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第9話「崩壊の足音」

挿絵(By みてみん)


【リアル芸能ニュース風】劇中・Webニュース記事案


【衝撃】皇プロ主催『わんだーわーるど』オーディションで大波乱!インディーズアイドルおよび地下アイドルの二組が「同率3位」で下剋上合格!元絶対王者・星崎怜花はまさかの「計測不能・失格」で姿を消す

(エンタメ総合ニュース・ライター:芸能取材班)


本日、都内ホールにて開催された皇プロダクション主催の新作大型ドラマ『わんだーわーるど』メインヒロイン公開オーディション。圧倒的な注目を集めたこの決戦で、誰もが予想だにしなかった「大波乱のドラマ」が巻き起こった。


■ 如月るなが圧巻の「1600SPV」で首位通過!神楽桃華が猛追の2位

審査は皇プロダクション独自の新技術「SPV(Song_Power_Voltage)」測定システムを導入し、ステージ上で放たれるアイドルの「歌唱力」と「光の属性エネルギー」をリアルタイムで数値化する形で行われた。

1位に輝いたのは、現"Le nostre dee"(レ・ノストゥレ・ディーエ)の如月るな。司会の神尾ディレクターとのコミカルな(自称)表記を巡るやり取りで会場の爆笑を誘った直後、空中浮遊演出とともに圧巻のパフォーマンスを披露。弾き出されたSPV数値は、他を寄せ付けない異次元の【1600】。絶対王者としての凄みを見せつけた。

2位には同じく"Le nostre dee"の神楽桃華がランクイン。まばゆい光の演出と高速ピアノに乗せた圧倒的な歌唱で【1120】の高数値を叩き出し、「光の象徴」としての実力を証明してみせた。


■ 熱狂の嵐!「1020SPV」で泥臭く掴んだ奇跡の「同一3位・W合格」

しかし、会場を最も熱狂させ、全審査員を唸らせたのは後半の展開だった。

地方インディーズから這い上がってきた「空原レン&ディープ・タウン・シンデレラ」が、ファンへの感謝を込めた熱唱で【1020】を計測。桃華の背中に肉薄する大健闘を見せると、続く地下アイドルグループ「有瀬ゆめ&アングラサス」も激しいラウドロックと圧倒的なコール&レスポンスで会場を支配し、奇跡の同率【1020】を叩き出した。

本来の合格枠は「上位3名」とされていたが、この熱狂と甲乙つけがたい実力を受け、総監督の皇創一プロデューサーは「両者ともに合格」とルールを越えた異例の特別措置を発表!

ステージ中央で涙を流して抱き合ったレンとゆめが「下剋上達成!」と叫ぶと、客席からは割れんばかりの地鳴りのような大歓声が巻き起こった。


■ 栄光の裏で起きた悲劇……元トップアイドル・星崎怜花が「無得点」で失格

一方で、会場を重い静寂と困惑に包んだのが、現"Le nostre dee"のひとり、星崎怜花のステージだ。

会場への到着が大幅に遅れ、体調不良が囁かれる中で泥縄のステージに立った星崎。しかし、彼女が歌い上げたのは、かつての輝かしいアイドルソングとは真逆の暗く重苦しい「闇のソナタ」だった。

このパフォーマンスに対し、SPV測定システムは「皇コンツェルンが求める『光』の属性が全く存在しない」としてデータ上「計測不能(無得点)」と判定。皇プロデューサーからも冷酷に切り捨てられ、不戦敗と同等の落選という衝撃の結果に終わった。

合格者たちがステージ上で歓喜の輪を作る中、星崎はたった一人、誰とも言葉を交わすことなく重い足取りで会場をあとにした。

一部関係者の間では、彼女の異変や終演後の行方を心配する声も上がっているが、現時点で所属事務所からの公式コメントは得られていない。


「光の象徴たちによる圧倒的な戴冠」、「地下アイドルたちの血の滲むような下剋上」、そして「絶対反ヒロインの没落」――。

狂乱と光闇が激しく交錯した歴史的オーディションは、こうして波乱の幕を閉じた。


世間の反応(SNSやまとめサイト):

「るなるなの1600やばすぎワロタw」

「DTシンデレラとアングラサスエモすぎる泣いた」

「星崎怜花どうしたん? 歌ヤバくなかった?」


◇


スマートフォンの画面をスクロールする御堂裕也の指先が、微かに震えていた。

「ネットでもこんな書かれ方をしてる……! 怜花はどこへ行ったんだ!?」


あのオーディションの終演後から、怜花とは一切連絡が取れなくなっていた。電話をかけても電波の届かない場所にあるとアナウンスが流れるだけで、彼女の自宅を訪ねても応答はない。

芸能界に大波乱を巻き起こしたオーディションから、数日が過ぎ去っていた。

星崎怜花の足取りは、完全にぷっつりと途絶えたままだった。


そんな中、渦中の新作ドラマ「わんだーわーるど」スタッフの現在放映中ドラマ『きせきのひと』第13話の撮影が無事にクランクアップを迎えた。

息つく暇もなく、皇プロダクションの主導によって、新作『わんだーわーるど』の合格者たちを対象とした本格的な準備期間がスタートする。撮影に向けたチームワークの強化と役作りのため、出演者全員が皇プロダクションの保有する合宿型生活スペースへと一時的に生活拠点を移すこととなったのだ。


都心の一等地にそびえ立つ、瀟洒な専用レジデンス。

その吹き抜けの広々としたラウンジに、合格者たちと関係者が集められていた。


「みなさん、改めて合格おめでとうございます!」


司会進行の神尾Dが、よく通る声で拍手を鳴らす。

その横には、腕を組んで静かに佇む総監督の皇創一、そして手帳を胸に抱えた秘書の神楽坂舞織が控えていた。


舞織が一歩前に出て、澄んだ声で告げる。


「今日からみなさんには、この施設で寝食を共にしながら、演技・アクション・歌唱の集中レッスンを受けていただきます。チームの絆を深め、作品の世界観を身体に叩き込んでもらうための合宿生活です」

「ふ~ん、思ったより豪華じゃん! ベッドふかふかだといいな~」


如月るながキャリーケースの上にちょこんと腰掛け、無邪気につま先を揺らす。


「るなちゃん、合宿なんだから遊びじゃないんだよ」


神楽桃華が少し困ったように苦笑いを浮かべた。その視線は、どこか落ち着かなげに裕也の背中を追っている。


「す、すごい……こんな立派な施設を使わせてもらえるなんて……」


空原レンが目を丸くして天井を見上げると、隣にいたディープ・タウン・シンデレラのメンバーたちも緊張した面持ちで頷き合っていた。


「びびるなレン! あたしたちが掴み取ったチャンスなんだ、堂々と使ってやろうぜ!」


有瀬ゆめが不敵に笑い、相棒の立花花梨が頼もしそうにその肩を叩く。アングラサスの面々も、独特の黒と紫の私服姿のまま、ラウンジの豪華さに気圧されることなく鋭い視線を巡らせていた。


そこへ、ゆったりとした足取りで歩み寄ってくる一団があった。


「やあ、みんな揃っているね」


声をかけてきたのは、すでに共演が決定しているレジェンドアイドルグループ『HED』のリーダー、天咲弥勒だった。

その背後には、皇野音緒、不二貴典、城亜聖、多々木ナナミの姿もある。


弥勒は柔らかい笑みを浮かべ、裕也の肩にぽんと手を置いた。


「裕也くん、顔色が冴えないね。……怜花くんのことは気になるだろうけれど、今は目の前の舞台に集中しないと足元をすくわれるよ」

「弥勒さん……」


音緒や不二たちも、これから過酷な撮影を共にする仲間として、レンやゆめたちに歓迎の視線を投げかけていた。


皇Pが厳かに口を開く。


「これより始まる制作期間は、生半加な覚悟では乗り切れない。だが、ここにいる全員が厳しい選考を勝ち抜いた者たちだ。存分にその才能を競い合い、最高の作品を作り上げてくれたまえ」


それぞれの思惑と決意が交錯する中、華やかな合宿生活の幕が開かれた。

だが、その活気あふれる光の輪の中に――星崎怜花の姿だけは、どこにもなかった。


◇


小鳥の心地よいさえずりが、静寂に包まれた朝の空気を揺らしていた。

柔らかな光が差し込む、見覚えのない豪奢で広大なベッドルーム。


「う……、う、うん……?!」


重い瞼の奥で、怜花はこれまでに味わったことのないような激しい精神の疲弊と、魂の芯に残る重い縛りを感じていた。

全身を包む気だるい虚脱感。だがそれは、一晩中異能による過酷な精神侵食を受け、意識の奥深くまで支配し尽くされたあとのような、抗いようのない隷属感を伴っていた。

自我のあちこちに残る、歪んだ呪縛の熱。

何度も精神を上書きされ、自らのプライドを根底から塗り替えられた生々しい記憶。


(あたし……裕也と……? やっぱり、あのキスのことは……夢だったんだ……)


これまで幾度となく深い信頼を寄せてきた、最愛の裕也。

昨夜も自分を力強く抱きしめ、何度も名前を呼びながらすべてを包み込んでくれた――その温もりの感触と安らぎが記憶の奥底から蘇り、怜花は安らかな息を漏らしながら微かに唇を綻ばせかけた。


跳ね起きようとした瞬間、周囲を満たす冷たい空気に違和感を覚える。

自らを保護していたはずの防壁が、完全に消失していた。

周囲を見渡した怜花は、息を呑んだ。

自分の守るべきアイデンティティは何一つ身にまとっておらず、完全に無防備な精神のままベッドの中に横たわっていた。


「えっ……?! こっ、これは……?!」


記憶の断片を手繰り寄せようとしたその時、掛け布団のすぐ横から、低く濁った男の吐息と体温を感じ取った。

裕也のものとは違う、かすかに漂う知らない香水の匂い。

視線を動かした怜花の瞳に飛び込んできたのは、乱れたシーツの隙間から、禍々しいオーラを放って傲然と佇む男の不気味な影だった。

昨夜の過酷な支配を物語るように、絶対的な優位を誇示し、生々しい空気をまとった姿。

男がゆっくりと目を開け、低く甘い声で囁いた。


「おはよう、れいかくん……いや、怜花」

「!!!!!!」


男は――黒崎だった。

サングラスを外したその冷徹な瞳が、青ざめる怜花を至近距離からじっと見つめている。

黒崎は薄く唇を歪め、残酷な笑みを浮かべた。


「どうだね。俺と一夜を共にした、翌日の朝の目覚めの気分は?」


昨夜、自分が裕也のものだと信じ込んで受け入れ、すべてを委ね、芯から屈服させられてしまった男は――裕也ではなく、目の前の男だった。

その事実を身体が、記憶が、精神の疼きをもって否定できずに思い出していく。


「そっ、そんな……あたし……ゆっ、裕也……!」


声にならない悲鳴が喉を裂く。

信じていた世界、守りたかった誇り、そして何よりも裕也に捧げていたはずの心と身体。

怜花の胸の中で、何かが音を立てて粉々に砕け散っていった。


(第9話「崩壊の足音」おわり / 第10話へ続く)

メインヒロインのひとり星崎 怜花が歌う、らいだ~くの挿入歌です


『ミッドナイト・ベルベット』


架空アニメ 「らいだ~く」 挿入歌


歌:星崎 怜花


https://suno.com/s/MpItuXAO9SWKuuKr

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