14話 勝利の略奪者
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的で緩く書いてますので拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
―緑生迷宮探索五日目―
「おい、見間違いか?コウ。」
上位冒険者のフォーグルがあっけらかんとした態度で声をかける。
「あぁ、見間違いじゃねぇな。ありゃ亜種だ。」
俺もあっけらかんとして答えた。
「ここは下層だっけ?」
「いや、ここは上層だ。」
「ひょっとして、背中の斑点が似てるだけの新種とか?」
「残念ながら、文献通り、下層の魔物だな。それに何度もやり合ってきた、お前もよく知ってるだろ。」
「だよな。ならこれまで通りの立ち回りなら中位冒険者達以下の皆はやられちまうな。」
「そうだな。上層なのに死人出ましたとかセリーヌに言ったら卒倒するだろうし俺等もただじゃ済まねぇな。」
「だよな……なぁ……ここって上層だよな?なんで蜘蛛が居るんだよ。」
周囲を見渡すフォーグル。
「あぁ、間違いなく上層だ。なんでだろな。」
見渡さなくともいいのに。
「上層にいる蜘蛛は他の魔物食わねぇんだな。」
「あぁ、俺も初めて見る。経験上あり得ねぇが迷宮は奇なりとはこの事を言うんだろな。」
崖下を眺める先には亜種【魔吸蜘蛛】の大群の姿と羽虫の群れがあった。
魔吸蜘蛛の特徴といえば、頭は人の背丈ほどだが胴体の体躯は、その頭の5倍ともいわれ、背中の斑点が白だと汎用種、赤いと亜種に分類され、その個体の強度は汎用種と比較するのは意味がないくらい明らかで、本来ならば外敵の魔素を吸っているはずだが、先ほどから観ていても近場にいる外敵をいっこうに食べようとしない。
様子がおかしい。
「ていうかさ……」
『恐ろしいじゃねぇか。』
「お主ら、声を揃えてそう言う割には言動が乖離しすぎているぞ。寝伏せながら尻を掻いて全く……携帯食料に手を付けおって……ええぃ、脚をパタパタとするな、後ろを見よ。」
ヤンヌが横槍を入れて2人して振り返ると中位冒険者以下は見事な動揺っぷりを見せていた。
「いい機会かもな……おい、ロック。行けるか?」
「コウさんが行けって言うなら行けるっス。」
「無茶しそうなら、すぐ言えよ。」
ロックは隣で突っ伏せていたが革製の手袋を咥え、そしてゆっくりと填め直しながら返事する。
その姿はさながらグラハムの様だとフォーグルは囁くが、俺もそう思えて妙な安心感を憶える。
流石親子だ。
獲物を狙う時の横顔はグラハムと重なる。
額に付けるゴーグルも素材は違えど俺やフォーグル、ヤンヌからしたら親父と瓜二つだ。
「まず敵の数を減らすんで、その後に奴等の面倒なあの能力封じます。その後に中位冒険者達が三人一組で一匹ずつ対処して彼等は即時撤退……って感じでいいスか?」
狙いを理解してくれていて、非常に話が早い。
戦況の落とし所を見極める力なんて経験を積んでいないと即座に閃かないのだが、それが出来ると言うことはロックには、やはり場数が多いと改めて認識させられる。
が、一点だけ漏れがあると指摘するとそれも既に織り込み済みで気付いていた。
中位冒険者以下を不安にさせない為、ロックはあえて黙っていた。
その観察眼に俺もフォーグルもヤンヌも流石と呟く。
「聞いたか?中位冒険者達。ロックの合図で一斉攻撃だ。その前に三人一組で固まっとけよ。」
俺の指示で促された者達は、格は関係なく物理組の前衛と魔法組の後衛に分けさせたが、2人余った。
するとフォーグルがここに来て自ら率先して仕事をすると言い出した。
この5日間指導はするものの、唯一まともに戦闘をしてこなかったサボり魔が珍しくも殺る気になっている。
残った2人というのは、前衛職と後衛職、一方は剣士なのか、鈍物の剣を携え、もう一方は支援特化の魔法使い。
そして両者共に駆け出しの新人冒険者。
先輩冒険者として、しっかりと背中を示さなければ、彼等からしたら、ただのおっさんにしか見えない事を危惧したんだろうと俺は思ったが、実のところ両者共、可愛らしく美しい娘だからだとフォーグルが呟く。
頼りになる姿を単に見せつけたいだけだった。
残ったのが男だったら、きっと此奴は動かなかったに違いない。
この男はやたら女性冒険者のみに助力していると過去に何度か呆れるセリーヌから聞いていちゃいたが、悪癖は歳を重ねても未だ健在らしい。
「なんでもいいや、フォーグルが殺る気になってんなら。」
俺がそう言って再び崖下へ視線をやると既に出撃の準備を終えていたロックは俺の合図を待っていた。
「行けるなら行っていいぞ。」
その言葉に待ってましたと言わんばかりに飛び起きて勢い良く崖を降るロックは得意の弓で着地点に降り立つ迄に数匹の敵を屠る。
その射放たれた全ての矢は一撃で急所を捉えていた。
「やるなぁ。」
思いの外、初めて見たやんちゃ坊主の腕前に俺は驚嘆の粒を溢して流石、英雄ガロンに次ぐ昇華速度の上位冒険者だと感嘆したが、何故か隣でフォーグルは自慢気な態度を見せる。
なんでお前が誇らしくなってるのかと聞けば、フォーグルはある意味で息子みたいだからと珍しく哀愁を漂わせていた。
グラハムが冒険者としては再起不能となってからは陰ながら支えてきた筆頭支援者はフォーグルだったと数日前、焚き火を囲んでいた時に知った。
そんな情に熱い一面も持ち併せていたのかと、その時は誂ったが、なるほど満更、大袈裟でもないようだ。
再び視線を崖下へと向けるとロックは孤軍奮闘だが、獅子奮迅の活躍をしていた。
その戦い方は両親とはとても似つかない。
一人で前衛も後衛も熟している。
「ロックは確かに【天星】と呼ばれたが今やあの動きは【万能者】って呼んでいる奴が、まぁ〜多いこと。」
フォーグルが言う【万能者】……武の英雄にして、この冒険者世界の礎を築き上げた知らぬ者は決して居ないと云われる偉人。
その武功や英雄譚の数々は幼い日から嫌というほど見聞かされる。
中でも成り上がり冒険譚はどの国でも一線を画して人気があり、どんな男女もいの一番に憧れるものだ。
「万能というには、まだ早いんじゃないのか?」
俺がそう言うとフォーグルもヤンヌも真っ向から否定する。
聞けば既に大陸全土にその知名度はあり、19歳の頃から世界を股にかけ飛び回ってきたらしく、その功績は最早俺を飛び越えていると知ってからは、その実力を目の当たりにしたかった。
この現状はそれを観るには丁度いい機会だ。
フォーグルは言った。
「ずっとお前の背中追って来たんだよ。帰ってくる度に『コウさんに少し近付けた』って嬉しそうに語るんだが、その顔見る度に昔からの連中は、そりゃあ複雑だったな。お前の事もそうたが、タニアだけじゃなく俺達も心配して素直に喜べなかった一面があるし、何度言っても誰とも団を結成しようとしないし、その上お前以上の実力ときたもんだ。だってよ?単独でヴーヴィン遺跡を鎮圧したんだぜ。8年前、バルクレース国で魔物の氾濫が起きて遺跡付近の砦で国防軍やあっちの冒険者らと侵攻を防いでたんだけどよ、突然リースの奴が滅茶苦茶キレてよ。【天星】とはいえ中位冒険者が単身で馬鹿みたいに突っ込んでって戻ってきたかと思えば迷宮主の首とデケェ魔核を涼しい顔して持ち帰って来やがった。最早英雄の誕生だとバルクレースでは騒がれて銅像すら建立されんだから。お前等がヴーヴィン遺跡攻略したのって21歳の頃だろ。それよか2年も早くて、しかも単独だぜ?信じられるか?」
驚いた。
ヴーヴィン遺跡といえばジェノとロゼリア、3人で一月近くかけ、やっとの思いで攻略出来た、西の隣国バルクレースの最も厄介極まりない大迷宮。
擬態木は居るわ、羽虫や蜂は居るわで、ロゼリアなんて気分害して中々進もうとしないわで、散々苦労した末に、後にも先にも手こずった苦い記憶しかない。
そんな場所をたった1人で攻略するとは。
それも、氾濫時期に。
それが切っ掛けで上位冒険者と成った事を誰が文句を言えようか。
そんな話をしながら余所見していたらヤンヌが指差ししながら視線を誘導すると、ロックが敵の半数を見事に片付けていて、俺もフォーグルもその手際の良さに感心する。
ここからが見物だとヤンヌもフォーグルもにやけると、ロックを英雄たらしめる神授能力が発動する。
【勝利の略奪者】という名に相応しい神授能力。
ロックの掛け声と共に敵の眼前に見たことがない複雑な文様を刻んだ魔力障壁が浮かぶ。
魔法陣だ。それも金色の。
それが敵の身体を包み込むと同時にロックは右手で空を握りぶすが如く時計回りに90度捻ってみせると何処からともなく一瞬何かの音が聴こえた。
複数の敵の魔素を封じ込めるというか乱れさせる妨害能力の発動。
それにより体内に巡る魔素の流れが阻害されると巧く魔素を操れなくなる。
それは人も魔物も同じ。
つまり魔狼や魔熊などとは違い、基本的にはこの手のタイプは例外を除き攻撃手段を持ち得ていないが魔素だけを食事とする魔吸蜘蛛からしてみれば、ロックは天敵中の天敵。
対象の魔素を吸えなくなる結果、ただのデカっ腹の蜘蛛でしかないし、おまけに、この戦闘でロックが放ってきた数々の魔法は機動力や耐性力など低下させる支援魔法だ。
下層の厄介者として名を馳せる蜘蛛はロックの手にかかれば、今では鈍間で格下の攻撃すらも致命的なまでにまともに防げない、ただのデカい的にしか過ぎない。
ロックは左手を挙げて合図を出した。
それを見て直ぐ様、中位冒険者以下に突撃の指示を出すと、凄まじい速度で蜘蛛達は狩られてゆく。
フォーグル曰くロックの神授能力は一度に仕掛けれる相手の数には限界が無いらしい。
それでも端からそうしなかったのは俺に成長した姿を見せたかったのだとフォーグルもヤンヌも言う。
フォーグル率いる冒険団【游刻旅団】と【蒼き芽の守護】との依頼遂行中とある迷宮で起きた氾濫時、無数の敵を一片に無力化した話は伝説的に語られ大陸全土の国から果ては冒険団まで勧誘が引っ切り無しに来ているらしく敵の弱体化によって、どんな冒険者でも対応できるとなれば、そりゃあ引く手数多になるのは必然だと素直に思えたが、その感情は今は心の隅に置いておき俺はヤンヌに確認する。
「ロックとフォーグル、どっちが格上なんだ?」
「同年代時期では明らかロックじゃが、経験の差でフォーグルじゃな。」
「そうか、準備は?」
「抜かりなくじゃ。念の為に全員分の用意もしておる。安心せい。」
崖下の冒険者達も思いがけず楽に下層の魔物を屠った事でこの世界における必定、顕在能力の大幅上昇を得る。
それにより、自身に漲る力の向上に歓喜するも指示通りに撤退を始めるが、その行動力ひいては切り替えの早さは新人冒険者にはまだ無い。
「初めての感覚はどうだい?だが、ここは戦地だ。最後まで気を抜いてちゃダメだぞ。そんな愛らしい後輩諸君に先輩冒険者の格好いい姿を見せちゃうんだから!しっかりと観ておきなさい。」
フォーグルがそう言い切るか切らないかの刹那に暗がりの天井からフォーグルの一団を目掛けて蜘蛛の親玉が鋭く脚先を伸ばして降りてきたが、フォーグルはそれを軽々と片手の剣で防ぐと同時にヤンヌが準備していた魔力障壁も相まった。
「先程の闘い方を観れば君は魔法剣士だな。同じ魔法剣士の私の闘い方をとくとご覧あれ。」
新人冒険者の女剣士に向かって中年剣士は軽やかにそう吐くと、慣れたウインクをしてみせ、蜘蛛の親玉の脚先を押し返し、それを両断する。
「可愛い後輩を脅かした罪だ……万死に値する。」
そう言い切ると、フォーグルは瞬時に全身に魔素を走らせた。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
一身上の都合により不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




