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女ならば殴り合え! ②

 八重ちゃんの左フックを何とか防ぐ。

 だがしかし、八重ちゃんの猛撃が止まらない。繰り出される拳が腕に当たり、ものすごく痛い。


「オラオラオラオラァ!」

「ちょいちょい八重! あまり傷つけんじゃねえーよぉーっ!」


 痛い。だがしかし……ここでやられるわけにはいかないっ!

 俺は拳をはじき返し、一発右ストレートをぶちかました。俺の渾身の右ストレートは八重ちゃんの頬に当たる。

 八重ちゃんが吹っ飛んでいき、リングに跳ね返る。


「見かけによらずすげー強烈……! いいな!」

「百花ちゃんの体はすげー運動神経がいいってことは前に分かったからな……!」


”健康な体ならこんなもんですよ”


 天性の才能がこの身体に刻まれてるってことなのかな。

 百花ちゃんが以前、事故の衝撃を軽くいなした。それを俺も体験して、なんとなくつかめた。この身体、ものすごく見える。

 動体視力もいいということなんだろう。動体視力と運動するに適した体。


 この程度ならまだできるということだ。


「何言ってるかさっぱりだけどいいな! 誘ってよかったぜ! ボクシング向いてるよ! これっきりじゃなく本当に入部したらどうだ!?」

「入部はしない! 私にはやりたいことあるし!」

「ああそうかい! 残念だよ!」


 拳の猛襲。

 俺は八重ちゃんが繰り出してくる拳に拳を合わせ、当たらないように俺も連撃で対応していた。


「うええ……? あれで初心者かよ……」

「腐っても八重は経験者っつーか、割とマジで強いぜ? あれと渡り合うなんてどんな才能だよ……」


 だがちょっと押されている。

 手数では負けていない。が、パワーで負けている。無理もないだろう。この身体は力がほとんどない。無理もない。筋肉は瞬時につくものではなく、継続して身につくもの。この身体はずっと寝たきりだったから筋肉は衰えているとは思う。

 俺が中に入ると決まってからは薬とかでそういうのは治しているとは思うが。


「やっぱり! スタミナがそこまでないな! じゃあこれで終わりだ! 八重流超必殺技! 流星拳メテオナックル!」


 大振りの渾身右ストレートが襲い掛かる。

 さすがに食らうとやばい。何発殴ってもひるまなさそうだ。とすればどうするか? 躱すしかない。俺は拳の動きをよく見て、ぎりぎりで躱した。そして。


「なっ!?」

「カウンター!」


 俺は思い切り顎をぶん殴った。

 俺の右ストレートは顎に当たり、八重ちゃんはばたんと地面に倒れ伏せる。


「脳がグワングワンする……! た、立てない!」

「そこまで! 八重KO!」

「な、なんでこんなグワングワンするのぉ……?」

「それは顎を狙ったからだ」


 顎を狙って脳を揺らす。脳震盪でダウン。

 これ以上続行は無理だろう。


「綺麗にカウンターが入ったな! 万! お前スゲーよ!」

「へへっ……」

「未経験者が勝つなんてよ! お前マジで才能あるって! うちに入らないか!?」

「いや、私はやりたいことあるんで」

「そっか……。ま、無理強いはしねえよ! 困ったらいつでもうちに来い! 力になってやるぜ!」

「ありがとうございます。あの、お名前を伺っても?」

「ああ、あたしはボクシング部部長、3年の鬼ヶ島おにがしま ゆずりはだ!」


 こんな美人さんもボクシング部で部長か……。名前がちょっといかつい。


「それでどうだよ万。悩んでいたことは消えたか?」

「えっ、あっ、すっかり忘れてた」

「そうか。これぐらいで忘れるんなら大したことじゃねえよ。へへっ、またやろうぜ……」

「またやりに来るよ」


 私は痛む顔に湿布を張ってもらい、部室を後にした。

 ちょっと頭がすっきりした。たまにはこういうのもいいな。










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