第十二話・妹の祝言に酩酊し、尼僧先んじて概略を語る
【第十二話・妹の祝言に酩酊し、尼僧先んじて概略を語る】
やがて、夕方…。
夕食を用意したレダ。手伝うサロメ。満身創痍のメロス。椅子2脚に横たわっております。
「なんだ、そうなんだ。魔法でねぇ。」
「ウン。でも、勇者様愛してるっていってくれたの!ウフ!」
「まーでも、キスくらいでよかったねぇ。」
「ウフ…ウフフ…。」
思い出したのか、微笑むサロメ。
「レダさんは結婚なさるんでしょ?」
「ウン。ぶどうがなる季節あたりにね。」
「…ダメだ…。」
「ん?なに?兄さん。」
「ぶどうの季節じゃダメなんだ…。」
「え?どうして?前から言ってたじゃん。いつならいいの??」
「明日…。」
「は??」
「ゴメン。明日にしてくれ。」
「え?ちょっと急すぎるよ…向こうの予定もあるだろうし…。」
「オレ…ちょっと行ってくる…。」
「え?夕食時に行くと嫌われるじゃん!なんなの??」
モンスターとの戦闘では一時も傷を負わなかったのに、初ダメージが肉親。サロメも回復魔法を使うことをすっかり忘れていたものです。
はっとして回復魔法を使うサロメ。
回復したメロスは、一路花婿宅に向かいます。
「いるかい?」
「お!義兄貴!」
「ちょっと上がらせてもらうよ。」
「なんだよ…義兄貴。べっぴんさんつれて…レダは一緒じゃないの??」
「いや…結婚式のことなんだが…。」
「あ…はいはい。謹んで聞きましょう。なんです?」
「明日にしてくれ。」
「え?そんな無茶だよ…。初物の葡萄酒でお祝いしようって言ってたじゃない。」
「葡萄酒なら、オレが寝かせてたヤツがある。羊も一匹、屠ろう。頼む!明日じゃなきゃダメなんだ!」
(勇者様…きっと、魔王討伐で死ぬかもしれないからなんだわ…。死ぬ前に…レダさんのお祝いを見たいんだ…。)
サロメのカンは斜め上でしたが当たっておりました。
「ま…義兄貴が言うなら…その代わり、村人とかにも話し付けるから夕方からだよ?」
「もちろん!それで頼む!」
約束がまとまり…その晩はみな一様に睡眠を貪りました。
次の日、祝言の朝。
サロメは早朝より花を摘みに行きました。
メロスは若い羊を群れから選出して家の裏側に連れて行って屠りました。
それを、手際良く料理しました。
レダは鏡のある部屋で腰掛け、サロメはその髪に摘んで来た花を飾りました。
「キレイだね。レダさん。」
「ありがとう。サロメさん。」
「あ~。私も憧れるなぁ。花嫁さんに。」
「フフ。兄さんをよろしくね。」
「え?」
「結婚したいんでしょ?しなよ。」
「え…うん…。勇者様がいいなら。」
「そしたら、この村で一緒に暮らせばいいよ。教会ないし…サロメさんがそういうことやってくれればいいじゃない。今日の結婚式だって村長さんが牧師さん役だよ?まー、昔っから見てるから…それでいいっちゃいいんだけどねぇ…。」
「あ…そーなんだぁ。」
「ね。そうしな。フフフ。」
「うん…。なれれば…いいなぁ…。」
やがて、夕方。メロスはとっておきの葡萄酒の樽を出して来ました。
村人達が集まってきます。村長のなれた結婚式の文言で式はスタートしました。
幸せそうなレダ…。
それを見つめてうれしそうなメロス。
メロスは花嫁と花婿に近づいてこう言いました。
「なぁ…二人とも。オレに財産と言えばあの羊達だけだ。お祝いにお前達に全部やろう。なに、いいんだいいんだ。その代わり憶えていてくれ?マヌケな兄がいたことを。」
「なによ兄さん…。もちろん憶えてるに決まってるじゃない。どうかしたの?」
「ちょっと…城に忘れ物したんだ。だから明日戻らなくちゃならない。」
「え?勇者様…そうなんですか??」
「うん…。」
村人の一人が割って入ってきます。
「なんか、さっきからこのサロメちゃん…だっけ?メロスのこと勇者様、勇者様っていうけど、一体なんなの??」
待ってましたとばかりサロメ。
「勇者様!あの話ししてさしあげたら?たった一人で魔王軍の砦に乗り込んで大トロルを倒して、霹靂の杖を手に入れた話し!」
「あ…ああ…あの…魔王の砦にいって…ボスの大トロルをね…こうして…霹靂の杖っていうこの…サロメの持ってる杖。これをゲットしました。」
おおえばりのサロメ。
「じゃ、今度はあのヴァンパイアを討伐に向かってピンチを切り抜けて倒して、聖王のマントを手に入れた話し!」
「あーうんうん。ヴァンパイアをね…この…討伐に行ったんだけどサロメが捕まっちゃってさぁ…。でもまぁ、ややありまして、太陽の光でヴァンパイアを倒しまして、この着ているマントを手に入れたのであります!って、なんであらすじ全部言っちゃうんだよ!」
笑う村人達。メロスの用意した葡萄酒では足りずに、めいめい家より極上の葡萄酒を持ってきます。
みんな酔いつぶれてグウグウ寝てしまって、6日目の夜は更けました。




