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ローマのきゅーじつ ②

 窓の外の景色がどんどん移り変わっていく。


「あのー……。私修学旅行で来ただけなんですけど……」

「ミタイデスネ」

「これって誘拐とか……」

「誘拐犯ハ、自分ノ顔ヲ晒スマネシマセン」


 いやいやいや。無許可でこうやって連れ出されてるのは立派に誘拐じゃないですか?とはもうつっこめなかった。

 このヴィットーリアって子、俺の腕をがしっとつかんで硬骨な表情を浮かべている。どうしよう、ダメなことだとわかりつつも女の子にこうやって抱かれているというのは男として凄く気分がいい!


「……で、私はどこまで連れていかれるんですか?」

「トリアエズ人目のツカナイトコロマデ」

「もろ誘拐じゃねえか」


 人目のつかないところまで連れていかれたらそらもう誘拐よ。

 弱ったなぁ。班行動でユキとかと一緒に周る約束してたんだけど最初からこうなってしまうとは驚いた。ユキたちも心配してるのか俺のスマホにおびただしいほどの連絡が来ている。出ようにも片方の腕がふさがれ、その片方の腕がある右にスマホが入ってるポケットがある。左手だと取りづらい。


 それに振動とかでなにかスマホに連絡が来ていることがわかってるのに取らせようとしないヴィットーリアさん。

 すると、車が止まった。窓の外の景色はいつしか豪勢な屋敷の景色になっている。車の扉が開かれ、イタリア語でヴィットーリアさんと執事のような人が話していた。


「サ、参リマショ」

「どこに……」

「我が家ニ」


 漫画のようにレッドカーペットが敷かれ、たくさんの執事の人とかがお出迎えしてくれた。

 マジで漫画かよ。現実じゃこうはできんぞ。たくさんのメイドと執事って。中世の貴族かなにかですかあんたの家は。


 俺は案内されるがまま、ヴィットーリアさんについていく。

 屋敷に入り、ヴィットーリアの父と名乗る人のところまで連れていかれたのだった。


「初めまして。ヴィットーリアの父、レオナルド・ディ・カプアと申します」

「……万 音子です」


 めっちゃ怖い父親じゃねえか!

 なんつーか、イタリアンマフィアの見た目をしている。葉巻とか絶対咥えてそう。誰か助けて……。俺この怖そうな人と一緒にいたくないよぅ……。

 っていうかローマを案内してくれるんじゃなかったのかよヴィットーリア! 俺はお前の家を案内してもらいに来たわけじゃないんだけども!?


「娘が一目ぼれした相手と聞いたが……女性か」

「申し訳ございません私のような不束なものが謝りますので助けてください……」

「トーサマ、顔コワイ」

「生まれつきだ。仕方ないだろう。だが……うちの娘のひとめぼれ相手というのはどうも……」

「気に食わないなら切り捨ててくださいませ……」

「逆だ。素晴らしいじゃないか!」

「ん?」

「娘と日本の娘の恋! イケナイとわかりながらも禁断の愛に二人はいつしか身を溶かし……日本の百合漫画がすきな私にとっては願ってもみない状況だ!」


 なんだこいつ。いけない匂いしかしない。


「うちの娘を……どうかよろしく頼むよ……!」

「ちょっとまたんかい」


 なんか結婚する前のような状況になってますけどしませんよ。

 この父親……日本の百合漫画が好きってどういう調教をされてきたんだ。その顔で百合漫画が好きって告白されても恐怖しか感じねえよ!

 蛙の子は蛙というべきか、子が子なら親も親というべきか! 両方ともおかしい。


「オトーサマノ許可もモライマシタ! これからは二人で愛し合おうネ……」

「俺のほうの許可は!?」

「ほほう? 俺ッ子があなた本来の……。カワイイ」


 やべぇ、興奮しすぎて俺って言っちまった……。


「さ、いつ式を開く?」

「……」


 俺は全力で扉を開けて逃げ出した。










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