表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/118

アグレッシブ百花ちゃん

 朝起きて、視覚はそのままなのに喋ることも動くことも俺の意思じゃできない。

 というか……。


「私元気な体になって復活してるーーーっ! でもなんで? なんで私と音助さんの人格が入れ替わったのかなー?」


 百花ちゃんもそこは気になっているようだが……。


「ま、いっかぁ!」


 深くは気にしないタイプのようです。

 もしかして俺が体の主導権握るのはタイムリミットがあった感じなんだろうか。タイムリミットが来たからあとは百花ちゃんに人格を……。

 でも俺がこうして考えられるのは変、というか、今の俺は百花ちゃんと視覚共有してるだけの別人格で、百花ちゃんの中にいるってこと、だよな。


 ……考えてもわからねえよ。初めてのことだし。


「おっはよー! お父さん! お母さん!」


 と、下に降りて勢いよく挨拶すると、道彦さんたちは固まっていた。


「……百花?」

「百花でーっす! なんか知らないけど入れ替わって出てきちゃった」

「百花!」


 道彦さんたちは百花ちゃんを抱きしめる。

 すると、二階から眠そうな目を擦りながら千智ちゃんが下りてきたのだった。千智ちゃんは抱き合ってる私たちを見て気色悪がっている。

 道彦さんに向ける目もなんだか軽蔑したかのような目だった。


「あ、お姉ちゃんおはよー」

「……音子? お姉ちゃんって何?」

「お姉ちゃんはお姉ちゃんでしょ? あ、そうだ。私とは初めましてだったね。私、百花」

「……ふざけてるの?」

「ふざけてないよ! 音子と夢の中で会話してたんだけどいつの間にか私のほうが出てきちゃったみたいでさー。なんかわからないけど楽しそうだから満喫してるんだぁ」


 俺は中で状況を傍観してるだけだからなにもできないよ。

 

「まぁ、どーせまた音子に体を明け渡すからね! たまにはこうやって遊びたいんだよ! お姉ちゃん、あそぼ?」

「……はぁ。無理。学校があるから。百花……っていったっけ。あなたは家で黙ってなさい」

「えー」


 不満そうな声を出す百花ちゃん。

 そんな百花ちゃんは黙ってるわけもなく……。


「じゃ、遊びに行ってきまーーーーす!」

「あ、外出るなコラ!」


 百花ちゃんは靴を履いて外に駆けだしていった。

 俺と性格と話し方がちょっと違うからたしかに今の状況だと不審がられるしあまり知人と話さないのが得策なんだけど……。

 まぁ、外出たいよねという理解はある。


「せっかくの元気な体だしー、とりあえず運動! スポーツ!」

「待ちなさい、百花!」

「鬼ごっこだーーーーっ!」


 と、百花ちゃんは走っていく。

 だがしかし、目の前の信号は赤信号。それにも関わらず百花ちゃんは横断歩道を走って渡ろうとした時だった。

 右から急ブレーキの音が聞こえる。そして、そのまま百花ちゃんに黒い高級車がぶつかったのだった。


 だがしかし……。


「あっぶねーっ!」


 衝撃をいなしたというか、咄嗟に飛びあがり屋根の上を回転しぶつからずに衝撃を回避したアクション俳優並みの身のこなしを披露していた。

 追いかけていた千智ちゃんは腰が抜けたのか、そのまま地面に座り込む。


 高級車が止まり、中から人が下りてきた。


「危ないだろ音子!」

「あ、噂の幸村くんだ!」

「あん?」

「ちょっと……」


 千智ちゃんが事情を説明していた。


「……つまり元の百花の人格が今表面に出てきていると?」

「うん……」

「……不思議な体だな」

「うん……」


 ユキは千智ちゃんに同情していた。


「はぁ……。ま、そういうことか。動けるようになってはしゃいでんのかね……」

「あの、悪いけどちょっと助けてくれない? アグレッシブすぎて……」

「わかったよ。この状態の音子をそのままにしておけないしな」


 ご迷惑をおかけします……。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ