証拠
文化祭二日目、早朝6時。
昨日のこともあり、俺らは遅く帰り早く行く。教室のものは今日はズタズタにされていなかったようだ。ほっと一息。
冷蔵庫の食材も無事で、今日はなんにも被害がない。
「よかったですわ~……。今日は何事もなくできそうですわね。まったく……。昨日の犯人は許せませんわ」
「犯人は誰なんだろうな。音子ちゃんたちじゃないんだろ?」
それが分かってたらとっくのとうに言っている。
すると、俺の携帯に電話がかかってきた。登録していない番号。怪しいなと思いながら、ごめんと席を外して電話に出てみる。
「はい、もしもし」
『よかった。この番号が本当に音子ちゃんのものだったわね』
「その声は朝比奈さんですか?」
『そーよ? ごめんね。朝早く。それより今から新聞部の部室来れるかしら』
「なにかわかったんですか?」
『もちのろんよ。待ってるから』
と電話が切られた。
俺はとりあえず新聞部の部室へと向かう。コンコンと二回ノックをして中に入ると、新聞部と朝比奈さんが待ち構えていた。
朝比奈さんは俺を見てにやりと笑う。
「来たわね、音子ちゃん」
「え、なんで新聞部勢ぞろいなんですか?」
「それは今の時間が集合時間だからよ新聞部の。ほかの奴らは関係ないわ。それよりこれを見て」
パソコンの画面に手招きされ、映像が再生された。
時刻は俺らが帰った数分後。きょろきょろとあたりを見渡す女子生徒。俺の履いている上靴と同じ上靴を履き、手にはカッターナイフのようなものを持っていた。
「これは昨日の監視カメラの映像よ」
「……おかしいですよこの映像」
「どこが?」
「いや、カッターナイフを持ってるじゃないですか。つまりまたやろうとしてるってことでしょ? でも今日は被害にあってませんよ?」
「それは次の画像を見て言いなさい」
そういって、映像が止められて写真が画面に映る。
知らない顔の女がテーブルクロスをカッターナイフで切り裂いている映像だった。
そして、その画像が閉じられ、再び監視カメラの映像が流れる。
扉の前には朝比奈さんと思わしき人がカメラを構えて立っており、パシャリと撮ったかと思うと中に突撃していっていた。
「え、突撃した?」
「ひさびさの格闘戦だったわ……」
「え゛っ」
「さすがに二日間、営業を休まれたらこちらとしても記事に困るもの。全力で止めさせていただいたわ」
「えぇ!?」
朝比奈さん止めたんですか!?
現行犯の写真を撮りつつ証拠を撮り終えたら突撃ってアクティブすぎるだろ。
「切り裂かれたのはテーブルクロスだったし、新聞部の部室に似たような柄のテーブルクロスがあったから勝手に交換させてもらったわ。だから被害がないのよ」
「ありがとうございます……」
「ええ、存分に感謝して頂戴。あ、このデータはあげるわ。ただ、あっちも私が新聞部ということを知ってるし、多分撮られたと思ってるから少しの間身の回りには気を付けなさい」
「は、はい」
俺はSDカードを受け取る。
「約束の口添え、頼んだわよ」
「全力で頑張ります……」
俺は新聞部を出て急いで教室へと向かう。
俺は息を切らしながら、教室へとたどり着いた。今日の営業準備をするみんなはこちらに視線を向ける。ユキは何があった?と言わんばかりの目を向けてきた。
俺はSDカードをユキに見せる。
「これ! 犯人の画像!」
「犯人の……? なぜわかった」
「新聞部の朝比奈さんに協力してもらった」
俺は息を整え、ユキにカードを渡す。
ユキは映像を検めると、なるほどなという声を出した。
「やはり神和住だったようだな。目星はつけていたが……。だがこの画像じゃテーブルクロスが切りつけられているがこっちは被害がないぞ?」
「それは朝比奈さんが全力で止めてくれたのと、似たような柄のやつがあったから交換したらしい」
「そうか。朝比奈が……」
「ユキ、そろそろ朝比奈さんを許してあげてもいいんじゃない?」
「そうだな。あとで俺からも出向こう。音子、よくやった。あとは俺に任せておけ」
ユキは頭をポンポンと撫でてきた。
俺の仕事は終わり、あとはユキに任せておこう……。




