三匹の夏休み 6.ベリー・ベリー、ベリー♪
自宅の冷凍庫を見たら、少しずつとったキイチゴがかなりの量になっていました。
いつもジャムでは芸がないなぁ、って考えていたらマフィンに生ブルーベリー入りのを見つけまして。
自宅では、ヨーグルトケーキの中に入れ込む予定です~。
お昼寝から起きて、リンちゃんが見つけた桑の実の茂みに行きました。
あまーい香りの桑の実は、ジャムにしてもいいし、そのままケーキに入れてもいいかもっ!
柔らかい実をつぶさないように、そっとつまんでととっていきます。籠の中を見ながらニコニコしていると、更にリンちゃんが、こっちだと引っ張ります。
「コレ、生のままマフィンに入れてもらおうっ! それで、今日のおやつにしようよっ!」
って、リンちゃんが、ブルーベリーの茂みも見つけてきたのです。
「す、すごいっ、リンちゃん、どうやって見つけてきたの!?」
「んー、ちょっとズルとして、ちっさい妖精たちの後を追っかけたの」
小さい妖精の教える茂みに行くと、たくさんのブルーべりーがなっていたそうです。・・・妖精さんにお礼をしないとですね。
予定変更をして籠を抱えて別荘に戻ることにしました。
別荘に帰ってからメイドさんたちにお手伝いをさせてねってお願いをして、マフィンを作りました。
マフィンにタネを作ってもらって、その中にたっぷりのブルーベリーや、桑の実埋め込むのが、サラのお仕事です。
オーブンは熱くなるので、焼き立てを取り出す時、サラは触らせてもらえませんでした。残念っ!
焼き立ての甘いマフィンの香りがします。
執事さんが、頑張りましたねぇって笑顔でお茶を淹れてくれます。うん、頑張りましたよっ!
だってねえ、こんなにいっぱいあるんですよ、折角だからたっくさん作ってみんなで食べるんですよ~。
別荘のメイドさん達や、従僕さん達の分に、警備の人の分、みんなの分作りました。
食べてくれるかなぁ。好きだといいんだけどー。
「いただきまーーすっ!」
まだあったかいマフィンに齧り付きます。お行儀が悪いかもしれませんが、今日はごめんなさい!
中に入れた生のブルーベリーがつぶされてじゅわっと果汁が染み出すのを楽しむのは、これが一番おいしいって、教わったのですもん。
桑の実のプチプチ感も、ブルーベリーのじゅわっとした食感も、おいっしい~っ!!
甘酸っぱい香りが、口の中に広がって、マフィンの甘さと一緒になります。幸せ~♪
「ああ、出来立てって美味しいよねぇ~!」
「うん、美味しいねっ! ユールくんは、甘いのへーき?」
「うむ、この甘さは平気だ。とても美味いぞ」
三人で一緒に作ったお菓子を食べているのって、嬉しくて楽しくて、自然とニコニコしてしまうの。
ちょこっと振り返ってエドの方を見ると、マフィンを持ってエドもにっこり笑ってくれた。もちろん、エドの分も、ナールさまの分も作りました。
えへへ、たまにはサラがごちそうするんですよっ!
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
「・・・なあ、エド」
「なんですか、ナール様」
ソファに座りながら、子供たちを見守っているオトナはコソコソと会話をする。
「俺、いま、サラちゃんの結婚相手が「サラちゃんをくださいっ」て言ってきたら、確実に殴るわー。」
「・・・誰が、花嫁の父ですか!」
その前に、サラちゃんの兄姉が確実に息の根を止めると思いますがね。・・・サラちゃん、お嫁にいけるのかねぇ。
「だってさあ、こんなに可愛いんだぞ。抱っこして、寝かしつけて・・・もう、ウチの子だろう!」
「アル兄さんに殺される覚悟があるなら、どうぞ・・・」
「・・・やっぱりダメかあっ!」
国内でも1、2を争う剣の実力者であるアル兄さんに、魔法省のトップクラス魔法師であるイース、騎士学校主席のウォルと、氷の女神と名高いアレクサンドラ様を敵に回すとか、ないわー。
死亡証明書にサインするのと一緒だものな。
「冗談はさて置いて、今晩からは、警備を強化するぞ」
「・・・どこからが冗談だったのかは、聞かないでおきますね」
王太子領とはいえ、第一王子が滞在していて、神殿の当代巫女姫に、竜人の王子が来ているとなれば、狙いを定めてくる連中は、片手ではきくまい。
正式に挨拶をしてくる連中か、裏から侵入してくる連中かは、別として。
「せっかくの夏休みだ、子供たちには内緒でな」
「了解しました。こちらも周囲には目を配ります」
優雅にお茶を飲む姿からは想像もつかない内容を既に警備から受け取っているのであろうに、警戒をしているようには、まるで見えない。
そんな時、この人は、王太子で現在の近衛隊の隊長であることを実感する。
まあ、普段の姿からはとても想像ができないんだけどね。
一日走り回った子供たちを、お風呂につっこんで大騒ぎで入浴させ、軽く夕飯をとった後に寝かしつける。
夜回りに出る前に、サラの希望でみんなで作ったマフィンと、ミルクの入ったボウルを窓際に置いて寝たら、翌日はすっかり空になっていました。
サラちゃんは、その空のお皿をみて、とてもご満悦だった。
子供たちは爽やかなのに、オトナたちがきな臭いっ!(笑
サラちゃんたちが作ったマフィンは、屋敷内のみんなに配られました。
「おやまあ、まだ小さいと思っていたけれど、こんな事ができるようになりなさったか!」
「あら、美味しいですよ! まあまあ、女の子よねぇ。お菓子を作りたいとか」
屋敷内では、みんな微笑ましくいただきました。
が、外の警備担当の近衛隊は、悩んでいた。
「これ、俺たちが先に食べて、大丈夫かな・・・」
「アーノルドさま、まだ、サラちゃんの手作り食べてないよな?」
「・・・でも、折角作ってくれたし」
マフィンを前に悩む甲冑の集団。・・・なんとも言えない光景であったとエドは言いました。
続きもお付き合いいただけると嬉しいですっ!