第28話 「劣化クローン」
闇野プロダクションのエリアマネージャー室。重苦しい沈黙が支配する空間のなか、本社最高位幹部シェイドの冷徹な言葉が、四天王であるエリアマネージャー・シンセンス(氷室聖人)の頭上から容赦なく突き下ろされていた。
「・・・・というわけで、わたしは一向に成果の上がらないシンセンスの監督や指導を任された」
「かっ監督・指導ですか?!」
「ああ・・・、任務よりもカメオの色香に惑わされてロクにノルマも達成できずにチェバロンのサポートを十分に全うできず結果的にやつを見殺しにして、自分とカメオだけで手を汚さず戦わずにその場から撤収したではないか。ちゃんとヴァルキリーから報告も受けている」
「くっ・・・」
「ヴァルキリーはチェバロンの監督だから任務あるのにサポートできずに奴を見殺しにしたおまえの大きな減点対象であるな」
「くっくっくっ今期の人事評価を楽しみにしておくのだな」
「こっこのわたしが・・・・」
「つまりおまえはすでに半分上詰んでいるということだ」
「な・・・・」
シェイドがシンセンスに近寄って数枚の書類を渡した。
「こっこれは・・・」
「これが今回おまえたちに課せられた名誉挽回のための最初で最後のミッションの指令書だ」
「ぐあ・・・・・」
「姫香様からのご厚情だ、それが無理なら今すぐ異動願を出せ。出さないのなら具体的な企画書を三日以内にこの私に提出しろ。それを見て精査した後に、ミラージュに提出出ておく」
「つまり、わたしはもう直接ミラージュには?」
「ああ・・・・、もう直接やりとりは出来ない。これからはすべてこの私を通してすることだ。もっとも任務が成功するまで、この私がこうしてお前に会うことはまずないがな。今日私がわざわざここに出向いたのは最後に直接おまえに指令を言い渡しに来たのとかわいいサーレス、スノア、シャーリーも顔を見ておきたかったからだ」
「な・・・・」
「これからはすべて【ダークメール】で送ること、いいな?」
「わっわかりました・・・」
「よろしい」
サーレス、スノア、シャーリーが近寄って心配そうにシンセンスのことを見つめている。
「ああ・・・、それからサーレス、スノア、シャーリー」
「「「はっはい!」」」
「お前たち分かっていると思うが、今のおまえたちの直属の上司はこの男、いくら先がないからといっても移動願を出さずに、こいつを裏切ることは組織上許されんぞ、、わかっているな?」
「「「はいっ!もちろんです!!!」」」
「ふふ、どうやら私の教えをきちんと守っているようだな…」
三人は顔を見合わせるがお互い頷いてシンセンスのことを見つめる。
仕事上はこのシンセンスが自分たちに良くしてくれており、いくら今さら危うくても彼を見捨てる気はさらさらなかった。
その強い意志を師であるシェイドへと見かえす。
「ふふ・・・、良い心掛けだ、なお、本ミッションはすでに始まろうとしている」
「「「・・・・・。」」」
「したがって、今回の任務に不安があるときはミッションが始まるまでに移動願を出すこと。ミラージュから今週中に出すようきつく言われている。わかったな?」
「「「はいっ!!!」」」
シンセンスを見捨てる気など、端から三人の心には微塵も存在しなかった。しかし、その瞳に秘められた不退転の決意を、ただの従順な肯定として受け取るシェイドの口元が、満足げに綻ぶ。
「ふふ、よろしい。では、達者でな」
教えを忠実に守る愛弟子たちの背中を見つめながらも、シェイドの脳裏には、言語化を拒む不穏な予感が過ぎっていた。
(――何となく、この三人とはこれから対立関係になるような気がしている)
「「「シェイド、今日は貴女にお会いできてうれしかったです」」」
「うむ」
シェイドは三人へ最後となるであろう笑みを投げかけてこの部屋から出て行った。
◇
シンセンスとの対話を終え、部屋から出たシェイドは、そこで偶然ともえの姿を認めた。
「・・・シェイド?!」
「ほう・・・、カメオか、ひさしぶりだな?」
「ひさしぶり? って, あんたこの間のチェバロンのパーティーで会ったじゃないの?!」
「フフフ、面白い、お前のシンセンスと同じことを言うのだな」
「何で、あそこにいたのよ?」
「さあな? もし仮にそこに居たとしてもお前は知らされていないのだろう?」
「あたしだって、Royal Fangs (ロイヤル・ファングス)の一員じゃない!」
「うん? ああ・・・いちおう数合わせの関係でそうだな。姫香様とアイギス以外の四天王たちと同じだな。単に変わりがいないからという数合わせ」
「何ですってえ~!」
「わからんのか?知らされていないということは知らせる必要がないということだつまり知る権利がない、よってこの私がそのことを末端のお前に知らせる義務はないということだ」
「こっこの・・・!?」
「いつもミスばかりしているおまえと私たちを一緒にするな。!」
「ぐっ・・・・」
「いちおうRoyal Fangs (ロイヤル・ファングス)として名を連ねているわけだ。それで満足しておくんだな」
「こっこの・・・」
「だから、そんな頭脳だからこの私がここへ派遣されてきたのかがわからないということだ。たかがコピーがわれらオリジナルのハイニューマンと一緒にいられるんだそれで満足していろ」
「シェイド~~~!!!
「ふっやるのか?! 劣化クローンであるおまえごときの実力でこの私に触れられるとでも?!」
「きっきさま~~~!!!」
もえがシェイドに襲い掛かるが、シェイドには全く当たらない。
しかもさんざんもえがマジックを放った後に、息を切らせた彼女の横に突然現れて顔のすぐ横に手を添えて念を込めるともえは思いっきり壁へと頭が下の足が上の状態にて吹っ飛ばされた。
ドガッ
「ふっ」
「ぐわあああああ~~~~っ」
「ふん、弱すぎる。まるで話にならんな」
「こっこの・・・・」
「大きな口を叩くのはちゃんと実力を持ってからにしろ」
「がはっ」
もえはたたきつけられた壁で吐血しながら床へとずり落ちる。
「シンセンスやおまえのような末端は、口の利き方に気をつけろ」
シェイドはそう言うとスタスタとその場を去って行った。
◇
部屋の中からその音を聞いてシンセンスが現れた。
「もえっ! どうしたんだ、もえっ!」
シンセンスは吐血してボロボロになっているもえを見つけてあわてて駆け寄る。
「シンセンス・・・」
「もえ・・・」
「あたしたちってやはり【名前ばかりの末端】みたいよ・・・、シェイドがそう言っていた」
「・・・!」
「ねえ、シンセンス、これからどうしよう、シンセンス、あたしたちどうやら上に目をつけられているみたいよ」
「もえ・・・、わたしは・・・」
そして、上司であるシンセンスのことを心配してサーレス、スノア、シャーリーの三人が部屋から出てきて声をかけてくる。
「ああ・・・、おまえたち大丈夫だ…」
サーレス、スノア、シャーリーが心からシンセンスやもえのことを心配しているのだがシンセンスにはそれがわからない。
「(こいつらはもしかしていざとなったら私たちのことを平気で裏切るのでは?)」
シンセンスが疑心暗鬼になるのは仕方がなく、その時シンセンスの頭には先日自分たちにサポート不足で警察に逮捕されたチェバロンのことが頭に浮かんだ。
◇
同刻警察刑務所内の特別独房。
「くっ・・・いったいいつになったらここから出られるんだ。姫香様! 俺は!俺は! 怜花・・・・」
チェバロンは愛しい恋人である怜花のことを思い出す。
◇
「・・・ねえ、シンセンス」
「くっ・・・、警察や姫香様達から奴が尋問される前に、俺たちで始末する必要が出てきたようだな…」
(第28話「劣化クローン」おわり / 第29話へ続く)
メインヒロイン?!のひとり空原 レンが歌う、らいだ~くの後期ED主題歌です
『Catch My Spotlight!』
架空アニメ 「らいだ~く」 後期ED主題歌
歌:空原 レン(そらはら れん) & ディープ・タウン・シンデレラ
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