Tournament170 Universe hunting:5(世界を狩ろう!その5:VS精霊覇王エレクラ)
遂に精霊覇王エレクラと雌雄を決することになったジン。『最強の四神』エレクラの攻撃に翻弄され、ジンは勝利を諦めかけるほど追い詰められる。ジンを見て来たエレクラとの戦いはどうなるのか?
【前回のあらすじ】
『深淵の魔力』が目覚め、『破壊者』となったジン。『深淵の魔力』で救われたシェリーと共に、プロノイアへの伝言を託されるが、その内容は世界の終焉を意味するものだった。
伝言を阻止するために動き出した四神がジンの前に立ちふさがるが、水の精霊王マーレ、火の精霊王アリスはジンたちにより虚空に還って行った。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
エレクラは右手を上に差し伸ばす。虚空からがっしりとした長大な穂を持つ3メートルほどの槍……エレクラの愛槍『クウィエス』が現れる。
エレクラは『クウィエス』を身体の右側面に立てて、ジンに笑いかけた。
「ジン・ライム、残念だがお互いの信念を賭けて戦わねばならぬようだ。これからはお前を真実の名で呼ばせてもらおう。アルケー・クロウとな」
そう言い放つと、いきなり大技を放った。
「大地の怒り」
天がぱっくりと割れ、燃え盛る隕石がジンたち目がけて降って来る。
しかし、ジンは緋色の眼でエレクラを見つめたまま、
「完全な虚空」
空間規定魔法で隕石を包み込み、消滅させてしまう。
エレクラは槍を回し、突き出しざま術式を展開した。
「大地の刃」
「漆黒」
ズババアアーンッ!
エレクラの前面が、幅50ヤードに渡って強烈な衝撃波で吹っ飛ぶ。しかし、シールドで攻撃を受け止めたジンは、砂塵を払って魔剣パラグラムを揮い斬り付けて来た。
「とっ!」
「うむっ!」
ガキンッ!
真っ向唐竹割を狙って振り下ろされた魔剣パラグラムを、エレクラは『クウィエス』の柄でがっしりと受け止める。そして右手を横に伸ばし、
「甘いっ! 大地の弾幕っ!」
ズドズドズドズドッ!
「漆黒っ!」
パパパパーン!
横合いから短剣を握りしめて近づいてきたシェリーを、魔弾の連射で牽制する。
シェリーは短剣を鞘に収め、肩から弓を外して矢をつがえ、
「暁星っ!」
魔族の魔力を込めて放つ。
ドガンッ!
「うん?」
シェリーの矢は『大地の守護』に阻まれたが、エレクラはその衝撃から、
(……シェリー・シュガーは、もともと魔族ではない、シルフのはずだ。それがここまで強力な魔族の魔力を持っているということは……)
「……『乙女』か。やはりな……」
エレクラは苦笑する。『乙女』の存在も、『乙女』を連れた『伝説の英雄』が行く道も、既に木々の精霊王キャロット・トスカーナや水の精霊王アクエリアス・レナウンが予言していたではないか……。
(そう言えば、マロンの後、なぜ『摂理の調律者』様は新たな木々の精霊王を置かず、精霊王位そのものを凍結されたのだろうか?
この疑問にはついぞお答えいただけなかったが、そのこととアルケー・クロウが『摂理の破壊者』となって現れたことは、何か関係があるのだろうか?)
「崩壊不可避」
「むっ!? 大地の演武」
ズババババンッ!
一瞬の隙をついて繰り出されたジンの空間規定魔法を、エレクラは容易くぶち破る。
「諒闇っ!」
「くっ! 大地の嘆き」
ジンの魔空間を抜け出したエレクラを、シェリーの呪縛魔法が襲う。しかしエレクラはドレイン系の魔法で術式展開を阻止した。
「完全な虚空」
ジンの持つ魔族としての魔法の中で、最も強力な空間規定魔法が発動した。エレクラは紫紺の魔力の壁に上下左右前後を囲まれる。
「なるほど、規定空間を圧縮して特異点を作り出す術式なのか」
一瞬にして数万度まで温度を上げた空間の中で、エレクラはこの術式の特徴を見破った。すなわち、「では、特異点は『トンネル効果』を生む可能性がある場所だ」と。
「大地の賛歌」
エレクラは、ジンの『完全無欠の罠』から、するりと抜け出した。
「やった! ジン凄い!」
シェリーは、エレクラが『完全な虚空』に囚われるのを見て、勝利を確信した。エレクラが『崩壊不可避』を破砕した時は、
(さすが精霊覇王。四神最強と言われるだけあるわ)
と、緊張したシェリーだったが、ジンの魔法を信頼する彼女は、
(でも、もっと上位の魔法なら、エレクラ様だって捕まえられるはず!)
そう思い、エレクラの隙を窺っていたのだ。
「……シェリー、喜ぶのはまだ早い。来るぞ!」
しかしジンは、一度火の精霊王フェン・レイがマジツエー帝国に戦いを挑んだ時、エレクラと共にフェンを攻めた経験から、
(エレクラ様は、空間規定魔法では動きを止められないだろう。ドレイン系魔法で魔力を削ぎつつ、隙を衝いて動きを止めるしかない)
そう見ていたのである。
「えっ? うそぉん!?」
シェリーは、目の前に突然エレクラが姿を現したのを見て、慌てて防御をする。
「漆黒っ!」
「大地の花弁」
エレクラの術式が展開され、シェリーは地面から咲いた16弁の花弁の中に閉じ込められてしまった。
「あっ! 出して、出しなさい!」
驚いて暴れるシェリーの声を聞きながら、エレクラは次の術式を発動した。
「大地の嘆き」
シュウウゥゥッ……
「あ……」
「シェリー、眠れ! 何も考えるんじゃない。魔力を遮断して静かにしておくんだ!」
ドレイン系の魔法で魔力を失ってしまう前に魔力を遮断すれば、普通の人間と変わらなくなる。精霊覇王たるエレクラの術式は、害意のない人間に害を及ぼさないことを、外ならぬエレクラの術式を許されていたジンは良く知っていた。
「それはお前もそうだぞ、アルケー・クロウ。大地の花弁」
ジンは、自分の足元から16の花弁を持つ土の花が咲くのを感じ、
「暁星」
バフンッ!
内側からの爆発的な魔力の開放で、エレクラの術式展開を阻止する。自分が使っていたからこそ、その欠点も弱点も知り尽くしている……その時ジンはそう思っていた。
「甘いな。大地の慈愛!」
「えっ!?」
ジンはエレクラが選択した術式に驚く。『大地の慈愛』はヒール系の魔法だ。いかなるケガも状態異常も、瞬く間に治癒させる強力な治癒魔法だ……そう認識していたジンは、何故この段階でエレクラがヒール系魔法を撃ってきたのかが分からなかった。
しかし、ジンの疑問はすぐに氷解した。確かに『大地の慈愛』は強力な治癒魔法だ。まるで聖母の胸に抱かれたかのごとく、心は静まり緊張はほぐれる……しかしそれはこの魔法が必要な者に対して現れる効果で、怪我も状態異常もない者がこの魔法を受けたら……
「……身体が重い。それに、眠気が襲ってきて精神を集中できない……」
ジンは、魔法術式を編み上げた本人しか考えつかない使い方に思い至った。戦闘中は緊張しているからこそ、敵の動きに遅れることなく反応できる。
しかし、『大地の慈愛』によって過度の弛緩状態になってしまったジンには、エレクラの次の攻撃を受ける術も、かわす暇もなかった。
「これで眠れ、アルケー・クロウ。大地の審判!」
ドズバンッ! ボウウウンッ!
「ぐはっ!」
ジンは、地面から噴き出て来た溶岩や魔力に飲み込まれ、吹き飛ばされてしまった。
「……ふむ、まだ生きているか……」
エレクラは、数十メートルも噴き上げられ、地面に叩きつけられたジンを見てつぶやくと、『クウィエス』を片手にジンのところへ疾駆する。エレクラとしては、ジンにダメージを与えた今こそ、勝負を決したかった。
「大地の弾幕」
エレクラは走りながら、何とか立ち上がったジンに弾幕を叩きつける。
ドムドムドムドムドムッ!
「ぐっ! がっ! ごっ! げっ! がはあっ!」
大きなダメージを受けていたジンは、シールドを張る暇もなく全弾をまともにその身に受けてしまった。1弾受けるごとに身を震わせていたジンだが、最後の1弾を受けた時、ついに力尽きて、血を吐きながら弾け飛んだ。
ドサッ……
倒れ込んだジンに、エレクラの槍が襲い掛かった。
「大地の刃っ!」
ドズバアアァァンッ!
「ぐわっ!」
エレクラの槍が魔力と共に突き出され、前面の幅50ヤードが轟音と共に吹き飛ぶ。ジンの叫び声が轟音をつんざいて聞こえて来た。
「……諒闇……」
だが、ジンはまだ空中にいる間に、ヒールを自分にかける。斬り裂かれていた傷はふさがり、噴出していた血も止まる。
「ふむ、怪我さえ治れば元どおり戦えるのか。魔力はまだまだ横溢しているようだな」
エレクラは『クウィエス』を携えてジンに駆け寄りながら、
「……やはり、『摂理の破壊者』は厄介な敵だ」
そう言いながら、立ち上がったジンに『最強の四神』らしい攻撃を仕掛けた。
「大地の花弁……」
「はっ!」
ジンは、エレクラの魔力が直下の地面に集中するのを感じ取り、先を読んで空中に飛び上がる。しかし、これからがエレクラの真骨頂だった。
「……転換! 大地の嘆きっ!」
「えっ!?」
ジンは驚きの声を上げる。完全に発動準備を終えた術式を、発動直前に切り替えたのだ。ジンはエレクラのドレイン魔法に捕まった。
「くそっ!」
何とか体勢を整えて着地したジンを、エレクラが追い討ちする。
「大地磔刑!」
ドズバンッ!
「がああっ!!」
ジンは地面から突き上げて来た岩の槍に刺し貫かれ、悲鳴に似た叫びを上げる。
「止めだ! 大地の審判!」
ゴゴゴ、ドグワァァーンッ!
岩の槍に捕まったジンを、灼熱した溶岩と魔力が包み込み、弾け飛んだ。
★ ★ ★ ★ ★
(ぐおおっ、お腹が、お腹が灼けるように熱いっ!)
ジンはエレクラの最も有名な術式、『大地磔刑』によって脾腹を貫かれた。
着地直後を狙われたため、ジンはこの攻撃が来るのを予期していたものの、避けきることは叶わなかった。さらに『大地の慈愛』の影響が残っており、回避の挙動が一瞬遅れたのも痛かった。
だが逆に、『大地の慈愛』によって『大地磔刑』でできた傷がそこまで深刻にならなかったという面もあり、この時点ではエレクラは術式の選択を間違ったように思えた。
しかし、続いて繰り出された術式が『大地の審判』だったため、傷が治りかけたことがジンに不利に働いてしまった。
つまり、治癒に向かっていた傷は『大地磔刑』の岩の槍をしっかりとくわえ込んだため、『大地の審判』は動けない、固定された目標を物凄い圧力で襲うことになったのだ。
「止めだ! 大地の審判!」
「漆黒」
ゴゴゴ、ドグァアアアーンッ!
「がっ!!」
地面からの魔力と溶岩は、動けないジンを直撃した。恐ろしいほどの高温と圧力だった。ジンはこの一撃で炭となってバラバラになっていただろう……『漆黒』でシールドを張っていなかったならば。
ズズズズズ……ゴゴゴゴゴ……
ジンの耳元で、溶岩や魔力が流れ、弾け、沸き立つ。だが、ジンは何とか意識を保ち、
「諒闇」
ヒールをかけることができた。
(さすがはエレクラ様だ。術式を発動直前に転換したり、攻撃魔法の合間に治癒魔法を挟んだり……これが戦闘経験の差だろうな……)
「……だけど、負ける訳にはいかないんだ。シェリーも待っているし……」
ジンはそうつぶやくと、
「新月」
ジャリンッ!
魔剣パラグラムに術式の魔力を込めて、地面から突き出した岩の槍を切断する。そして一気に槍を抜き取った。
「やっ!」
ブシュッ! ブシャアァァアッ!
数秒ほど、傷口から噴水のように血が噴き出たが、やがてジンとエレクラの治癒魔法の効果によって傷口はふさがった。
ドドドドド……
シールドの外では、まだエレクラの『大地の審判』が発動している。これほど長く発動しているのは、ジンを完全に抹殺するというエレクラの強い意志の表れなのだろう。
(……僕が『大地磔刑』を逃れたことも、エレクラ様は感知しているだろう。この後どうすべきか……)
ジンは重要な岐路に立たされた。エレクラは一度決めたことを変えるような人物ではない。ジンを討伐すると決めて、ここまでの魔法を使っているのであれば、もはや話し合いはできないだろう。
となると、ジンに残された道は二つ……戦闘継続か撤退かである。
ジンが『摂理の調律者』の所に行き、『あのひと』の言葉を伝えれば、この世界は無くなる。ジンも、シェリーも、そしてエレクラだって『虚空』のもとに還り、そこから新たな世界が始まる……これはジンがエレクラに負けない限り既定の事実、戦闘を継続しようがしまいが同じことだ。
だったら、戦闘離脱の方が、お互いに無駄な痛みを感じないで済む……ジンはそう思った。もっとも、今現在はエレクラの方が押し気味で、ジンとの戦闘を止めるメリットを感じていないだろうが。
(……離脱は不可能だろうな。エレクラ様が僕を取り逃がすなんてへまを犯すはずがない。やはり、この戦いは止められないんだろうな)
直感で捉えても、熟考しても、答えは同じだった。だったら仕方ない、エレクラが言ったように、お互いの信念を賭けて戦わねばならない……それがジンの結論だった。
その時、僕の頭の中に、『あの声』が響いた。
『どうした、アルケー・クロウ? ジン・クロウという名はお前の『虚影の空』に映った名だ。『真実の月』から与えられた名において、お前の『掟』を貫き通せ!』
その時、僕は自覚した……僕が『魔族の祖』であり、『繋ぐ者』でもある『破壊者』は『摂理の鍵』であることを。
「自己愛幻覚」
僕は、『あのひと』の声に励まされるように、術式を展開した。
「……ふむ……やはりアルケー・クロウは摂理によって生み出された者でもあったか……」
エレクラは、噴出する魔力と溶岩の中でまだジンが生きていることを感じ取り、そうつぶやく。そして愛槍『クウィエス』を握り直した時、周囲にジンの魔力が発現し、幾人ものジンがエレクラを包囲した。
「……『偽存在』か? いや、すべてが彼自身なのだろうな」
エレクラの周囲には、最初から最強のシールドである『大地の慈愛』が展開されている。最強のシールドで、かつ回復能力まで備えたこの術式を展開してもなお、エレクラは安心していなかった。
「……ふふふ、『原初討伐時代』で『外れたもの』たちを平らげる頃は、何も恐れるものはなかった私だが、『摂理の黄昏』を迎える度に、恐れは大きくなっていった。
だが不思議だ、恐れという感情は今までの中で最も強く感じているのに、同時に安心や平穏をも感じているとはな……」
そしてエレクラは直観で理解した。『大地の審判』の奔流の中からジンが出てきた時、その時こそこの勝負の決着が付く時だと。
「ではアルケー・クロウ、お前の『深淵の魔力』とくと味合わせてもらおう……」
エレクラはそうつぶやくと、魔力を最大にまで引き上げ、
「ステージ1・セクト1オルタナティブ、大地の演武アザーズ!」
自身の『異体』を現出させた。
「……じいさんが『完全本気モード』だ。こりゃあ今ボクが出て行っても邪魔になるだけだなぁ……せっかくだから、じいさんの雄姿をこの目に焼き付けておくかな」
ジンとエレクラが戦っている領域から少し外れた場所で、風の精霊王ウェンディが寂しそうにつぶやく。
彼女は元々、ジンとは1対1で勝負するつもりだった。それも、エレクラよりも先にジンと刃を交えるつもりでいたのだが、出発に手間取ったことと、エレクラが思いのほか早くジンのもとに行きついたおかげで……
(……おかげで、四神の秘密や『原初討伐時代』のこととか、ボクが説明しなくちゃならなくなったみたいだなぁ。もっとも、じいさんのことだから、勝っても負けても何も言わないだろうから、団長くんのためにはこの方がいいのかもなぁ)
そう考えながら、ウェンディは過ぎ去った遠い遠い時代のことを思い起こしていた。
…………あれはそう、まだ人間どころか動植物さえ生まれていない頃……精霊が生まれ始めてしばらく経った頃だったなぁ……。
『虚空』が精霊の元となる『魔力の霧』を生み出したのは、三十数億年ほど昔のことになる。
それら精霊の元たちは、大地を乾かし、だんだんと生き物が棲めるような環境を創り上げていった。
中でも、土精霊の元たちは盤石の大地を創り上げ、風や水の精霊の元たちと協力して植物が棲める大地へと変えていった。この頃、精霊の元となる『魔力の霧』の中に、精霊としてしっかりした形をとる者が現れ始めた。
そしてプロノイアは、最初に生まれた精霊、エレクラ・ラーディクスを土の精霊覇王に、次に生まれたウェンディ・ヴェントを風の精霊王に、アクエリアス・レナウンを水の精霊王に、フレーメン・ヴェルファイアを火の精霊王に任じた。
(その後で、キャロット・トスカーナ様が木々の精霊王となって、五精霊王がそろったんだよなぁ。あの頃は次々と精霊が生まれて、その『判別』に忙しかったなぁ……じいさんやヴェント様も忙しそうにされていたっけ……)
「判別? それっていったい何するんですか?」
風の筆頭精霊リメン・バーは、精霊王ウェンディ・ヴェントから呼び出しを受け、『判別任務』への参加を言い渡された。
「リメンも知ってのとおり、全土で精霊が生まれつつある。その中には摂理ギリギリで生まれたものや、その在り方が摂理に適うかどうか疑わしいものもいる。
それらを検分し、摂理から排除せねばならないものは排除し、摂理の中で生きられそうなものは矯正せねばならない。その判別作業を手伝ってもらいたいのだ」
リメンの疑問に、精霊王ウェンディ・ヴェントはそう答える。こともなげな言い方だったが、リメンは心もとなげに言う。
「ええっ!? 摂理に適うかどうかって、どこでどう判断すればいいんですか? ボク、摂理のことなんて、なーんにも分かりませんけど!?」
するとヴェントは、苦笑しながらたしなめる。
「リメン、仮にもお前は筆頭精霊だ。『摂理のことは分からない』などと、口が裂けても言っちゃだめだぞ?
心配するな。私たちは『虚空』の願いによって生まれた存在だ。
一方で、今、泡のように生まれている精霊たちは摂理の流れの中で『摂理の調律者』様の祈願によって生まれている者たちだ。
成り立ちが違うので、私たちが見れば、そのものがどのくらい摂理と乖離しているかは自ずと分かる。お前は、雰囲気がいかにも邪悪なものを征伐すればいい。判断に迷うものについては私や他の精霊王に知らせてくれればいいんだ」
リメン・バーはウェンディ・ヴェントにそう言われて、おっかなびっくりという感じで任務に就いたが、『案ずるより産むがやすし』で、摂理から外れたもの、外れゆくものははっきりと雰囲気で判った。
リメンは、土のラントス、水のアクア、火のアリス、木々のマロンら筆頭精霊たちと共に『判別作業』を進めた。そして精霊覇王エレクラにも目をかけられる存在となる。
やがて『判別作業』の終わりが見えてきた頃、プロノイアは五精霊王を『神の宮殿』に集めた。『筆頭精霊を帯同して出席せよ』との命令だったため、風の筆頭精霊リメン・バーは精霊王ウェンディ・ヴェントに連れられて、初めてパンテオンに足を踏み入れた。
プロノイアは、土、風、水、火、木々の精霊王たちがそろうのを待っていたように、10人が整列するとすぐさま姿を現し、神座に着席すると話を切り出した。
「皆のおかげで、摂理の運行に妨げとなりそうな存在はほぼ駆逐されつつある。世界の運行も落ち着きつつある今、わらわは地上に『虚空』の根源につながった存在を創り置こうと思う。
ついては、各々が所管する摂理から、この存在に与えるべき贈り物と、『種の宿命』をここで決めたいと思っている。わらわはこの存在を、地上における摂理の体現者としたいが、どんな能力を与えられるか、各々存念を聞かせてほしい」
(……あの会議で、人間に『岩を切り出す力』と『風を利用する力』、『火を扱う力』と『水を利用する力』、それに『自然の恵みを利用する力』が与えられたんだっけ。
その後、まさか人間たちが独自で『自然の恵みを作り出す術』を編み出すなんて考えもしなかったなあ……)
その後、『自然の恵みを作り出す術』を編み出した人間たちに、木々の精霊王キャロットは『運命の供与者』と共に新たな作物たちを与えることになるのだが、それはまた別の話である。
(だが、考えてみると最初の『摂理の黄昏』は、人間が農耕を編み出した時に始まっているんだな。じいさんは農耕を『大地の力を侵奪する術』として、あまりいい顔はしなかったけれど、このことを見越していたのかもしれないな)
その最初の『摂理の黄昏』は、あちこちの火山の噴火で始まり、大洪水で幕を閉じた。自然災害の前には、精霊王たちといえど対症療法的なことしかできず、あわや地上の生命は絶滅するかと思われたが、主にアクエリアスやキャロットの働きで、絶滅ルートは回避できた。
次の『摂理の黄昏』は、エピメイアのプロノイアとの確執を契機として起こり、この時はウェンディ・ヴェントとフレーメン・ヴェルファイアが活躍した。
二人の精霊王は、エレクラと共に巨大大陸をヒーロイ大陸とホッカノ大陸に分け、それら2大陸を引き離したのだ。
この時、エレクラの決定に従わなかった精霊たちはホッカノ大陸に放逐されている。これらの精霊や人間たちは、『大陸分割』に直接関わらなかった水の精霊王アクエリアスと木々の精霊王キャロット・トスカーナを信仰していくことになる。アロハ群島に残っていたキャロット神殿は、この後建てられたものである。
なお、この『摂理の黄昏』はエピメイアがプロノイアの話を聞くという形で混乱は収まり、最終的に『摂理の二柱』は和解している。
(……そしていよいよ、エピメイアの離反と封印、マロンの精霊王位剝奪が関係する『摂理の黄昏』が起こるのか。そう言えば、その時に魔族も生まれて来たっけ)
ウェンディ・リメンの見るところ、今起こっている『摂理の黄昏』は、7千年前のこの時期にすでに種が蒔かれていたように思えてならない。なぜなら、その後の『摂理の黄昏』にはすべて『魔王の降臨』が関わっているからだ。
その魔王は『魔族の祖』アルケー・クロウが創り出し、そしてそのアルケーは、エピメイアが摂理に従わない方法で生み出した人工生命体だ。
(やっぱり、この『摂理の黄昏』は今までのそれと違って、何者かの意図が働いている。
エピメイアすら操って、ジン・クロウという形でアルケー・クロウを蘇らせた何者かの意思が……それは、恐らく『なぜ魔族が摂理に受け入れられたのか?』という疑問や『なぜ木々の精霊王はマロンの後置かれなくなったのか?』という疑問と関係している。
その謎は、じいさんがアルケー・クロウに勝てば、次のジン・クロウが生まれるまで持ち越されるだろうけれど、仮にボクが団長くんと戦うことになったら、はっきりするかもしれない)
ウェンディ・リメンはそう思いながら、遠くジンとエレクラの戦いを見つめていた。
★ ★ ★ ★ ★
「……ふむ、水の精霊王マーレ・ノストラムと火の精霊王アリス・ヴェルファイアがジン・クロウに倒されたか……やはり、ジン・クロウはアルケー・クロウ本人。そして『摂理の破壊者』であったか……」
群青色の空がどこまでも高く突き抜ける異界……それが『摂理の調律者』と言われるエピメイアが住まう世界である。
エピメイアは、『虚空』が摂理を打ち立て世界を形作った時に生まれた。
双子の妹エピメイアが、世界に生まれ来る種族や個体の『運命』を決め、それが摂理から逸脱しないか、摂理と矛盾しないかを見張る役目を与えられていたのに対し、プロノイアには摂理そのものの緊張や緩和を調整し、摂理が滞りなく運行するよう必要な調律を行う役目と権限が与えられた。
そして、五精霊王……のちに木々の精霊王が抜けて四神と呼ばれる存在は、プロノイアの監督の下で摂理の監視を行い、軽微な調整を行う役目を与えられたのである。
なので、厳密には『摂理の二柱』と言われたプロノイアとエピメイアのみが『神』と呼ばれる存在で、四神は『偽神』というべき、神にやや劣る存在であった。
その、『真の神』であるプロノイアは、自らの異界に閉じ込められていた。自らを『閉じ込めた』という事実から、プロノイアは今回の『摂理の黄昏』には自分を超える存在……つまり『虚空』が関わっていることを確信したが、それは『虚空』から直接のコンタクトがあったことで裏付けられた。
『我が娘、プロノイアよ』
『虚空』は、突然プロノイアにそう呼び掛けた。プロノイアが自身の異界が封鎖されていることを知った直後であった。
「何用でしょうか、『虚空』よ。ジン・ライムとエピメイアの件でしょうか?
『虚空』ご自身がわらわに直接ご自身でお話しされるとは、今の世界が始まって以来のことですが?」
震える声でプロノイアが呼びかけに答えると、『虚空』は耳を疑うような内容を告げた。
『プロノイア、吾は世界の摂理を書き換えるべき時が来たことを汝に伝えねばならない。
吾の言葉を受けし者が汝に言葉を伝えし時、汝はあの術式を展開せよ』
『虚空』の言葉は、プロノイアには深い哀しみを帯びて聞こえた。それはプロノイア自身の心情だったかもしれない。
(ついにこの時が来たか……)
プロノイアはそう思いながら訊き返す。
「……一つお聞きいたします。それはご命令でしょうか? それともわらわの判断を交えてもよろしいのでしょうか?」
プロノイアの声が震えている。自身の判断が許されるものなら、その分彼女の責任は重いとはいえ、エレクラやウェンディたちと協議する時間も取れるし、二人の意見を聞くことも可能だ。
だが、『虚空』の答えは非情なものだった。
『精霊王たちはこの世界の代表として、彼の者と意見を交換し、戦いを以てその意思を決めている。よって彼の者が汝の許に現れるということは、すなわち吾の意思が通ったことを意味する。彼の者の言葉を聞き次第、汝は汝が為すべきことを行え』
それを聞いて、プロノイアはがっくりと肩を落としながら答える。
「……承知しました。しかし『虚空』よ、今一つの質問を許したまえ」
『……汝をはじめ五精霊の働きは無駄ではなかった。むしろ吾が期待以上に汝たちは摂理の運行を守り抜いていたといえよう。
したが、エピメイアが人間に大地収奪の技を教えて以降、人間と摂理の乖離は避けられぬものとなった。
これは摂理の欠陥ではなく、汝らの落ち度でもない。人間は同じ道をたどって自らの首を締めているだけ……吾の夢見る調和した世界は、一体いずこにあるのだろうか?』
最後はため息と共に吐き出された言葉だった。
「そのお言葉を聞いて、胸を撫でおろしております……しかしアルケー・クロウが、摂理の書き換えの理由や必要性について質問してきたならば、わらわはどこまで答えてよろしいんでしょうか?」
『彼の者には、目指している世界について話をしておいた。書き換えの理由は『人間の種としての傲慢さがもたらした結果』であり、必要性については『これ以上人間に他種族からの怨嗟を溜めさせないため』と答えるとよい』
『虚空』の言葉を聞き、プロノイアは唇を噛む。
(……確かに、大地を収奪する術を覚えた人間たちは、その土地が許容する以上の数となり、周囲の自然を狂わせてきた。それによって族滅した種もたくさんある。
わらわは余り地上に赴かなかったので詳しくは知らぬが、自然の、人間に対する怨嗟は大きかったであろうな)
『虚空』は言外にそう言っている。プロノイアは、自身の監督不行届きを指摘されている気持ちになっていた。
プロノイアの気持ちを汲み取ったのか、『虚空』は静かに言う。
『自らを恥じる必要はない。汝たちの行動は常にその時々においては正しかったし、今でも正しいと思えるものがほとんどだ。
大地を収奪する技についても、人間がその用法と限度を知っておれば、問題になることは少なかったであろうし、汝もエピメイアがああなって以降は、エピメイアの役割まで背負い込んでいた。必要以上に気に病むことはない』
「しかし、大地を収奪する技につきましては、木々の精霊王位を廃止して積極的に人間たちの作物へ恵みを垂れられぬようにいたしましたが、それが却っていけなかったのではないかと思うこともございました。
精霊の恵みに対する統一的な見解が、木々の精霊たちにおいては最後までまとまりませんでした故、やはりマロンの後にも精霊王を置いて、しっかりと統制すべきではなかったかと思うのです」
懺悔をするようにプロノイアが言うと、『虚空』は静かに答えた。
『……そうかもしれないし、そうでないかもしれぬ。マロンの後の精霊王がたとえば2代目の水の精霊王のような者だったら、エレクラの目をかいくぐってもっと極端な恵みを垂れていたかもしれん。
汝がそれを気にしているのであれば、次の世界でその経験を生かすとよい。怨嗟の声が大きすぎて、吾はもはや、人間たちを擁護する言葉を持たぬゆえ、今回の決断に至ったのだ。ジン・クロウが『騎士団』を立ち上げるまでに、人間の価値観が変わっておればよかったのだがな……』
プロノイアには、それ以上何も言うべき言葉も、問いかける言葉もなかった。
(『虚空』が『人間たちを擁護する言葉を持たぬ』と言われるのであれば、わらわに何が言えよう? もはや、望みは薄いがエレクラとウェンディがアルケー・クロウを再び眠らせることを祈るしかない……)
プロノイアは、暗然たる気持ちで答えた。
「分かりました。すべては運命に委ねましょうぞ」
エレクラは理解した。周囲はジンの『自己愛幻覚』により生み出された多数のジンに包囲されている。これはエレクラとの決着を付けるというジンの意志の表れであろう……だとすると、『大地の審判』の奔流の中からジンが出てきた時、その時こそこの勝負の決着が付く時なのだろうと。
(アルケー・クロウは私の『大地の審判』の中で回復を行っている。つまりは時間稼ぎをしているのだろう。ジン・ライムとしての性格が残っているのなら逃走するかもしれないと思ったが、私やウェンディを倒して進むことを選んだようだな)
「ではアルケー・クロウ、お前の『深淵の魔力』とくと味合わせてもらおう……」
エレクラはそうつぶやくと、魔力を最大にまで引き上げ、
「ステージ1・セクト1オルタナティブ、大地の演武アザーズ!」
自身の『異体』を現出させた。たちまち、エレクラの『異体』はジンの『異体』を迎え撃ち、あちこちで剣と槍の勝負が始まる。
エレクラ本人は半眼になって腕を組み、それらの戦いを眺めている。『大地の審判』を解除すれば溶岩の奔流は止まり、ジンが露わになることは分かっていたが、エレクラはそれもせず、ただ悠然と風に髪をなぶらせていた。
「……『異体』同士の戦いは互角というべきだな。アルケー・クロウは剣術や体術も非凡だな」
エレクラがそうつぶやいた時、
「やっ!」
ザシュッ!
最後の一人となったジンの異体が、同じく最後の一人になっていたエレクラの異体を斬り捨てる。ジン(異体)はそのまま、剣を揮ってエレクラ本人に躍りかかって来た。
「やああっ!」
「むんっ!」
ドムッ!
エレクラはジンの斬撃を体をひねることでかわし、そのまま『クウィエス』をジン(異体)の胸に叩き込む。
「ぐうっ……」
ジン(異体)は、唇をかみしめながら消えていく。その時、エレクラの胸が少しチクリと痛んだ。
(……やはり『異体』とはいえ、長らく見守って来たジン・ライムを刺すのは心が痛むものだな……。
しかし、もはや彼はアルケー・クロウとして目覚め、はっきりと摂理に対する挑戦の意志を示している。四神としては見逃せない人物だ)
エレクラはそう自分に言い聞かせる。そして『大地の審判』を解いた。
ガゴン!
巨岩がぶつかるような大きな鈍い音と、足元の揺れを感じながら、エレクラは目を細める。ジンは紫紺の魔力に包まれてこちらをじっと眺めていた。
そのジンの姿を見て、エレクラは感慨深いものがあった。
(思えば、彼のことを気にしだしたのはプロノイア様からの指示があったからだったな……あれはもう8年も前のことになるのか……)
「ジン・クロウ? その少年がクロウ一族の本流なのですか?」
エレクラが訊くと、プロノイアは能面のような顔でうなずく。
ここは『神の宮殿』である。エレクラは8年ほど前のある日、ここにプロノイアから呼び出された。
プロノイアが自身の異界から出てくるのは大変珍しい。彼女は常時、摂理の運行をその異界から監視し、緩みや緊張を見つけると直ちにそれに対応している。異界から離れることは、その任務を後回しにしているということであり、それは取りも直さず超緊急で超重要な案件があることを意味していた。
そのため、エレクラはかなり緊張してプロノイアを『パンテオン』に迎えた。四神を集合させようとも考えたほどだが、それはプロノイアに止められた。
『四神の中には、『組織』とかいうものに所属している者もおろう。その者に聞かれてはマズいし、なによりまだ運命が定まっておらぬゆえ、無用な混乱も避けたい。今の段階ではまだ、お主の胸一つに留めておいてほしいことだ』
そう言ったプロノイアがエレクラに話したのは
「運命が回り始めるやもしれん。ヒーロイ大陸のアルクニー公国、ドッカーノ村という所に住む少年によってな。次の『伝説の英雄』になるやもしれん少年だ」
……という、驚くべき内容だった。
「少年の名はジン・クロウ。バーボン・クロウとエレノア・ライムの息子だ。今は母方のジン・ライムと名乗っておる」
「バーボン・クロウというと、前回の『魔王の降臨』の際の『伝説の英雄』ですね? エレノア・ライムは前の大賢人スリングの妹ですが、彼らの息子が『伝説の英雄』に?」
エレクラが訊くとプロノイアはうなずき、
「……はっきりとしてはおらぬ。だが、ジン・クロウはアルケー・クロウの直系の子孫でもある。彼が『伝説の英雄』となる場合、何としても『繋ぐ者』になってもらわねば困る」
そう言った後、初めて心配そうな表情をする。
「今までの『伝説の英雄』で、『繋ぐ者』と『破壊者』の選択の段階まで進む者は居らなんだ。だが、前回のバーボンは魔王の座する『約束の地』まで足を踏み入れた。
息子のジンには、何やらわらわでも視えぬ魔力が籠っておるような気がしてな? 彼はひょっとすると選択まで進めるやもしれぬ」
「……プロノイア様ですら視えぬ魔力ですか?
そのような魔力、『深淵の魔力』しか思い当たりませんが……。
しかし『深淵の魔力』はアルケー・クロウしか発現していない魔力です。ジンがいかにアルケーの直系の子孫とはいえ、そのようなことがある可能性は限りなく小さいのでは?」
エレクラがそう答えると、プロノイアは真剣な顔で
「よいかエレクラ、わらわたちは摂理を司っている。わらわたちの間違いは世界の滅びに直結する可能性がある。だから、どんな小さな可能性でも見逃すべきではない。
そなた、ジンを心掛けてやってくれ。幸いジンのエレメントは『土』だから、そなたの領分でもある。そなたの魔力で、得体の知れぬ魔力がジンの中で覚醒しないよう抑えておいてもらえるか?」
そう頼んできた。
「……プロノイア様の仰るとおりですね。我々はどんな小さな可能性でも見逃すわけにはまいりません。分かりました、私が直々にジン・クロウを監視しておきましょう」
エレクラの答えにプロノイアは満足して笑みを浮かべ、
「ついでに、彼が立派な『繋ぐ者』になるよう、そなたが手を引いてやれ。いずれは『摂理の黄昏』も経験させると良いだろう」
そう言い残して、異界へと帰って行った。
(……それ以来、私はジンを見続けた。彼は魔術師としても戦士としても、かなり見どころがあった。真っ直ぐで、純粋で、そして優しいが芯がある少年だった。
それ故に、いつの間にか私は自身が許可できる最高のレベルまで、彼が使うことを許可していたし、彼が『繋ぐ者』としてすべての命が繋がった世界を招来するものと期待していた。だからこそ彼を5千年前の世界へと送りもしたのだ……だが……)
「……だが、それが間違いだったかもしれない。アルケー・クロウが私の知っている歴史の流れどおりに動かなくなってしまっていた。その最たるものが『乙女』だ……」
エレクラはそうつぶやくと、ゆっくりと頭を横に振る。
「……いや、繰り言は止そう。『今の世界』を守ることが、精霊覇王として正しいことなのだから……」
エレクラはそう言って、キッと顔を上げた。
★ ★ ★ ★ ★
エレクラ様の『大地の審判』が、唐突に解除された。今まで僕の鼓膜を圧していた轟音がぴたりと止まる。そして、一瞬の静寂が訪れた。
僕は魔剣パラグラムを握り直して、エレクラ様の攻撃に備える。溶岩の噴出という壁が消えたのは、エレクラ様が攻撃してくる前兆と思った方がいい。
しかし、エレクラ様は僕から20ヤードほど離れた場所で、腕を組んで立ったままだった。槍は彼の右斜め前に、地面に突き刺してある。
「……『自己愛幻覚』は破られていたか。まあ、想定内ではあるが」
しかし、エレクラ様は何故攻撃してこないのだろうか? こちらから攻撃してもいいが、相手は千軍万馬で『四神最強』の精霊覇王だ。どんな落とし罠を設けているか判らない。
「エレクラ様、僕を通していただけるのでしょうか?」
僕は思い切ってエレクラ様に声をかけた。こちらから攻撃できないとは言っても、いつまでもここでにらめっこしているわけにもいかない。
するとエレクラ様は、腕組みを解き、槍を手に取って答えた。
「いや、お前が回復するのを待っていたのだ。あれだけの『異体』を操れるなら、もう回復は済んだのだろう? だから『大地の審判』を解いただけだ」
エレクラ様の言葉は、戦闘の継続を意味している。分かってはいたが、僕を見逃す気持ちはさらさらないようだ。
「……分かりました、ご配慮に感謝いたします。では、続きを……」
僕がそこまで言った時、エレクラ様の身体が消える。僕は反射的に
「貪欲な濃霧と漆黒」
ガンッ! ジャンッ!
術式を展開しつつ、エレクラ様の槍を魔剣パラグラムで跳ね上げる。そのまま横殴りの斬撃を放ったが、これはエレクラ様のシールドに阻まれた。
「大地磔刑っ!」
「くっ!?」
ズバンッ! ジャリンッ!
魔力の槍が地面から何本も、そして素早く突き出される。僕は真上に跳び上がりながら、岩の槍を切断する。
「大地の弾幕!」
ズドズドズドズドズドッ!
「新月」
ジャッ、ジャジャッ、ジャリンッ、ジャリーンッ!
エレクラ様の魔弾を、魔力の刃で迎え撃つ。お互いの魔力が僕たちの中間地点で激突し、閃光と共に消え失せる。
「完全な虚空」
無駄かもしれないが、空間規定魔法でエレクラ様の捕獲を試みる。さっきはこの術式が作り出す特異点を利用して逃げられてしまったが、今度もやはり、
「……いい術式だ。アルケー・クロウ、お前が編んだのか?」
涼しい顔で空間からの脱出を果たして聞いて来る。
「『深淵の魔力』の術式は俺が編んだが、魔族の術式群にはマロンの工夫も入っている」
僕が答えると、エレクラ様は合点がいったという顔をしてうなずく。
「なるほど、マロン・デヴァステータの。道理で見たような編み込み方をしていると思ったぞ」
そう言うと、
「大地の刃!」
シュババババッ!
魔力の刃が地面を割りながら僕の方へ伸びてくる。
「はっ!」
それを避けた先には、
「大地の嘆き!」
ドレイン系の魔法が、獲物を飲み込むように黒い穴を開けて待ち受けていた。
「貪欲な濃霧」
ドレイン系にはドレイン系の術式をぶち当てる。僕たちの術式は、お互いの魔力を吸い尽くし、あっという間に消えて無くなる。
「大地の花弁!」
だが、そこにさらに追い討ちが来た。
「くそっ!」
あの16弁の花弁に捕まってはいけない。僕は魔剣パラグラムに魔力を込めて花弁に叩きつけると、その反動を利用して左へと跳ぶ。
「大地磔刑!」
ズバンッ! ジャラリーンッ!
間一髪、僕の剣が間に合い、岩の槍に串刺しにされることは回避したが、エレクラ様は僕の予想だにしない手を打っていた。
ドムシュッ!
「がはっ!?」
僕は、いつの間にか飛んできていたエレクラ様の槍を、腹部にまともに喰らった。槍は僕の体勢を崩し、そのまま地面に縫い付ける。
(くそっ! また捕まった! こうなったら……)
ブジュルルルルッ!
「ぐっ!」
僕は槍の柄に捕まって、体勢を立て直す。土手っ腹に刺さった槍は、僕の身体を地面に水平に縫い留めていたが、何とか足を地面につけてエレクラ様と正対する。
だが、あまりの痛みと苦痛に、頭の中が真っ白になってしまう。自分で自分の内臓をこねくり回しているようなものだから、痛みと出血が半端ない。
「……その闘志、褒めてやろう。
ジン・ライム、私はお前のことが気に入っていた。お前は『摂理の破壊者』にさえならなければ、私の魔法をすべて使わせても惜しくない逸材だった。
これはプロノイア様から負託されたからというだけではない。長年お前を見ているうちに、お前そのものを気に入ってしまったんだ……」
そう言うエレクラ様の顔には、寂しさと哀しみ、そして意外にも僕に対する慈愛の念があふれていた。
確かに、僕とエレクラ様には……畏れ多い言い方ではあるが友情が芽生えていたと思う。僕の場合は多分に尊敬の念が大きかったが、それでも四神の中ではウェンディに次いで接点が多かったこともあって、とても信頼していた。
それはエレクラ様もそうだったように思う。特に僕が5千年前の世界に送られて以降は、表立ってということは少ないが、常に僕を見守ってくださっていたように思う。
その彼に、そんな顔でそう言われたら、僕はなんて答えるべきなのだろうか?
「……だから、我が最高の弟子として、最高の敬意を払ってお前を葬る。安らかに眠れ、アルケー・クロウ、いやジン・ライム」
そう言うと、エレクラ様は呪文を唱え始める。エレクラ様が呪文を詠唱するのは初めて見たが、それだけに、これから繰り出す術式の威力は想像を絶するものだろう。
「D’e quintos arubareta, siene saruvatos om innguram ici, L’quplle ‘est vanita……」
だがここで僕は閃いた。
(これは最初で最後のチャンスじゃないか!?)
「……時の錨鎖」
僕は時空魔法の『命綱』を密かに撃ち込む。エレクラ様に悟られたらすべて台無しになるが、エレクラ様も呪文詠唱に集中しており、アンカー固着までの貴重な数秒を気付かれることなくなし終えた。
(……後は、エレクラ様の術式展開の瞬間を狙うんだ!)
お腹が灼けるように熱い。ヒールをかけてはいるが、槍の柄は僕の内臓を遠慮会釈なくこすって来る。傷も塞げないために出血が止まらない。
僕はボーっとしてくる頭を振りながら、何とか精神を集中させ続けた。
「…Asumosa de le Dekeitocaesar Erekurah Rock’est alles。ステージファイナル、大地の終焉……」
「時の抱擁っ!」
カチッ!
「何ッ!?」
僕は、エレクラ様の術式が展開される寸前に、時空魔法を叩きつける。エレクラ様は、魔力を胸の前で合わせた両手に持ったまま、動きを止めていた。
「……やっ!」
ガギョンッ!
僕は力を振り絞り、エレクラ様の槍をお腹の所で切断する。そして一気に身体を起こし、槍から離れた。
ブシュッ、ブシャアアアッ!
「……諒闇」
ヒールをかけて一息、ほっと深呼吸する。だいぶん血を失ってはいるが、若干ふらつくだけで歩けないほどではない。
僕はエレクラ様を見た。この時の僕には、エレクラ様を倒そうなどという大それた考えはなかった。
時空魔法は僕が生きている限り効力を発揮する。つまりもうエレクラ様は動けない。僕の邪魔をしないのであれば、あえてこの手で止めを刺す必要はない。
だが、僕が想像もしなかったことが起こってしまった。
「アルケー・クロウ、精霊王様の仇めっ!」
「お嬢様の仇をとるぞっ!」
「みんな、アルケー・クロウを倒してエレクラ様を救えっ!」
水の筆頭精霊モーリェ・セレ、火の筆頭精霊フェンリス・ヴェルファイアとセレーネさん、そして土の筆頭精霊ライン・ラントさんと副官ラントス・ミュールさんが、眦を割いて襲い掛かってこようとしていた。
この瞬間、僕はどれだけ運命を呪ったことだろう。だが、殺られる前に殺らねば、僕が『あのひと』から負託された遣いを全うできないし、シェリーも見殺しにしてしまう。
「我は祈る、摂理の向こうに至るために。我は求む、命の秘密を知る術を。我は願う、虚影の空に真実の月が輝かんことを……深淵の励起っ!」
僕は呪文を唱えて、魔族としての最高峰の攻撃魔法を使った。エレクラ様は僕に最大の敬意を払ってくださった。だったら僕も、最大の敬意を払わねばならない。
呪文詠唱と共に、僕の身体は群青色に光りだす。そして詠唱終了の瞬間、魔剣パラグラムを横殴りに薙ぎ払った。
ズババァァーンンッ!!
「がっ!」
「ぐふっ!」
「あっ!」
「がはっ!」
「うむっ!」
50ヤードほどまで近づいていたラインさんたち5人は、『深淵の励起』で一瞬にして消し飛んだ。
そして僕は、そのまま剣をエレクラ様の胸に刺し込んだ。
ドムッ!
エレクラ様は一瞬目を大きく見開いたが、僕の顔を見て、あの優しい瞳に戻ってうなずくと、次の瞬間真剣な眼差しで伝えて来た。『早く離れろ!』と。
僕とエレクラ様が見つめあっていたのは、ほんの数秒だっただろう。でも、僕には彼の気持ちがひしひしと伝わって来た。
僕はうなずいて剣を引き抜き、50ヤードほども跳躍してエレクラ様から離れる。最後の瞬間、時空魔法が解けたのかエレクラ様の満足そうな声が聞こえて来た。
「ジン・ライム、見事だ!」
ド、ズズズウウゥゥーンッ!
そしてエレクラ様は、光を発しながらバラバラに崩れ去って行った。
僕は、しばらく茫然として突っ立っていた。エレクラ様のあの最後の瞳、そして最後の言葉……恐らく死ぬまで僕は忘れ得ないだろう。
どれだけの時間が経ったのだろう、僕はハッと我に返る。プロノイア様に、『あのひと』の言葉を伝えねばならない。
「……その前に、シェリーを助け出さなきゃ……」
僕はそうつぶやいて歩き出す。なんだか、近頃僕はめっきり独り言が増えた気がする。
シェリーは、割とすぐに見つけることができた。エレクラ様の『大地の花弁』に捕まった彼女は、僕の言うことを素直に聞き、すぐに魔力を収めて目を閉じたようだ。おかげで僕の見るところ大して魔力の欠損もなく、すやすやと眠っていた。
穏やかな寝顔だったから、起こすのが悪い気がしたが、なるべく早く依頼を終わらせなければならない。
「シェリー……」
僕がそう言いながらシェリーを起こそうとした時、
「団長くん、幼馴染さんを起こすのはちょっと待ってくれないかなぁ?」
そう、聞いたことのある可愛らしい、そしてどことなくふざけた感じのする声がした。
「……君もかい、ウェンディ? まあ、四神の中で君だけ生き残るって訳にもいかないんだろうけれど……」
僕はそう言いながら立ち上がって振り向く。やはりそこには風の精霊王ウェンディがいた。髪は黒いセミロングで、両耳の横だけを三つ編みにしている。白いシャツに革の半ズボン、そして素足に革のブーツ。緑色のマントを翻し、背中には背丈を超える大剣を負っている。
「……君とは正直、戦いたくないんだけれど?」
僕はそう言った。偽りのない本心だった。
ウェンディは僕の顔をじっと見つめると、一瞬悲しそうな顔をし、肩をすくめて言う。
「……ボクだってそうさ。何せ四神の中では、ボクが最初に君と出会っているんだからね?
じいさんはずっと前から君のことは知っていたみたいだけど、実際会ったのはボクが最初で、君のことはボクがじいさんに報告していたんだ……」
そこで言葉を切ったウェンディは、にっこりと笑って
「……ねぇ、団長くん。君が『虚空』から伝言を預かっていることも、その内容も知っている。
確かに、四神として見れば、摂理を止めて世界を終わらせるような伝言をプロノイア様に伝えさせるわけにはいかない。
でもね、マロンがずっと後悔していたのは、ボクたち四神は『人間のためになりすぎた』ってことだ。ボクら精霊王は精霊の王であって、人間の王じゃないんだ。
ボクたちが司る自然の摂理を守ることこそが第一義であって、摂理に対して人間が有利になるような情報は与えてはいけなかったんだ。
そのことは、賢者マーリンのところに行ったバーディー・パーの話を聞いて思ったよ。世界の根源に関する知識を手に入れたけれど、その内容に精神が持ちそうになかったから、マーリンに頼んで忘れさせてもらったって言っていたからね」
そう、一息でしゃべった。
「結局、人間は知りすぎたんだ。知らなくてもいいことを。知らなくても世界は回り、摂理はボクらを支配している。踏み込んじゃいけない領域に踏み込んだのなら、それを忘れるか、少なくとも摂理に挑戦しちゃいけない……その禁忌を人間は犯した。なら、『虚空』が人間を見限っても仕方ない……それがボク個人の意見さ」
僕は注意深くウェンディの話を聞いた。
ウェンディは、この世界がいったん白紙に戻っても仕方ないという意見を持っている。
その理由は、人間が知りすぎたこと。摂理に挑戦するほど思い上がってしまったことだと言う。
そして、そんな人間に、摂理の秘密を知る機会を与え、自然を自分たちに都合がいいように変える力を与えてしまったこと……マロン様の言葉で言えば『人間のためになりすぎてしまったこと』を、ウェンディ自身も苦々しく思い、反省していた。
「……ウェンディ、君の意見は分かった。でも君のことだ、その理由で僕と戦うのを放棄するわけじゃないんだよね?」
自分でも分かるくらい、がっかりした声が出た。僕だって、いい加減良き友人……と言って過言なら尊敬すべき知り合いと戦うことに疲れていたからだ。
そして、ウェンディの答えは僕の予想どおりだった。
「てへっ☆ さすがは団長くんだね。
じいさんとは長い付き合いで、いい意味での腐れ縁だったんだ。そのじいさんが倒されるのを見てしまったら、ボクは君に勝負を挑まざるを得ないんだよ。なにせボク、これでも風の精霊王だからね♪
さあ、団長くん。お互いこれが最後の戦いだ。君が思うような、素敵な世界に創りかえられるよう祈っているよ♡」
ウェンディはそう言うと、翠色の魔力をいきなり全開にした。
(最終回・世界を狩ろう!その6:VS筆頭精霊ウェンディ に続く)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
精霊覇王エレクラ・ラーディクスは、特にジンの各ステージ覚醒において大事な働きをしてきました。
『摂理の黄昏』が迫っていることを感じていたエレクラが、起死回生の切り札と考えていたのがジンであり、エレクラはかなりジンを信頼し、可愛がっていたように思います。
けれど、ジンは『繋ぐ者』ではなく『破壊者』になってしまいました。エレクラはさぞがっかりしたと思います。
けれどですね、作中、水の精霊王マーレが言っていましたが、『繋ぐ者』『破壊者』のどちらが善でどちらが悪かは、はっきりと言われていないんです。
エレクラがジンの『深淵の魔力』を視た時、エレクラは『本質から生まれ出た魔力だな、これは。恐らく『深淵の魔力』とは、『虚空』が持つ性質そのものなのだろう』と言っています。
ジンが道を選ぶ時、『本質』に導かれていると看破したからこそ、エレクラは『これは私でも勝てはしないな』と理解したのでしょう。
最期のエレクラの言葉は、ジンや『選ばれた未来』へのエールである……そう思いたいものです。
さて、長らく連載してきた『キャバリア・スラップスティック』も、いよいよ次回が最終回です。ジンとの絡みが多かったウェンディとの戦いになります。お楽しみに。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
【主な登場人物紹介】
■ドッカーノ村騎士団
♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させてきた。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』。だが、ワインとスナイプの死によって『破壊者』として覚醒し始めており、マロンの死によって真の『魔族の祖』であることを自覚した。現在、彼の根源である『深淵の魔力』によって摂理の外にいる存在となった。
♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。魔王との決戦で魔王の罠に嵌り殺されたが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』で復活し、後にエピメイアの時空魔法で消滅したかに見えたが、魔族の魔力によって生き延びていた。
♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。魔王との決戦で負傷し、チャチャと共に後送されている。
♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。負傷したラムと共に後送されている。
♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形。ジンの魔力で再起動し、新たに仲間となった。ラムを守るためにシェリーの命令で『ドラゴン・シン』の集積所に後送されている。
■退場した仲間たち(退場順)
♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトでジンの騎士団に加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。
♡ウォーラ・ララ ジンの魔力で再起動した自律的魔人形。彼の騎士団に所属して献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。
♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。後にジンの騎士団に所属して『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。
♡マディラ・トゥデイ 騎士団『ドラゴン・シン』事務長。金髪碧眼で美男子のような女の子。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに叩き潰された。享年20歳。
♡ソルティ・ドッグ 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。調査・探索が得意。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに握り潰された。享年21歳。
♤ブルー・ハワイ 『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。記憶力と変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。魔王親衛隊クン・バハと対峙し善戦したが、隙を衝かれて敗死した。享年25歳。
♤ウォッカ・イエスタデイ 『ドラゴン・シン』の副官兼親衛隊長。オーガの戦士長、スピリタスの息子で無口・生真面目な性格。大陸武闘大会で3連覇を果たすほどの戦士だったが、魔王親衛隊クン・バハに止めを刺しつつも力尽きる。享年21歳。
♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。ジンと永遠の友情で結ばれ、さまざまな場面でジンとドッカーノ村騎士団を助けて来た。最期は『約束の地』直前で襲来した魔王親衛隊隊長ファルカロスを倒したが力尽きた。享年21歳。
♡ジンジャー・エイル 本名キュラソー・マッケンロウ。ジンの命を狙ったが許されてドッカーノ村騎士団に所属し、『PTD4・幽霊』を倒す。魔王の眷属と化したエレノアに挑み勝利するが、同じく眷属になった賢者スリングに殺された。享年21歳。
♤テキーラ・トゥモロウ 『ドラゴン・シン』団員で本名テキーラ・マッケンロウ。父はバーボンの異母兄コニャックでジンジャーは実妹。魔王親衛隊オデッシアに止めを刺した後、ジンの許に急行し、魔王の眷属・賢者スリングと相討ちになって果てた。享年24歳。
♤ダイ・アクーニン ドッカーノ村騎士団所属。賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。仲間のコア・クトーやシロヴィン・ボルドーの仇を討つため魔王と戦い善戦するが力及ばず敗死した。作戦ミスで魔王を完全復活させてしまった。享年28歳。
♤ワイン・レッド ジンの幼馴染みでエルフ族。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。実は11年前に事故死していたが、父母の依頼でエレノアが復活させていたという秘密がある。復活したスリングたちを摂理に戻すマロンの魔法で、彼も摂理に戻ってしまった。享年18歳
♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体であることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。視力を失っていたが、ジンの魔力で取り戻した。エピメイアの『箱庭』を、自らの犠牲によって破壊し、ジンたちを救い出した。享年28歳。
♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータ。エピメイアと行動を共にしたため、その地位を剥奪された。アルケー・クロウを追ってジンの騎士団に入り、『暗黒領域』ではダイと共にドッカーノ村騎士団別動隊を率いたが、後にアルケーと行動を共にする。エピメイアとの戦いで戦死したが、エピメイアの奥義を封印し、真の『魔族の祖』アルケー・クロウを覚醒させた。
♤アルケー・クロウ 年齢不詳 7千年前にエピメイアがジンの素材を使って錬成した最初のホムンクルス。マロンと共に摂理や世界の謎を追い、魔族を生み出した。マロンと共にエピメイアを封印したが、魔力を失って眠りについていた。5千年前に『異体』として目覚め、ジンとの確執を生む。その後、マロンの執り成しによりジンと共にエピメイアに挑み敗死した。ただし、その魔力はすべてジンに引き継がれ、ジンを覚醒させている。




