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33位目

「その、申し訳ないが僕は死神とやらでは無いし、エイピスなるものがなんなのかも知らない」


 よって選択肢はとぼける一択。


「話の流れからしてエイピスというのは人を殺せるものだろうから……武器を持った人間かい? それとも飼いならされた獣か、あるいは精霊とかだろうか?」


 自分で言うのもなんだけど、白々しいことこの上無い言葉 セリフだと思う。

 エイピスという、推定森の中で僕の耳飾りを狙ってやってきた熊手を持った男に対してしたことを鑑みてそうだし、ここであえて彼らが精霊を持っている可能性を考慮して見せるようなのもそうだ。実際問題、彼らが精霊を連れているはずが無いというのは前段階の知識として把握しているし、同時に少なくとも目の前の人間が精霊に好かれる性質かどうかくらい見ればわかる。

 じゃあなんでそんなことを口にしたのかといえば、要するに彼らにも精霊を持ち得る可能性 チャンスがあるように思わせるためであり、同時に僕が連れている精霊が人を殺すだけの力を持っているということをわからせるためだ。

 この一言で無駄な血が流れる可能性が大幅に減る。はず。

 着任早々夜襲を受けて死んだとか、よくある話らしいからなぁ。この村に着任した僕の先代にあたる人もすでに死んでいるらしいし……ただし今代の担当である僕に契約する精霊がいる以上、夜襲されて死んで終わりってわけにもいかないだろう。下手したらこの村そのものが焼け落ちたりしかねない。普通に考えたらそんなことあるはずが無いし、僕だってもともとはそう思ってはいたのだけれど、僕の一言でエイピスに対して火精霊 アルファートが何をしたかを思えばあまり楽観的にもなれない。なんというか、うかつに火精霊と契約をするものじゃなかったとか思ってしまう。特に火精霊 アルファートは館じゃなくて外で拾った精霊だ。人間との暮らし方を全くわかっていない。やるとなれば徹底的にやりかねない。


「僕は今日、まだそういう類のものには会っていないのだけど……どこで会っているというのかな」


 とりあえずで言葉を続けるにつれ、座り込んでいたミグナの目にくらい光が宿る。どうも僕の言葉が気に入らないらしい、というのも当然のことだろうからどうこう言うつもりも無いけれど。それでも立ち上がる様子をとりあえず目で牽制してみる。どう動くつもりだろうか? 座り込む前に持っていた鉄杖は地面に落としっぱなしだけど。


「エイピスってのは」

「嘘をつくな白々しい!」


 説明しようとするゴフェンの言葉をミグナが遮った。やる気か?


「くそ、エイピス! 俺があの時一人で逃げなければ……!」

「おっと」

「っく!」


 やるんだな。

 立ち上がり、つかみ掛かってこようとするミグナを大鎌で牽制する。最も、牽制として有効なのは鎌自体よりも足元でその動きを追っている地精霊 アステラのような気もするけれど。

 さて、どうしてくれようかこの状況。そろそろヴァクシャサ降ろしたいんだけど。


「下がれミグナ、邪魔だ」

「だけど、だけどゴフェン!」

「いいか、俺が今話してるんだってわからないのか?」

「でもエイピスがやられてるんだぞ! こいつが精霊でやったんだ!」

「だったらお前にどうにかできるわけ無いだろ」

「あ、が、で、でも!」


 だけどそんな僕の思惑はよそに、今度は二人で話し始めた。おーい、そもそも契約上、僕はもうとっくに『家』に案内してもらってもいい頃なんだけどなぁ。

 かといって話を遮ったら後で蒸し返されたり付きまとわれたりするかもしれないし、脅したりとかあんまり変なことをして警戒されるのもなんだし、うーん、とりあえず暖炉に火だけ入れさせてもらおうか。


「……アルファート」


 ぼそりとしたつぶやきに反応して、二人の目が僕に向く。

 同時に、角灯 よりしろから飛び出した火精霊 アルファートが暖炉に居場所を移した。少しだけ部屋が明るく、温かくなったような、そんな感じがする。うん、気持ちだけだけどほっとした。

 それで、話を続けてどうぞ。


「あー……なんだろう、エイピスの話は後にしような、ミグナ」

「だけどガル……ゴフェン!」

「お前はもう帰れ。後で話を聞いてやる」

「……くそっ、どけ!」

「おっと……今日のところはそこまでじっくり話をしたりするつもりじゃ無いんだけどな」


 家から出て行くミグナに道を開ける。


「そうつれないことを言うなよ、なんなら今晩はうちに泊まってくれてもいいんだぞ」

「いや、早めに住居を確保して、村と国としての立場をまずはっきりさせるのが規則なんで」


 というか、ミグナが人を呼んできたりして、外に出た途端襲撃されるとか嫌だし、それ以前に外と中で挟み討ち状態になってるだけで精神的にきついし。いい加減服をなんとかしたり荷物降ろしたりしたいし。


「そうか……じゃあ空き家に案内しよう。希望はあるか?」

「村はずれで、できればそばに広場があるといいな。五人以上の人間が入るような広い家なんて無いだろう?」

「あー……ちょうど一人分家主の空きができたし、そこでいいだろうな。畑の管理できるか?」

「これ、なんだと思ってるんだ?」

「なるほど」


 ……一周回って普通の対応になってきたな。ただ、あれだ。

 まさかその空きができた家主って、エイピスとやらのことじゃ無いだろうな?

いつも読んでくださってありがとうございます。

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