かねばならぬ。

ドラムスのセリヌンティウスがオレの代わりに殺される前に!


レダが村の入り口に見送りに来ました。

初夜が明けたレダの首筋にはサロメと似たようなものがついていたものでありますがここでは解説は控えましょう。

(別に言わなくとも)


「兄さん、歩いて城に行くにはちょっと遠いじゃない。」


「まぁ、そうだなぁ。」


「だから、ドドンゴ連れて行きなよ。」


そういって、レダは口笛をピィと吹きました。

すると、山のように大きな黒羊が走ってやって来ました。


「ホラ。ドドンゴなら二人乗れるし。」


その山のように大きな黒羊はドドンゴというレダの羊でした。

二人はその背中にまたがりました。


「じゃぁ行ってくる。レダ!幸せになれよ!」


「あいよ!いってらっしゃい!兄さん!」


ドドンゴは風のように駆けて行きました。



一方その頃…魔王の居城。


急報を告げる使者が王の前に報告します。


「なに?」


報告を終えたが、魔王の一言にたじろく使者。


「勇者が城に戻っていくだと??」


メロスの故郷から、魔王軍の砦を三つ越えれば魔王の城だったのですが、もともとメロスは魔王に興味はありません。城へと戻り刑を執行される身です。

しかし、魔王にしてみれば砦から兵をだし、野戦の準備をしておりましたので、頭を抱えます。

なにしろ、野戦ともなると多量の軍費がかかるものですから。


すでに三砦の魔王軍は野戦をする気まんまんで、外に一兵卒から将軍まで構えておりました。


「なるほど…。だから今までの魔王先輩は籠城をしておったのかもしれんな…。これでは軍費、兵糧がかさむ一方。」


「たしかにその通りでございます。ここはご決断を。」


近臣は砦に兵を戻すべきと具申したものでした。

しかし、魔王は別の意味に受け取ります。


「あい分かった!三軍に命令せよ!打って出て一気に人間どもを滅ぼしてしまえとな!目指すはディオニス王の城!勇者の首を上げたものを功績一番とする!とな。」


とうとうでた出撃命令に、並み居る家臣たちは平服したものです。


各地に飛び散る使者たち。


それぞれの砦を守る将たちに命令を伝えます。


メロスの故郷に一番近い砦の主は魔獣の王「グランド」という熊の化け物でした。

グランドは常々、魔獣は頭が弱いというレッテルにコンプレックスを持っておりました。

なんとかそれを打破したいと思い、野戦命令が下った時に、自分の領地あちこちに落とし穴を掘り、勇者たちや攻め手の人間たちを陥落させて殺してしまおうという計略でした。


落とし穴が掘り終えたという報告にグランドはフフフと笑ったものです。


「これで、我が一族の計略で勇者だろうが将軍だろうが我々が血を流さずに死んでゆくだろう。宴だ!宴!果報は寝て待てだ!」


といって、魔獣の兵たちは安心しきって酒を飲んでぐぅぐぅと肘枕で寝てしまいました。


そこに使者が駆け込みましたが、山のような獣たちが寝ているので注進が遅れてしまいます。



さて、次の砦は、魔王の信認厚い「シェイド」という影の騎士です。

もともとは、魔王と敵対する魔族でしたが、父の代で魔王に忠誠を誓い、勢力合併したのです。


父の功績はすさまじく、生前は勲一等を受勲し、この砦を任されたのでした。

しかし、父の死後、シェイドは実力はあるのですが功績を上げるような戦争もなく、砦の中でいつもまんじりともしないでおりました。


そこに、魔王からの使者です!


すわ吉報!とばかり、悪魔の馬にまたがり、砦の影の騎士たちに号令します。


「皆の者!出陣だァ!我が一族が勇者の首を取り、功績第一を得るのだ!獣王グランドに後れをとるぞ!急ぎ馬をとれ!」


影の一族たち、馬小屋から急ぎ馬を出し鞭打ち駆け出します。


「兵は拙速を尊ぶ!急げ!」

※軍事では出鱈目でも急いだほうが吉という意味


土煙を上げ、シェイドの軍、数刻でグランドの位置まで来ます。


軍馬の地響きで目を覚ますグランドの軍。


「ん??この軍馬の音は…。」


「はーーーっはっはっは!戦の最中に高いびきとは恐れ入りましたな。グランド殿。我々は勇者の首を取り、人間王ディオニスを討ち取ってまいりますぞ?」


といって、影の一族を引き連れ、グランドの陣を超えていきます!


「ああ!!」


グランドが叫んでももう遅し。シェイドの軍隊はグランド軍が作った落とし穴のある平原の中に…。



シェイドが駆ける。

その周りを囲む側近たち。


しかし、一人消え、二人消え…気づくと、周りには一人もいなくなっております。


「ぬむ??」


振り向いても一族の兵の姿なし。


「さては勇者の…??」


落とし穴に落ちて兵が消えたのですが、勇者からの攻撃でいなくなったと勘違いします。


一族が消されたことで感情が高ぶってしまいます。


「うぬぬぬ!許せぬ!姿を現さんか!卑怯であるぞ!」


しかし、呼べど答えず姿なし。

煙もなくば雲もなし。

はてさて、勇者はいずこに居りましょうや?


しだいに、空はかき曇り雨が降り、風が吹いてまいります。

シェイドは自分の剣を抜いたまま、微動だにしません。


しかし、本来は誰もいない野中でただ一人で大剣を構えたマヌケな姿。


シェイドが何かを感じました!


「そこか!」


馬を反転させ、駆け出して岩に向かって剣を振り下ろす!


パタパタパタ…


鳥のつがいが飛び立ちました。


(ア………)


シェイドの足元が抜けます…。


(闇はオレの世界だ……だが…これは…この先は…いやな闇……)


音もなく滑落してゆくシェイド。

中には竹槍が植えられておりました。


それがシェイドに突き刺さり、そのまま一族とともに絶命…。



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