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冒険者は再び夢をみる 〜序章〜  作者: ユキ サワネ
一章 優良なる平凡
1/18

1話 OMG

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的で緩く書いてます

 ―冒険者―


 この世界における【魔】の力に対抗する人類の強力な切り札の一つ。


 この適性を有して生まれて来た者達は一人残らず幼少から剣を握り、知を得て武を磨くし、成人すれば冒険者となる。


 平民や商人や貴族などよりも上手くいけば富も名誉も桁違いに得られるし、上手くいかなくともそれなりに飯を食えるし生活には困らない。それがこの世界における冒険者という職業だ。



 人類と【魔】の衝突による永き乱世は幾人もの英雄達の手によって次第に沈静化され今では世界は随分と穏やかになった。


 それから数年が過ぎて、かつて魔宮と呼ばれ人類を苦しめていた迷宮は今や世界各地でひっそりと息を潜めて存在する。


 【魔】は絶えたわけではないが、【魔】の本来在るべき姿に戻ったまでというのが、一番正しい表現である。


 古来、この世界【リアーク】は人や獣が共通の言語を扱い、【魔】と共存して生き、互いに活かされてきた持ちつ持たれつの関係性があったと云われる。


 だが、幾千年前に【魔】の守護星が事もあろうか暴走し世界を徐々に破滅させようとしていた。


 その奇行に慌てた他の守護星達はそれを止めようと躍起になったのが事の始まりで、幾千年間の苦労の末、守護星達は途方もない尽力で英雄達を育てた為に今日がある。


 そのお陰でこうして俺は、日々惰眠を貪るもよし、迷宮にて勝手気ままに稼ぐも良しのうだつの上がらない冒険者としていられる。


 英雄達やそれに近い活躍をした者達の様に飛び抜けて豪華絢爛な生活をするわけではなく、かと言って必死こいて命を削ってまで鬼気迫る危険に塗れた生活をするわけでもなく、のんびりと余裕しかない生活を営んでいる。


 『富や名声は欲しい奴が掻っ攫えば良い。』というのが俺の冒険者としての信条や理念というか持論だ。


 武の英雄【ガロン】の成り上がり冒険譚や稀代の高貴【ジオール】の聖人君子譚には思うことはあれど決して惑わされる事はそう長くはなかった。それは、俺自身そういう〝柄〟じゃない事くらい解りきっていたからに過ぎず、周りの冒険者より遥かに早く諦めがついていたからだ。


 冒険者宿舎、いわゆる【ギルド】に集うほとんどの奴らはそういった憧れや矜持といった一種の信仰地味たものを抱えて日々精進しているからか、割と血の気が多いというか血気盛んだが、俺は明らかに違う。


 『今日飯を食う。その為に無理せず出来る範囲で出来る限り死力を尽くす。』


 迷宮を完全攻略して世界を旅するなんて上等さはまっぴら御免つかまつる。


 程よく稼いで程よく休んで程よく遊ぶ。


 それが、俺の信念だ。


 大半、というかほぼほぼ冒険者は大なり小なりのグループを作る。迷宮攻略の為、富や名声を追い求める為に。


 一人じゃ到底成し得ないことも往々にして有るこの世界で〝上〟を目指すならば一人でも多く優れた〝仲間〟と集まるのは避けて通れない道なのだろう。


 長年、一人冒険者(ソロ)をやっていると馬が合ってる連中はまだしも、馬が合わずに喧嘩離れする奴らを見たりするのも日常茶飯時で、それを目の当たりにする度に心の底で反吐が出る。


 仲間との信頼なんて詭弁はもう充分過ぎるほど腹一杯だ。


 信ずるは己が実力の把握と立場。


 杭は出なければ打たれる事はないし、出るつもりなんて毛頭無い。


 誰かと()()めば、持ち前の磨かれた疑心暗鬼や人間不信が仕事しちゃう妙で面倒臭い俺には仲間なんて言葉は荷が重すぎて仕方ない。


 良しも悪しも仲間がいる奴等に嫉妬しているのか憧れているのか最早判らないほどで、それは単に俺自身が未熟者とも言える事に他ならない。


 だからこその万年中位だ。


 自分一人で生きているわけではないこの世界に憂鬱さや無力さを感じられずにはいられない腹の内もあるからこそ、俺は最低限の敬意を周りに振る舞う。


 冒険者以前の問題はなるべく無くす。この世界の民として、一人として、人として真っ当に生きていたいだけだ。


 多くは望まない。ただ穏やかに過ごして寿命を終えたい。


 かつて憧れた冒険者(理想)とは随分とかけ離れてしまったが、俺はこのままで良いと心底思う。


 そんな俺を昔からよく知る連中はこぞってこう呼ぶ。


 【稀代の万年中位】と。


 今日もギルドの酒場でそんな事を想い浮かべながら酒を喰らう……。


☆☆☆


 「グインシア!これ以上は駄目だ!退却するぞ!」


 今日も変わらず潜り慣れた迷宮に素材回収に来た道中、そんな叫び声が聞こえた。


 この辺りの魔物は、独り身の俺からしても無理無茶せずに対応できる脅威だが、さては何処ぞの功に焦った新米冒険者達が無茶をしてくれたな。


 俺の足元に転がる魔物の核を回収しながらふと声が聞こえた方を見るとそこから感じ取れた気配は常軌を逸する物だった。


 暗がりの通路から三人、走りながらこちらに来る。


 そのうち二人は仲間であろう者を担ぎながら逃げ延びて来たが、それを追ってくる大きな音もまた暗がりからこちら側へと向かってくるのが聞き取れた。


 暗がりから迷宮に蔓延る光苔(ヒカリゴケ)の灯りに照らされてその姿を完全に捉えた瞬間、俺は寒気に固唾を呑んだ。


 そいつらは少数精鋭にしてギルドで話題の新進気鋭冒険団。


 〝幸運旅路(フェリス・トルノ)


 竜人族の剣士に犬人族の魔法使いとエルフ族の賢者と戦士を束ねる人族の団長という混成種族の冒険団で奇抜な組み合わせと最近巷で有名だが、実力は確かとも噂される。


 「すまない!【一眼水蛇(シングルヒュドラ)】に遅れを取った!早く逃げてくれ!」


 満身創痍。身につけている装備品は既に傷だらけであったが、それ以上に悲壮に満ちた人族の男が息を荒げながら必死に訴えかけてきたが、その逃げ足の勢いは衰えることなく迷宮の安全地帯方面へと駆けてゆく。


 という事は、【一眼水蛇】は直にここへやって来るのかと思うと、心の底で標的は変わらず彼らであって欲しい。


 新鋭とはいえ、腐っても上位の冒険者だ。その彼等が遅れを取る相手に万年中位冒険者である俺が敵うわけが無いし、ましてや手負い人を抱えながらとはいえ俺より数段も上を行く彼等と今更逃げた所で置いてけぼりを喰らうのも目に見えている。


 古来の書物によれば迷宮の魔物は、より多く、より上質でより磨かれた魂を好んで喰らうという。


 つまり、俺一人より彼等が狙われて当然だ。


 そう、焦る必要も臆する必要も無い。


 命を無駄に捨てることなんて俺の信念が許すはずがない。


 今は岩陰に潜んで【一眼水蛇】をやり過ごす。


 迷宮の安全地帯は今居る階層より二つ上にあるから彼等なら大丈夫だろう。


 階層一つ上るにあたり、彼等くらいの実力者ならどんなに手間取ったしても数十分あれば辿り着けるだろうし、その間に俺はこのまま先へ進めば良いだけの事。


 それに、無事に彼等が安全地帯に開かれた冒険者街に辿り着けば、諸手の手練冒険者やら訓練された精鋭の衛兵団やらに完膚なきまでに叩きのめされるのは確実だろうし、今なら相当な猛者達が滞在しているのも知っている。


 ここ最近迷宮が下層へ行くほど採れる素材の品質が高く良質な為か噂を耳にする凄腕冒険者達が迷宮内の安全地帯に良く集まっている。


 そんな彼らにかかれば【一眼水蛇】なんぞ、袋の鼠同然。


 にしても、中層の上層に位置するこんな場で【一眼水蛇】に出会す彼等も不憫だと思う。


 大型の魔物類は下層の更に先でしか遭遇しないと言われてきたが、よもやこんな階層で……いっそ冒険団の名を【インフェリス(不幸な)トルノ(旅路)】に改名すりゃ良いのにと不意に思うが、今は気配を消す事に集中しよう。


 僅かな雑念を全て圧し殺し暫く待つと、それまで聞こえていた騒音も殺気に溢れた存在感も消えていて安堵しかない。


 馬鹿デカい岩陰を背もたれにして無心に至る事こそ俺なりの処世術であり、物種だ。


 「さて、そろそろ行くか。」


 街のギルドで依頼を受け指定された素材収集の再開。


 それまで幾ばくかの疲労が回復するくらい時は経っていた。


 岩陰から身を乗り出して緩めた気を引き締め直すと大きな眼球と視線が合い、俺は頭の中が真っ白になる前に深呼吸をする。


 視線の先にはこちらを凝視する一眼ととても大きな体躯に比べると細長く小さいが人の3倍ほどある大きな舌を素早く出し入れしている魔物がそこにいた。


 ―何故だ。


 再びひっそりと岩陰に身を戻す中、俺は心の底で反吐が出た。


 O・M・G(オーマイゴッド)と。

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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