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第24話「激昂」

挿絵(By みてみん)


「クク……ッ、アハハハハッ! そうだ、かかってくるがいい若造どもォッ! 貴様らの絶対支配領域ごと、俺の最高傑作で圧殺してやるッ!!」


狂ったように高笑いする黒崎の咆哮を合図に、神楽怜花の全身から立ち上る闇の闘気が、さらに禍々しさを増してロッジの室内を侵食していく。


十三人衆の幹部クラスである四天王としてのポテンシャル、数ミクロンコンマ速く生まれた姉としての適性、そして黒崎の手で極限まで引き出された異能の出力。彼女がその指先をすっと動かした瞬間、空間そのものが凍りつくような冷徹な超重力が裕也たちの肉体を直撃した。


「くっ……これが、怜花の力……っ!」


裕也は血の滲む唇を噛み締め、全身の神経を爆発させて【P・Zパーソナルゾーン】の重圧を前面へと展開する。お互いの絶対支配領域が、歪んだ空間の境界線で火花を散らし、激しく喰らい合いを始めた。


だが、裕也の【P・Z】の内側へと鋭く視線を向けた黒崎は、その醜悪な顔面をこれ以上ないほど残酷に歪め、勝利を確信した下卑た口調で言葉を紡ぎ出した。


「おい裕也。貴様は怜花を連れて帰るとほざいたな? 昔の、あの光の中に帰るなどと、本気でそんな綺麗事が通用すると思っているのかね?」

「……何が言いたい、黒崎ィッ!」

「教えてやろう、貴様らが背負った血の呪いという名の最高に愉快な現実をなァッ!」


黒崎は手元のコントロールパネルを乱暴に叩く。背後の巨大モニターに、幾重もの遺伝子データと、薄暗い培養液で満たされた研究施設の記録映像が冷酷に映し出された。


「貴様と怜花はな……同じ研究施設で、同じ遺伝子ベースから抽出されて作られた、本物の血の分身――『きょうだい』なんだよォッ!!」

「――っ!?」


激しい衝撃が裕也の脳髄を打ち砕いた。


「初恋の相手? 運命の少女? 笑わせるなッ! 貴様が恋焦がれていたのは、ただの『姉』だ!! 同じ培養槽の培養液から、怜花の方が数ミクロン、ほんのコンマ数秒早く外に出た。ただそれだけの理由で、彼女は貴様の姉なのだよ!!」


黒崎の容赦のない暴露は、裕也のアイデンティティを根底から引き裂いていく。初恋だと思っていた少女が、たった一人の血を分けた姉だった。そのあまりにも歪で非情な事実に、裕也の【P・Z】の展開が一瞬、致命的に揺らいだ。


「しかもだァ! その最愛の姉の肉体も精神も、この俺が自分なしでは呼吸すらできなくなるまで隅々まで開発し尽くしてやった!! 貴様から得られなかった極上の悦びを、彼女の魂の最奥まで刻み込んでなァ!!」

「黙れ……黙れぇぇぇッ!!」


裕也の喉から、理性を完全に失った獣のような絶叫が漏れ出す。

激昂した裕也のオーラが、怒りのままに膨れ上がるが、その心の隙を怜花の冷徹な闇の波動が見逃さなかった。


「危ない、裕也くんっ!」


傍らにいた桃華が、過酷な荒行を経て極限まで研ぎ澄ませた黄金のオーラを爆発させ、裕也の前に飛び出す。

自身の心拍数と完全に同調した【BEATビート】の物理衝撃波。桃華は渾身の力を込め、迫り来る闇の領域の境界線をその衝撃打で力任せにぶち割った。


「裕也くん、しっかりしてっ! 黒崎の言葉を聞いちゃダメ、あいつはあなたの心を折ろうとしているの……っ! 血の宿命なんて関係ない。それでもあたしは、いつだって裕也くんの味方だからっ!!」


涙を流しながらも、真っ直ぐに背中を支えてくれる歌姫の叫び。その温もりが、絶望の深淵に落ちかけていた裕也の魂を、辛うじて現世へと繋ぎ止めた。


「……すまない、桃華。俺は、大丈夫だ」


裕也は血の滴る拳を固く握り締め、涙を拭って前を見据えた。


「黒崎……お前だけは、絶対に許さない……ッ!」

「怜花、おいたが過ぎる虫どもを、今すぐ私のために噛み殺してあげなさい」


黒崎の冷酷な命令を受け、怜花は妖艶に微笑みながら跳躍する。

敵の【P・Z】と、黒崎に本気で完全依存した姉の猛攻。裕也たちは涙を呑んで、最愛の、たった一人の姉である怜花を止めるために武器を構えた。

二人の絶対異能の領域が真っ向から激突し、撮影本部ロッジの壁が、床が、空間の軋みとともに激しく爆砕していく。


傷を負わせるわけにはいかない。だが、全開の力で殺しに来る姉の暴威を止める術は、もはや一つしかなかった。


「怜花ーーーッ!!」


裕也は【P・Z】の圧力を限界まで収束させ、怜花の闇の領域を強引に中和して押し返す。一瞬の隙。そこへ桃華の【BEAT】の衝撃波が、怜花の防御をかいくぐってその細い身体へと優しく、しかし確実に叩き込まれた。


「あ……っ」


短い吐息を残し、能力の極限解放による反動も相まって、怜花は糸が切れた人形のようにその場へ崩れ落ち、意識を失った。気絶させることで、どうにか彼女の暴走を止めることに成功したのだ。


「怜花……っ!」


倒れた姉の身体を抱き抱え、裕也は彼女を安全なロッジの傍らへとそっと横たえた。洗脳の闇のオーラは引いたものの、黒崎との甘く歪んだ官能の記憶が魂に刻まれてしまった怜花は、精神的に朦朧としたまま、ただ浅い呼吸を繰り返している。


「チッ……使えない人形め。だが、これで邪魔者は消えたなぁッ!!」


自身の「最高傑作」だった怜花を撃破され、完全に孤立無援となった十三人衆の四天王・黒崎烈治が、血走った眼球をギラギラと輝かせながら起き上がった。もはやその顔に四天王としての威厳はなく、すべてを失ったバカな悪党としての狂気だけが満ちている。


「お前たちのせいで俺は全部失ったんだよォッ! だったらここで刺し違えてでも、貴様らの肉体を木っ端微塵にすり潰してやるわァァァッ!!」


黒崎の全身から、文字通りの自爆をも辞さない禍々しい【P・Z】の暴威が爆発的に膨れ上がる。

すべての因果の始まりである四天王のひとり黒崎チェバロンとの、本当のラストバトルの火蓋が、ついに切って落とされた。


(第24話「激昂」おわり / 第25話へ続く)

メインヒロインのひとり神楽 桃華が歌う、らいだ~くの挿入歌です


『ルミナス・ストライカー』


架空アニメ 「らいだ~く」 挿入歌


歌:神楽 桃華


https://suno.com/s/qizgzNkkGC4ldIm0

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