16話 クリスマス会準備
クリスマス会の実行委員を実際にやってみて、俺は初めて知ったことがある。
イベントの実行委員ってのはただ華やかなわけではないらしいってことだ。
「斉藤くん! この段ボール、プレゼント風の巨大オブジェにしてくれ」
実行委員長が差し出してきた、ぺったんこの段ボールの束を見て俺は小さく頷いた。
放課後、実行委員たちは一つの教室に集まっていた。机を端に寄せて広いスペースを作り、それぞれが作業をしている。
その作業の一つを、俺は任された。
段ボールを持ってきた実行委員長はメガネをかけた賢そうな二年生。いかにも「委員長」って感じの先輩だ。
クリスマス会当日、遅刻とかしたら叱られそうだな。
絶対にクリスマス会の前日は早く寝て、昼休みに昼寝しなくてすむようにしよう。
勝手に決心した俺は段ボールを受け取って、窓際の壁に立てかけた。
「段ボールを箱型にして、デカいプレゼントを飾るんですっけ? 色とか指定あります?」
「特にない......っていうと困るか?」
「困ります。センスないんで」
「正直者は助かる」
委員長はおかしそうに笑いながら、ポケットからスマホを取り出した。
しばらく画面をいじったかと思うと、俺の方に見せてくれる。
「こんな感じにしてくれ。模様も画用紙の切り貼りで作る感じで」
「わかりました」
「見本の画像、DMするよ。オンスタのアカウント教えてくれ」
実行委員になってから、アカウント交換が増えたなぁ。
タイムラインが陽キャの投稿で埋まって賑やかになった。
それに比べて、委員長のアカウントには投稿がない。SNSは連絡ツールって思ってるタイプか。
「届きました。ありがとうございます」
無事にプレゼントの見本をゲットした俺は、軽く礼を言う。
すると、メガネの向こうの目が細まった。
「困ったことがあったらいつでも言ってくれよ」
「はい......って、委員長もやるんですか」
「僕は仕事の振り分けが終わって、今やることがないからな。プレゼント作り、斉藤くんだけじゃ大変だろ」
「はぁ。確かに」
真面目で優しい人だなぁ。
眩しい陽キャでもなく、お堅すぎるわけでもなく。いい塩梅の落ち着く人だ。
俺たちが二人でダンボールに手を伸ばした時だった。
明るくて、弾けるようなハツラツとした声が乱入してきたんだよ。
「俺もプレゼント作りしたいですー!」
やけにテンションの高い、聞き慣れた声は朝日川のものだ。
突如至近距離まで詰めてきた朝日川に、実行委員長は目を瞬かせた。
「朝日川、ツリーの在庫確認終わったのか」
「はい! でも飾りが何個かダメになってるやつあるみたいで、どうしようかって先輩たちが相談してます。委員長、そっちに行ってあげてください」
犬が尻尾を振ってるみたいな、人懐っこい笑顔だ。
朝日川は先輩相手だと、同級生たちとはまた違う顔を見せている気がする。
計算ではなく、天然でできているのが伝わってきてすごいと思う。
実行委員長は朝日川の言葉に頷いた。
「そうか、ツリーの飾りが......わかった。じゃあ朝日川と斉藤はプレゼント作っといてくれ」
「任せてくださーい」
にこやかに朝日川は手を振る。実行委員長の背中を見送ると、俺の方を振り返った。
「で、何したらいいんだ?」
いやいや。なんだその質問は。
「わかってて挙手したんじゃねぇのかよ」
「プレゼント作るってとこだけ聞こえてた」
「あっそ。こんなん作ってくれって」
適当で気まぐれなやつだよ本当に。
俺は実行委員長にもらった画像を朝日川に見せた。
ダンボール箱にカラフルな紙を貼り付けて、リボンの飾りをつけるオーソドックスなプレゼントだ。
画像を見る朝日川は、顎に手を当てて首を縦に振る。
「なるほどなるほど。ハートとか星の柄もつけたら可愛くなるかもな。よし、まずはダンボールを組み立てるかー」
「じゃあ俺はあっちのグループに画用紙もらってくる」
「あ、待って。俺がもらってくるから、朔弥は組み立てる方やっといて!」
「ん?ああ」
朝日川は急に早口になって、画用紙を使っているグループの方へ行ってしまった。
どっちが行っても同じなのに、変なやつだな。
違和感があったけど、あいつのすることをいちいち気にしてたらキリがない。
俺はダンボール箱が立体になるように組み立て始めた。
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