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キャバリア・スラップスティック  作者: シベリウスP
摂理の黄昏編
166/170

Tournament166 Universe hunting:1(世界を狩ろう!その1:VSエピメイア緒戦)

魔王を倒して魔剣を奪い、『破壊者』として覚醒したジン。だが、精霊覇王エレクラが差し向けた賢者マーリンの手によってシェリーが復活したことで、魔王形態は解除された。

そしてジンは、復帰した賢者スナイプ、合流したマロンやアルケー・クロウと共に、エピメイアとの戦いに臨むことになる。

【前回のあらすじ】


遂にジンは、ダイを倒した魔王との戦いに臨むことになる。マロンは、魔王が復活させたエウルアやスリングを摂理へと返すが、その魔法がもとでワインは消えてしまった。

そしてシェリーが魔王の姦計に倒れ、ジンは魔王を倒して魔剣を奪うも、『破壊者』として覚醒してしまった。


     ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


 私は、目の前の光景を現実のこととして受け入れることができなかった。あまりにも衝撃的で、そして重大な出来事が次々に起こったら、誰しも状況を冷静に分析することなど不可能だ。


 魔王は、確かに倒れた。私の目の前で、ジン様が魔王を倒した。それは間違いない。


 そして、ワインはいなくなっていた。この事情は恐らく永遠に謎だろう。その事情を知っているのは、一緒に戦っていたシェリーだけだが、そのシェリーは魔王の手によって惨たらしく串刺しとなって果ててしまっていたから。


 ただ、チャチャがシェリーから何かを受け取っていた。これはシェリーの死を見て卒倒したチャチャが目を覚ましてから聞いても遅くないだろう。


 問題は、ジン様だった。ジン様は、シェリーの死を見て遂に心の中の何かが噴き出してきたのか、黒い翼とねじくれた角を持つ姿に変わり、魔剣を腰に佩いて紫紺の魔力に包まれていた。


(虚空に現れたあの女性は何者だ? あの女性の声を聞いてからだ、ジン様が変貌したのは。それに、ジン様のことを『破壊者』と呼んだし、予言とは何のことだ?)


 私は、必死に考え続けた。幸いジン様は見た限りでは落ち着いているようだ。もっとも、心の中までは判らないから、いきなりどんな行動を取るかは全く予想不能だった。


(まずは、チャチャを安全な所に寝かせねば。その後は、シェリーの遺体を埋葬しなければ……だが、ジン様がそれをうなずくかどうか……)


「ラムさん、うちは何をすればいいでしょう?」


 アイリスがそう聞いて来る。たとえ自律的魔人形エランドールとはいえ、この場に話ができる仲間がいることは有り難かった。


「うん、まずはチャチャを安全な場所で寝かせないと。それにシェリーも、あのままにはしておけない……」


「……ご主人様は、ずっとシェリーさんの側にいらっしゃいますが……」


 アイリスが、痛ましそうな目でジン様を見て言う。機械であるアイリスだが、エランドールには思考能力と感情がある。ましてやアイリスには、ジン様に恋焦がれていたウォーラの記憶が移植されているそうだから、ジン様の絶望や哀しみが理解できるのだろう。


 私は、シェリーの遺体の前に立ち尽くすジン様を見て、ゆっくりと首を振って答える。


「……お話をしてみよう。ジン様だって、シェリーをあのままにしておくことは……」


 そう言いかけた時、アイリスが急に振り返り、


「転移魔法陣の魔力です! 誰かがここにやって来ます」


 そう言いながら背中の槍を手に持って構えた。


「……アルケー・クロウか? それとも『運命の背反者(エピメイア)』か?」


 私はそう考えて戦闘準備をする。ここに現れるのがアルケーなら、恐らくマロン様も一緒なのですぐに戦闘ということもないだろう。


 だが、エピメイアなら有無を言わさず戦闘開始だ。そして私とアイリスでは、相手になりっこないことも判っていた。


 しかし、やって来たのはそのどちらでもなく、今の私たちにとって『救いの神』とも言える人物だった。


 転移魔法陣から出て来たのは、亜麻色の髪に碧眼の男性と、ウェーブがかかった金髪を持つ女性だった。そして私はそのどちらにも面識があった。


「賢者マーリン様! もしかして後の女性は、賢者スナイプ様ですか?」


 すると、賢者マーリン様は優しい微笑を浮かべてうなずくと、真剣な顔でジン様の姿を見て言った。


「ああ、エレーナ・ライムを連れて来た。ちょっと困ったことになっているようだね?

 エレーナ、状況は判るかい?」


 すると、エレーナ・ライム……賢者スナイプ様は目をつぶったまま周囲を確認し、


「……シェリーちゃんがやられたみたいね? それにこの魔力はジンくん? かなり危ない魔力だけれど、まだ『破壊者』にはなり切っていないみたいね。手は打てるわ」


 そう言って眉を寄せ、唇を引き結んだ。



 ラムは、手短にここで起こったことをマーリンとエレーナに説明する。聞き終わったマーリンは、沈痛な表情で言う。


「ふむ……ワインくんを失ったのは痛かったね。彼には『諸刃の韻律』を渡していたんだが。それがあれば、ジン・ライムとも話ができるかもしれない。ちょっと研究室ラボに戻るか……」


 それを聞いて、ラムはシェリーがチャチャに何かを手渡していたのを思い出し、


「ちょっとお待ちください。シェリーは戦闘前、チャチャに何かを手渡していたんです」


 そう言うと、急いでチャチャの服を調べ始め、小瓶を見つけるとマーリンに見せた。


「これです。これはマーリン様の仰る『諸刃の韻律』ではないでしょうか?」


 マーリンは、鮮烈な藍色をした液体を詰めた小瓶を見て、パッと笑顔になる。


「うん、そうだね。ではそれを貸してくれないかい?」


 小瓶を受け取ったマーリンは、ボウッと身体を黄金色の魔力で包むと、


「君たちはちょっとここで待っていてくれないか? エレーナ、ついて来てくれ」


 そう言って、エレーナと共にジンの方へと歩き出した。


「……ジンくん、普通の状態じゃありませんね? 魔族の魔力が他の魔力を圧倒しています。見た目はどんな感じでしょうか?」


 エレーナが隣を歩くマーリンに訊くと、マーリンは言いにくそうに答える。


「うん、まぁ、魔王そのものだね。それにしてもエピメイアめ、マイティ・クロウを取り込んで魔王にして、スリングやエレノアまで眷属としてジン・ライムに向かわせるなんて」


「……ジンくんにとっては、心が引き裂かれる状況だったでしょうね。『破壊者』になりかけるのも解る気がします」


 沈んだ声でエレーナも言う。彼女にとってもバーボン・クロウ、賢者スリングすなわちエウルア・ライムそしてエレノアは全員親族であったから、魔王とその眷属になって目の前に現れたら冷静ではいられなかっただろう。


(エレノア姉さまやバーボン義兄にいさまが魔王とその眷属と知って、ジンくんはどう思ったかしら……運命は、ジンくんになぜこんな過酷な試練を与えるのかしら)


 エレーナの思考を読んだように、マーリンが静かな、けれど深い諦めのこもった声でつぶやいた。


「ジン・ライムに与えられた運命を観ると、『虚空ヌル』はこの世界を一度リセットしたがっているのかもしれないな」


「え!?」


 驚いたエレーナが声を上げると、マーリンは緩く首を振って


「……いや、僕の考えすぎかもしれない。それよりも、ジン・ライムとの話し合いとシェリーさんの蘇生が緊急の案件だ。エレーナ、君がジン・ライムの心を鎮めてあげてくれ」


 そう言うと、きつく唇をかみしめた。



(シェリーが死んだ……ワインが死んだ……僕のせいだ。僕が騎士団を作りたいって言ったから、僕が父さんを探しに行きたいって言ったから、僕が……)


「……僕が、『伝説の英雄』だったから……」


 僕の口から、しわがれた声が漏れる。全部、全部僕のせいだ。5千年前の世界で、ウェカが死んだのも、僕があの世界に存在したから……。


 心が熱い、空っぽのくせに熱い。渦巻く後悔や、運命に対する無力感……そして、


「こんな世界なんて、全部破壊したい!」


 そんな破壊衝動がある。


 運命に抗えないのなら、僕たちがこの世界で行うすべての努力は無駄で、結局、決められた最期を迎えるしかないのなら、それは世界の在り方として間違っているんだ。


 僕らが写像で、この世界はその写像がひしめく『仮の世界』なら、僕たちは自身で自分の運命を決められる『真の世界』を目指すべきなのだ。


『ジン、運命はあらかじめ複数の選択肢として与えられている。バッグの中にパンとライスとビスケットが入っているようなものだ。どれを食べるかで運命は変わる。そしてどれを食べるかは持ち主が決めるんだ』


 不意に僕は、5千年前の世界から戻った後、ハーノバー行きの馬車の中でワインが話してくれたことを思い出す。


(確かに、魔王バーボンが現れた時、僕にはワインやシェリーが勧めてくれたように『いったん退避する』という選択肢もあった。


 けれど、ダイやテキーラさんの登場によって、その選択肢を選ぶことが難しくなった。


『運命』はいくつかの選択肢を持っているのかもしれない。けれど、『宿命』ってやつが、あらかじめ決められた道に進むよう、選択させているのかもしれない……)


「……だから、この世界を『虚像』から『実像』に変えねばならない。運命の選択肢を自ら創り出せる『実像』としての世界に……」


 僕はそう考える。頭は冷え切っている。何物にも感情が動くことはないようにすら思える。でも、目の前のシェリー……串刺しにされて冷たくなってしまったシェリーの姿を見ると、僕の心の中にはすごい嵐が吹きまくるのだ。熱い、けれど空っぽだ。


「シェリー……」


 僕はそうつぶやいてシェリーの顔を撫でる。今は苦しみの翳すらなく、穏やかな表情をしていた。まるで、初めて結ばれたあの夜に、僕の隣で寝息を立てていたシェリーのままだった。


「……お前をこんな目に遭わせたくなかった……」


 僕がそう言った時、後ろから聞き覚えのある声がした。


「……後悔と憤りが、あなたの姿を変えてしまっているわよ。私のジンくんは、もっと男前で、もっと前向きな男の子だったと思っていたけれど?」



 それは、もう二度と聞くことはできないと思っていた声だった。最初は


(幻聴に決まっている。スナイプ様はテモフモフの遺産の一人、『道化』に倒されたんだから……)


 そう思っていたが、再び、


「私は幻覚でも、幽霊でもないわよ?『道化』にはめられたのは確かだけれど、ワインくんのおかげで一命は取り留めたわ」


 懐かしい方の声がした。


 僕が、まさかと思って振り向くと、そこには死んだはずの賢者スナイプ様が、賢者マーリン様と一緒に立っている。僕は思わず、スナイプ様に抱き着いて泣いてしまった。


「スナイプ様! シェリーが、シェリーが……」


 スナイプ様は悲しそうな顔で僕を受け止めてくれた。僕の髪を撫でながら、


「辛かったわね。でも、マーリン様に任せておくといいわ。まだシェリーちゃんの魔力は完全にはなくなっていないから、マーリン様なら何とかできると思うわ」


 そう言ってくれた。


「うん、シェリーさんのエレメントは砕けていないし、魔力も完全に拡散していない。恐らく、左目の魔法石のおかげだろう。本来の魔力が散じてしまっても、魔法石の魔力がエレメントを保存し、シェリーさんの生命力を失わせなかったんだろうね」


 マーリン様はそう言いながら、慎重にシェリーを串刺しにしている槍に魔力を込める。


「……上手く行ってくれ。『物質変換アルケミア』……」


 マーリン様の黄金色の魔力がシェリーを包み込む。槍はゆらゆらと姿を変えて消滅し、マーリン様の腕に抱かれたシェリーの傷も消えていた。


「……ジン・ライム、シェリーさんに『大地の慈愛(ホルストカリタス)』を。これは君に任せた方が確実みたいだからね」


「……はい……」


 僕はマーリン様からシェリーを受け取ると、『大地の慈愛』をシェリーにかける。温かい光の中で、シェリーは眠っているように見えた。


 マーリン様は、シェリーの様子を見てうなずき、


「いい感じだよ。あとはこれを……」


 そう言いながら、藍色の液体が入った小瓶から、シェリーの口に数滴たらした。


 僕は、シェリーの頬に赤みが差してくるのを見て、それまでの虚無感が吹き払われ、心に温かいものが満ちていくのを感じていた。そしてシェリーの胸が息をするたびに上下する頃には、僕の頬は涙でぬれていた。


「……君は気が付いていたかどうか知らないが、さっきまで君には黒い翼とねじくれた角があった。今はもう、元の君に戻っているがね。

 ジン・ライム、気持ちが落ち着いたら、エレーナの件とワインくんの件を説明しよう。そしてこの後、君が直面するはずの出来事についても話をしたい。精霊覇王エレクラからの依頼でもあるからね」


   ★ ★ ★ ★ ★


 この世界には土、風、火、水の4元素を司る精霊王がいて、『四神』と通称されている。


 そして四神は、通常それぞれ自分たちの眷属たる精霊と共に、『異界』に居住しているが、それとは別に四神が集う『神の宮殿(パンテオン)』があり、何か事件が起これば四神はそこに詰めることになっていた。


 だが土の精霊王は、最初の精霊として生まれ出で、四神を代表する存在であったため、精霊覇王と呼ばれ、パンテオンにいることが多かった。ここの大広間には、地上の出来事を映す水晶があるため、地上の監視を兼ねているのだった。


「それで、ジン・ライムの様子はどうだ?『破壊者』として行動を開始する予兆が見えたら、すぐさま彼を捕縛せねばならないが」


 土の精霊覇王エレクラ・ラーディクスは緊張した面持ちで、急を知らせて来た火の精霊王アリス・ヴェルファイアに訊く。


 アリスは首を横に振る。緋色の髪の毛がさらさらと揺れた。


「今のところ、魔王形態のまま幼馴染の遺骸の前で立ち尽くしています。魔力は一時ほど燃え上がってはいませんが、時折激しくなることがあるようですので、予断は許しません」


「ジン・ライムの側に誰を派遣している?」


 エレクラの問いに、アリスは


「PTD8『執事』であるヴォルフガング・ガイウス・フォン・ローゼンバッハ・ヨハン・ダヴィデ・フォン・ヘーゼルブルク0号に、PTD9『踊り子ちゃん』のセレーネ・マリア・フォン・ルーデンドルフ・インゲボルク・ヨハンナ・フォン・ヘルヴェティカを護衛で付けています。『フォイエル』にはフェンリス・ヴェルファイアを残しています」


 すらすらと答えた。エレクラは少し何かを考えていたが、


「分かった。引き続きジン・ライムたちを見守っていてくれ。もし、『運命の背反者(エピメイア)』が現れたら、すぐに私かウェンディに知らせるんだ。頼んだぞ」


 そう言って、アリスを下がらせる。アリスはお辞儀をすると、


「承知いたしました。ジン様はワタクシの恩人ですが、『破壊者』になる予兆が見えたら直ちに捕獲いたします」


 そう言って、パンテオンからマジツエー帝国のフォイエル城に戻って行った。


 入れ替わりに、風の精霊王ウェンディが慌ただしく入って来る。


()()()()、団長くんが魔王を倒したって聞いたけど? これで『摂理の黄昏』に集中できるね。エピメイアとの決戦に備えて、団長くんと連絡を取ってもいいかな?」


 エレクラは冷たい目でウェンディを見て、


「落ち着け、呑兵衛娘。さっき出入口でアリスとすれ違っただろう?」


 そう言いながら、身振りで席に着くよう促す。

 ウェンディは、自分の席に着きながら、


「ああ、そう言えばアリスが急いで出て行ったね。なんか表情が暗かったみたいだけど、お腹が減っていたのかな?」


 そうおチャラけて言うと、エレクラはじろりとウェンディを睨み、


「ほう……呑兵衛娘、本当にそう思っているのか?」


 低い声で訊く。ウェンディは慌てて目の前で両手を振って言う。


「じょ、冗談だよ~。冗談に決まってるじゃないかぁ~。まさか魔王との戦いで、団長くんがどうにかなっちゃったのかい?」


「ジン・ライムに『破壊者』の兆候が表れ始めている。アリスが知らせて来た。今は特に問題となる行動に及んでいないようだが、魔王形態が解けず、魔力も不安定だそうだ。

 とりあえず見守りを強化し、『破壊者』への変化が見えたら捕縛せよと命じている」


 エレクラの言葉に、ウェンディはびっくりした顔を向ける。なぜそんなことになったのかと問うような眼差しだった。


「エピメイアは、マイティ・クロウを魔王として復活させ、賢者スリングやエレノア上級魔法博士を眷属としてジン・ライムに当たらせたようだ。

 それに幼馴染が二人とも犠牲になっていると聞いている。考えてみれば『テモフモフの遺産』たちとの戦い以降、彼の騎士団からも被害が出ている。

 どれだけジン・ライムが精神的に強くても、心穏やかではいられなかったのだろう」


「そんなぁ(´・ω・`)……あんまりだよぉ(´;ω;`)。じゃ、余計にボクが行って団長くんを元気づけてあげなきゃ……」


「落ち着け。すでにジン・ライムの許には賢者マーリンを向かわせている。エレーナ・ライムも一緒にな。それよりウェンディ、私は気になることがある」


 立ち上がりかけたウェンディをそう言って制し、エレクラは真剣な顔で続けた。


「ジン・ライムが魔王と戦っていた時、正体不明の女性が現れて、ジン・ライムに『破壊者』と呼び掛けていたそうなのだ。この女性が実在すると仮定すると、ウェンディ、この女性は何者だと思う?」



 ウェンディは再び着席し、エレクラの言葉を吟味し始める。


「その女性、エピメイアじゃないんだね?」


 ウェンディの問いに、エレクラは即座に首を振った。


「99パーセント違うだろうな。第一、エピメイアにはジン・ライムを『破壊者』にする旨味がない。キャロット・トスカーナの予言を忘れたか?


 『一つの極みに到達すれば、繋ぐ者は破壊する者になり/逆の極みに至れば、破壊する者も繋ぐ者になる/一つを選べば英雄は皆に迎えられ、いつか来る破滅の道を進む/逆を選べば英雄は孤独となるが、新たな世界を迎える者となる/一人を選べば英雄は仲間と共に闇へと進み/乙女を選べば孤独の中で光を差し招く』


 とあっただろう? ジン・ライムが『破壊者』となれば、『いつか来る破滅の道を進む』ことになり、世界そのものがリセットされてしまう。エピメイアとしてはジン・ライムが『繋ぐ者』となり、『新たな世界を迎える者』になった方がいいはずだ」


「それは解るよ。じゃ、エピメイアじゃなければ『摂理の調律者(プロノイア)』様? エピメイア以上にあり得ないんだけれど?」


 ウェンディはそう言った後、


「じいさん、キャロット様の予言に関するじいさんの解釈が間違ってるんじゃない?

 それかじいさんがいつか言ったように、『破壊者』になることが必ずしも『虚空ヌル』の意向に反するものじゃない……とかさ」


 ちょっと考えてそんな考えを口にする。


「ふむ、私の解釈が間違っていれば、『繋ぐ者』こそ破滅に至るから、『破壊者』になるよう促したということか。それならその女性がプロノイア様だろうとエピメイアだろうと考えられる線ではあるな。

 だが、それならなぜ『新たな世界を迎える者』が『摂理の破壊者』と呼ばれるのかが疑問だがな……」


 考え込むエレクラを見て、ウェンディは真剣な顔で、何か恐ろしいことを聞くように問いかける。


「……ねぇじいさん。今まで『虚空ヌル』に会ったことはある?」


「……『虚空』は会える存在ではない。この世界の成り立ちそのものだ。私だけではなく、プロノイア様も『虚空』に会われたことはないだろう」


「……でさ、今までこの『世界』って、滅びたことってあるのかな? あるいはさ、摂理そのものが白紙になったとか……」


 エレクラは、それを聞いて途端に表情を強張らせる。


「ウェンディ、何が言いたい?」


 鋭い目で睨みつけるエレクラだが、ウェンディはそれをものともせず答える。


「じいさんが思い当たったことと一緒だと思うよ?

 団長くんに呼びかけたのは『虚空』。そしてなぜ『摂理の破壊者』として呼びかけたか? それは『虚空』が今の世界をいったんリセットしたがっているから……」


「……何故そう思う?」


 エレクラは鋭い目のままウェンディに問いかける。


 エレクラもウェンディも、『摂理の黄昏』を生き延びた精霊王である。他の二人、アリスもマーレも、その後に代替わりをしたため『摂理の黄昏』を経験していない。そのため、エレクラとウェンディの間には、他の二人にはない同志的な心のつながりがあった。


 ウェンディは、悲しそうな眼をして答える。


「……その問いの答えも、恐らくじいさんと一緒さ。ボクたちと人間との間には、深い溝ができてしまった。ボクたちは、あまりにも人間にいろいろなものを与えすぎてしまったんだ。

 そしてその最初が、恐らくじいさんの『農耕の許可』であり、後押ししたのはキャロット様の『作物の改良』だと思う」


 エレクラは、ため息をついて首を横に振った。疲れたような表情だった。


「ふむ……『古いものは新しいものに置き換わる』、これは摂理から導き出される世の中の公理といったものだ。

 人間たちは自分たちの暮らしを安定させるために努力を積み重ねて来た……そのことは、今言った公理で容認できる。その努力は当然のことなのだ」


 そこで一息入れたエレクラは、ウェンディの眼を見て続ける。


「摂理に従えば、環境の変化は進化と進歩を促す。だが、そこには淘汰も生じる。

 人間たちは進化した、ある一定のレベルまではな。進化の途中で淘汰も生じたが、それは摂理にとって織り込み済みのものだった。


 しかし、いつからか人間は環境の変化に対する対抗手段を、進化ではなく進歩に求め始めた。進歩が進化を追い越し、やがて進化することを忘れてしまった。


 今や人間たちは自分たちのために、自分たちが変わらずに、世界を変えようとし始めた……このことは明確に摂理に違反している。『虚空』が意識の集合体なら、そんな意識が投影されたこの世界をいったん終わらせようと考えるのも理解できなくはない」


 エレクラは一気に言うと、ウェンディから目を逸らし、天を振り仰いで、


「さっきの『今までこの世界が滅びたことがあるのか?』というお前の問いへの答えだ。世界は滅びている。何度滅びたかまでは分からないが、摂理の白紙化によってな。


 プロノイア様は『摂理永久停止(いちどきりのあやまち)』という摂理を止める究極魔法を持っていらっしゃる。これは『虚空』の命令によって強制的に発動される魔法で、その発動の記憶をプロノイア様はお持ちだった。


 ただ、どんな世界がどんなきっかけで滅んだか、その記憶はお持ちではない。だから世界が何度滅んだのかは、プロノイア様にすら判らない。『滅びたことはある』……それだけが言えることだ」


 そう言うと、再びウェンディを見て、弱々しく笑って言った。


「……その魔法が発動されないよう、祈るしかないな」



「……じゃ、ワインは11年前、一度死んでいたということですか?」


 僕は、シェリーを助けてもらった後、みんなで賢者マーリン様やエレーナさんの話を聞いた。話というのは主に三つ、エレーナさんのこと、ワインのこと、そしてエピメイアのことだった。


「……ワインくんがエレノア姉さまの魔力で生き返った存在だということは、姉さまから聞かされていたわ。ぶっちゃけ、姉さまが行ったことはワインくんが消える前にシェリーちゃんに言った『死体錬成』じゃなく、私が以前ジンくんに行った『蘇生魔法』に近いわ。


 より正確に言えば、今回マーリン様がシェリーちゃんに使った『物質変換アルケミア』と同じ魔法よ。だから私は姉さまからの依頼で、定期的にワインくんの状態を見ていたの。魔法に起因する不都合があったら取り除くためにね?」


 だからワインは、『賢者会議』の皆さんのことをよく知っていたのか。僕は単に彼がとても優秀だからだと思っていた。そのことが分かったからといって、ワインがいなくなった悲しみや喪失感は埋めようがなかったが……。


(でも、シェリーが生き返ってくれただけでも良かった)


 僕はそんな思いで、隣に座るシェリーを見ていた。


「な、何よジン。そんなにアタシを見つめて……恥ずかしいじゃない」


 僕の視線に気付いたシェリーが、顔を真っ赤にしてそっぽを向く。そのシェリーにも、いくつかの変化が起こっていた。


「いや、左目のアイパッチを外したシェリーも久しぶりだなって思ってさ」


「……それにしても、シェリーさんが魔法石マナストーンを持っていてよかった。あれのおかげで君のマナエレメントは空っぽにならずに済んだんだ。

 あの僥倖がなければ、通常の手段で君を蘇生させることはできなかっただろうね」


 賢者マーリン様がしみじみと言う。生体内にあるマナエレメントは、空になって一定時間経てば砕け散ってしまう。生きているうちに『魔力の完全枯渇』が起これば、以降、エレメントが復活するまで魔法は使えなくなる。ただ、エレメントが復活することは99パーセントないらしい。


 エレメントが砕け散っていれば、蘇生の取っ掛かりになるものがないので、通常の手段での蘇生はもはやできない。シェリーの場合、エレメントの魔力が消滅する代わりに魔法石の魔力が流れ込んできたので、エレメントは砕けなかったというわけだ。


 だから、シェリーの魔法属性は『風』から『火』に変わってしまっていた。


 そしてシェリーを助けた功労者、蟲に食い荒らされて失った左目の眼窩に嵌っていた魔法石は、マーリン様の『物質変換』によって眼球に変換されていた。だからシェリーは、1年ぶりくらいに左目を取り戻したことになる。


「そ、そう? 以前のアタシに戻って、可愛さ数割増しになったでしょ?」


 これは答えづらい、意地悪な質問だ。だってここにはラムさん、エレーナ姉さまという、僕に好意を持っているって判っている女性がいるし、何ならアイリスさんも(ウォーラさんの記憶を受け継いでいるため)僕に好意を向けている可能性が高い。


 それにチャチャちゃんは、シェリー一筋の女の子だ。エピメイアやアルケー・クロウといった強敵を控えている僕としては、余計な波風は立てたくなかった。


「……それで、エレーナお姉さまの眼は、治る見込みはあるんでしょうか?」

「あっ、こら、ジン。アタシを無視したわね!?」


 シェリーが何か言っているが、ここは強引に話題を変えたい。それにエレーナさんの視力が戻るか否かは、今後の作戦にも関わって来る。


 エレーナさんは、肩をすくめて答えた。


「そうねぇ、マーリン様の話では、私がジンくんに抱かれれば治るかもしれないそうだけど……どう、ジンくん。お姉さんとやっちゃわない?」


「うぇっ!?」

「だ、だめぇっ!」

「スナイプ様!?」

「ええっ!?」

「はわわっ!?」


 爆弾発言に慌てる僕らを見て、マーリン様が苦笑しつつ言う。


「エレーナ、僕の言葉を曲解するんじゃない。僕は、『エレメントを汚染した瘴気は魔族の魔力に似ているから、ジン・ライムの魔力で吹き飛ばせるかもしれない』と言ったはずだが?」


「あら、外から魔力を流し込むのも、中で出してもらうのも変わらないと思うんだけど?」


 あっけらかんとして言うエレーナ様に、ラムさんが顔を真っ赤にして言う。


「すすすスナイプ様! 団長はその、スナイプ様の甥っ子では? それってキ〇シ〇ソウカ〇では?『賢者会議』が問題にするのでは?」


「ジンはアタシのものですから! いくらスナイプ様でも、貸し出したりしませんから!」


 はぁ、シェリーまでマジになって突っかかっている。エレーナ姉さまの顔を見れば、いつもの冗談だってわか……いやマジじゃん! あの顔は半分マジじゃん!


「……マーリン様、治療方法を教えてください」


 僕は慌ててマーリン様に尋ねる。魔族の魔力で視力が戻るなら、早めに処置した方がいい。もちろん、やっちゃわない方法で。


「いいとも。ここにはベッドはないが、それでもいいのかい?」

「マーリン様!?」


 え、ここで冗談!? マーリン様って、そんなキャラだった!?


 驚き慌てる僕に、マーリン様は至極真面目な顔で不思議そうに言った。


「何を慌てているんだい? エレメントへの魔力照射はミリ単位の正確さが要求される。エレーナに横になってもらった方が安全に治療できるという意味だが?」


 僕らが全員、胸を撫でおろしたのは言うまでもない。若干1名を除いては。


   ★ ★ ★ ★ ★


「では、僕が精霊覇王エレクラから頼まれたミッションは終了だ。僕の見立てではアルケー・クロウより先にエピメイアとの勝負になるだろう。

 彼女の『禁断の情景(デッド・エンド)』は種族や個人に対して、運命を強制的に剝奪する魔法だ。その発動には特徴があるから、よく見極めてその魔法だけは回避するんだ」


 エレーナ姉さまの治療後、賢者マーリン様はそう言って転移魔法陣でウンターシャーングリラの研究室ラボに戻って行った。


「ふぅ、久しぶりに肉眼で見る世界はいいものね。ところでジンくん、エレノア姉さまたちのことだけれど……」


 エレーナ姉さまが訊きにくそうに言葉を濁す。僕は、ありのままを姉さまに告げた。


「元木々の精霊王マロン・デヴァステータ様の魔法で、つつがなく摂理に戻りました。もう、かあさまたちの眠りを妨げるものはいないと思います」


 それを聞いて、エレーナ姉さまはうなずいたが、まだ何かを聞きたがっているようだ。


「……父さんのことですけれど……」


 僕はそう言いながら思い出す。剣だけでの勝負を申し出てきた時の、魔王バーボンの優しい顔を。きっとあの時だけは、魔王のタガが緩んで『バーボン・クロウ』として僕の前に立ってくれたんだと信じている。


 僕がそのことを話すと、エレーナ姉さまは安心したように笑って、


「うん、私もそう思うわ。バーボン義兄にい様はそんな方よ。最期にあなたと戦士らしく、稽古をつける形でお別れしたかったんだと思うわ。義兄様も、今のジンくんを見て安心したんじゃないかしら。今頃は摂理の中で、エレノア姉さまやエウルア姉様と私たちを見守ってくれているはずよ」


 そう言うと、シェリーたちを振り返って、


「……エピメイアは四神の上位存在。魔王以上の魔力を持ち、魔王以上に奸智に長ける相手よ。恐らくエピメイアは、この『約束の地』で勝負を挑んで来るんじゃないかしら。

 賢者マーリン様の話では、『摂理の調律者(プロノイア)』様は四神に対して、エピメイアの討伐命令を出したということだけど、四神は誓約によって『約束の地』には入れないから」


 そう言うと、ラムさんが辺りを見回して訊く。


「ここに居たら四神が助けに来てくれないとなると、『約束の地』の外で戦う方がいいのでは? いったい四神の皆さんは、どこまで立ち入りを禁じられているんでしょうか?」


「精霊覇王エレクラ様は『約束の地』以内、他の精霊王は『決戦の荒野』以内が立ち入り禁止になっているそうよ」


 エレーナ姉さまの答えを聞いて、シェリーが


「じゃ、『決戦の荒野』の前に広がっていた平野で戦ったらどうかしら?」


 そう提案する。確かに、決戦終了後すぐに後方支援部隊の支援が受けられる方が望ましい。帰るための物資を受け取らないといけないし、怪我人も出ているだろうからだ。


 だが、アイリスさんが反対した。


「現在、『ドラゴン・シン』の皆さんのご遺体や遺品を収容するため、メアリー・ブラッドレイ代理団長が輜重部隊を率いて『決戦の荒野』や『瘴気の密林』の中間地点で活動中です。

 補給品の中継拠点も、中間地点まで前進してきています。輜重部隊活動地域での決戦はお勧めできません」


 なるほど、それはそうだ。メアリーさんの部隊が壊滅したら、僕らは勝っても補給品の受け取りや怪我人の治療が困難になる。下手をすると後退不能になるかもしれない。


「あのぅ……」


 その時、チャチャちゃんがおずおずと声を上げた。


「チャチャちゃん、何かいい考えがあるのかい? どんなことでもいいから聞かせてくれないか?」


 僕が優しく言うと、チャチャちゃんは思い切ったように、


「あ、あたしの村に伝わる伝承なんですが、『暗黒領域』のずーっと東側に、『ヘルヴェティア』って言われる土地があって、そこは山々に囲まれて、綺麗な川が流れていて、美しい花々が咲き乱れる谷があるそうなんです。


 エピメイアとの戦いが終わったら、どうせならそこまで行きたいかなって。村のみんなにも話して聞かせたいし」


 そう意見を言った。


「さらに『暗黒領域』の奥に足を踏み入れるってことか……アイリスさん、補給はつくかな? ってそもそも僕たちが今持っている物資は何日分なんだろう?」


 僕は急に物資が心配になった。ここまで来る間は補給を『ドラゴン・シン』の輜重部隊が引き受けてくれていたから心配していなかったし、『決戦の荒野』に入った後は戦いが続いて補給まで気が回らなかったのだ。


「……現在の手持ち物資はありません。各員が携帯口糧を2食分所持しているだけです。

 しかし、『ドラゴン・シン』が『決戦の荒野』の入口にデポした物資が残っています。5千人日分の物資ですので、それを回収すれば、5人なら3年弱行動可能です」


 うん、物資の使用期限や消費期限があるから、3年もは行動できないし、そんなに『暗黒領域』に留まっているつもりもないが、やろうと思えばチャチャちゃんが言う『ヘルヴェティア地方』まで足を延ばすことは可能みたいだ。


「とにかく、エピメイアは私たちだけで相手にするには手に余る敵です。ぜひ四神の皆さんと連携を取るべきです。ですから、『決戦の荒野』を早いとこ抜ける必要があります」


 これがラムさんの意見だった。



 エピメイアに対抗するには、四神との連携が必要……これは誰もがそう思っている。ただ、具体的な方策を整理してくれる者がいないだけだ。ワインやジンジャーさんがそうしてくれていたように……。


「ド・ヴァンさんが持っていた、シュバルツユニコーン族作成の地図にも、『決戦の荒野』より東の情報はなかったわ。もちろん、北や南の情報もないわね。

 どっちに行ったら何があるかは全く分からないけれど、少なくともエピメイアを『瘴気の密林』との中間地点で迎撃するべきではないことは確かよ。


 で、私たちが取るべき道は三つあるわ。一つはここでエピメイアを迎撃する道。ただし四神の援護は受けられないし、戦いの推移によってはデポした物資も失うことになるわね。

 二つ目は、東に進んで『決戦の荒野』から抜ける道よ。何があるか判らないけれど、四神の援護は受けられるようになるでしょうね。帰り道からは遠くなるけれど。

 三つめは、南西に抜ける道ね。見てのとおり南西には道はないから、啓開作業が必要になるけれど、『東の関門』には近づくし、四神の援護も期待できるわ。

 さ、どれにしましょうか?」


 エレーナお姉さまが戻って来てくれてよかった。彼女はすぐさま状況と対応策を言語化してくれた。


「エピメイアの襲撃という条件を加味したら、第2案か第3案だな。

 第2案は道を作らずに済むという利点があるが、帰り道や補給部隊から遠ざかる方向だけに、何かあった時が怖い。

 第3案は第2案とは逆だ。何かあった時、補給部隊との会合がしやすい。ただ、道を作らねばならないし、その作業中にエピメイアに襲われる可能性もある……一長一短だな」


 ラムさんが言うと、アイリスさんは、


「目的はエピメイアの討伐です。でしたら、何よりも戦闘を行う際にどちらが有利かという視点が大事だと思います。うちは、第2案、東の道を進むことに賛成いたします。

 帰り道の件は、四神の皆様の援護が受けられる場所に留まり、それより東に進まねばいいだけのことです」


 戦闘機械であるアイリスさんは、僕たちの現状を考慮して、最善と思われる策を選んだ。言われてみれば、何もバカ正直に東の奥地へ進まなくてもいい。『決戦の荒野』を出たところで留まっていてもいいわけだ。


 僕はシェリーとチャチャちゃんを見る。シェリーは、


「アイリスの言うとおりだと思うわ。東に進んで、アタシたちに有利な場所でエピメイアを迎え撃ちましょう」


 そう答え、チャチャちゃんもうなずいた。


「よし、アイリスさんの意見を採ろう。シェリーはチャチャちゃんとラムさんを連れて東に進み、いい場所を選定しておいてくれ。街道から外れるんじゃないぞ。

 アイリスさんとエレーナ姉さまは、僕と一緒に『ドラゴン・シン』がデポした物資を回収しに行きましょう」


 僕はそう決断し、エピメイアを待ち受けるための陣地を作ることにした。



 『暗黒領域』は、ホッカノ大陸の東に広がる、人間がまだ足を踏み入れていない……あるいは踏査しても定住するに至っていない場所のことである。だから、560年前に冒険者ドン・ペリー『提督』の冒険団がこの大陸に上陸した時は、大陸の西側海岸線地帯の一部を除く全土が『暗黒領域』だった。


 マジツエー帝国は、ホッカノ大陸に建国して以来、新たな土地を開墾し、魔物を駆逐し、人間が安心して暮らせるような植民を行って、領土を拡大してきた。


 現在、北はギュンター山脈、東はティンドル山脈とオルター山脈を帝国領の限界とし、西と南は海という自然の境界がある。『東の関門』の外には、新たな植民地を支援するための村があり、実質的にはその村の東10マイル(この世界で約18・5キロ)の峡谷が東の境界になっている。


 青年皇帝マチェットは、『組織ウニタルム』の帝国領侵犯などでここ2年ほど中断していた『暗黒領域』の探索を再開し、探索や魔物の討伐、植民地の整備を目標として、『東の関門』から久しぶりに大きな部隊を出撃させていた。


 『魔王の降臨』や『摂理の黄昏』を控えての行動はどうかと思われたが、マチェットは帝国正規軍ではなく、『皇帝陛下の私兵』と言われる自警団『ブリューエン』と騎士団『ドラゴン・シン』に、植民活動の実施を委託するという『ウルトラC』の裏ワザを使ってそれを推し進めた。

 これには植民の推進以外にも、魔物を帝国領外に拘束することや、魔物の討伐を行うことでジンたちの行動を援護しようという目的もあったのである。


 当初、サン・ゾック率いる『ブリューエン』は、『ドラゴン・シン』の援護を受けて順調に開墾地を拡大していた。『地獄の河原』まで20マイル(この世界で約37キロ)の所に開墾地を設営したという知らせを受けた時、大宰相レイピアはマチェットにお祝いの言葉を述べたほどだ。


「サン殿やド・ヴァン殿のおかげで、帝国の悲願だった『地獄の河原』までの領有が現実味を帯びて来たな。ジン殿も順調に進まれているようだ」


 そんな楽観的ムードを一変させたのが、ドッカーノ村騎士団と『テモフモフの遺産』たちとの戦闘結果が報じられた時だった。


 メイス・ダンゴスキー大司馬からその報告を受けた時、マチェットは顔色を無くしてしばらく絶句していた。


「……陛下、報告はまだ終わっておりません」


 横からレイピア大宰相が優しく言うと、マチェットははっと気を取り直し、


「……賢者スナイプ様まで犠牲になられただと?……それで、ジン殿は?」


 大司馬に訊く。


「は、ジン殿は無事ですが、団員4名が戦死、3名が重傷のようです」


 大司馬の答えに、マチェットはせき込むように重ねて質問する。


「戦死者と重傷者の名前は判らぬか?」


「戦死者の方はスナイプ様と氷魔法を使う少女、及び自律的魔人形エランドールの2人。重傷は副団長のシェリー殿、ジンジャー殿、チャチャ殿の3名のようです」


「確か、不思議な少女はダイ・アクーニンを連れて『北の関門』から『暗黒領域』に入っていたし、ユニコーン侯国の獅子戦士シールトゥルクラム・レーズン殿は故国に戻っておったな?

 では、今ジン殿の側には事務総長のワイン殿しかいないのか?


 ダンゴスキー、近衛第2師団の緊急派遣を検討せよ。ジン殿を失うことは、我らだけでなく両大陸の希望を失うに等しい!」


 厳しい表情でそう命令するマチェットに、大司馬は困惑して、


「は……」


 曖昧な返答しかできないでいる。大司馬が気にしていたのは部隊の練度や兵力ではない。


 確かに、東正面を守る第2軍のうち第6師団と第10師団は、火の精霊王フェン・レイとの戦いで壊滅し部隊を再編成して間もなく、新たに編成した第14師団も練度は不十分だった。


 しかし、比較的平穏な南方を統括する第3軍から第7師団、第11師団を派遣し、代わりに第10師団と第14師団を第3軍に編入する予定があったため、練度や兵力について不安はなかった。


 大司馬が気にしていたのは後方、つまり物資の確保だった。


 マジツエー帝国が強大だとは言っても、物資には限りがある。ましてや今は、『地獄の河原』までにいくつも開墾地を開き、人員を入植させている。彼らや、彼らを守る『ブリューエン』と『ドラゴン・シン』への兵糧、兵器、建築資材、土木工事用の各種資材は、国内だけでは足りず、トオクニアール王国から輸入している状態だ。


 その上さらに、1個師団2万人もの兵員の行動を支える物資を確保する見込みが立たなかったのである。


 そんな状態であることは、レイピア大宰相にはよく分かっていた。そして甥である青年皇帝マチェットがジンを心配する気持ちも理解できた。


「……陛下、帝国の国力は、正規軍を『暗黒領域』に長期間派遣するにはいささか不足します。第14師団を『東の関門』から出して『ドラゴン・シン』の集積所を引き継ぎ、『ドラゴン・シン』にはドッカーノ村騎士団と同行すべしという指示を出されては?


 ド・ヴァン殿はジン殿の親友。『暗黒領域』に慣れぬ1個師団を送るより、1個大隊規模とはいえ気心の知れた騎士団が側にいる方が、ジン殿は安心されるのでは?」


 マチェットはどんな心理状態にあっても、叔母であるレイピアの意見は尊重した。今回もまた、レイピアの意見を容れて、第14師団の前進だけを大司馬に命じた。


   ★ ★ ★ ★ ★


 僕たちは、エピメイアがいつ攻撃を仕掛けてくるのか判らないため、できるだけ陣地の整備を急いだ。シェリーがラムさんやチャチャちゃんと協議して陣地構築に選んだ土地は、『決戦の平野』から東に半マイル(約9百メートル)ほど行った場所だった。


「うん、ここなら見通しもいいし、狙撃魔杖や弓の攻撃も通るな」


 僕は、ラムさんが選定した場所に満足した。どちらを見ても5百ヤード(約460メートル)は見通せるし、基本的に平坦だが、適度に起伏がある。これは敵にとって『進撃しづらいし、魔弾や矢から身を隠せない』ということを意味する。


 僕はその場所に、半径30ヤードの円形陣地を作ることにした。堀は東側に1重、柵は1重のものを円形に立てることにしたのだ。後は、回収してきた物資を陣内に積み上げて櫓の代わりにした。


「団長さん、攻めてくるのはエピメイアだけじゃないんですか? どうしてこんな陣地を造るんでしょう?」


 チャチャちゃんのそんな質問に、ラムさんが答える。


「チャチャ、『暗黒領域』には、魔物がたくさんいるんだ。魔王が倒れた今、魔軍がどうなっているのかは判らないが、『勇士の軍団』に撃破された魔軍で全力だとは思えない。

 エピメイアはなりふり構わず私たちを狙ってくるだろう。魔軍を率いて来ないとは言えないから、こうやって陣地を準備しておくんだ」


 そうなのだ。たった6人しかいない僕たちに、陣地は不要だと思うかもしれないが、多人数に襲われた時、物資を守りながら戦うには陣地に依った方が有利だと言える。


 それに僕らは、今のところこの場所から動く予定はない。敵が来たら振り切って逃げるわけでもない。こういった場合は陣地があった方がいいのだ。


「分かりました。じゃあ、狙撃しやすい位置を確認しておきますね」


 チャチャちゃんはそう言うと、シェリーのところへ飛んで行く。二人で有効な狙撃点を探すのだろう。


「ジンくん、エピメイアとどう戦うつもり?」


 エレーナ姉さまが近寄って来て、薄く笑って訊く。張り付いたような笑いに、僕は


(賢者スナイプとして『四方賢者』まで務めたエレーナ姉さまも、『摂理の二柱』と言われたエピメイア相手では自信が持てないのか)


 そう思って暗然としたが、思い悩んで沈んだ顔をしていても始まらない。勝っても負けても……いや、負けるわけにはいかないが、だからこそ強がりでも笑わないと。


 そう思い直した僕は、ニコッと笑って答えた。


「そうですね、マーリン様からの注意事項を守るだけですよ。『禁断の情景(デッド・エンド)』という魔法を喰らわないようにする……それだけです」


 その時、


「あら、賢者マーリンはちゃんと注意事項を教えていてくれたんですね? それを覚えていたジン様もえらいですわ」


 そう言いながら、翠の瞳をして新緑のような髪を揺らしながら、マロン・デヴァステータ様が転移魔法陣から出て来た。


「マロン様!」


「エピメイアを追われていたんじゃないんですか?」


 シェリーとラムさんが駆け寄って来て、マロンさんに訊く。


「……残念ながら取り逃がした。戦闘に引きずり込めはしたんだが、魔王がやられたことを感じ取ったんだろう。次に現れるとしたら、ジン、お前の所しかないと考えたので、マロンと急遽こっちに戻って来たんだ」


 遅れて転移魔法陣から出て来た、白髪で緋色の瞳をした男……アルケー・クロウがそう言って僕を見る。


「……ふん、『深淵の魔力』には、さすがの魔王も勝てなかったか。だがジン、エピメイアの司る魔力は7元素すべてだ。お前は俺が仲間になったことを感謝するだろう」


「あらあら、そんなこと言って、あなただってジン様と手を結べてホッとしているくせに」


 マロン様がニコニコしながらそう言うと、アルケーはムスッとした顔をして、


「あ、当たり前だ。同じ魔族で争うほど無益なことはない。ましてや相手は四神を超える奴だぞ?『深淵の魔力』を持つ者でないと相手にならない。マロンが助けてくれると言っても、俺一人では正直きついからな」


 そう言う。


 僕は、二人の話で気になったことを訊いてみる。今訊かないと、もう二度と訊く機会は訪れないかもしれない……そんな気がしたのだ。


「マロンさん、『深淵の魔力』とは?」


 するとマロンさんは、僕を見てうなずいき、教えてくれた。


「ジン様も知っておくべきですね。『深淵の魔力』とは、『虚空ヌル』を大本とする魔力のことです。ですから、7元素に由来しない魔族の魔力はここから派生していますし、そもそも7元素の魔力も、根っこの部分は『深淵の魔力』が変化したものなのです。


 ジン様は、生まれながらにしてこの魔力の核をお持ちだったみたいですね? 魔族だったこと、『魔族の祖』の直系の子孫であることがその理由かもしれません」


「……本来は、俺が分け与える魔力なのだ。だが、人間がこの魔力を手にすることはできない。手に入れた瞬間に魂が破裂するんだ。


 さらに、普通の魔族では受け入れることすらできない。エレメントが拒否反応を起こすからな。だから俺が分け与えたことがあるのはただ一人、ロゴスだけだった。そのロゴスも、お前はやすやすと倒したようだがな。


 そんなお前が、何故分け与えてもいない『深淵の魔力』を持っているのか、俺は今でも不思議でしょうがない。エピメイアを倒したら、その謎を解いてやる」


 アルケー・クロウが目を細めて僕を見てそう言う。その瞳が持つ輝きは、まるですべての生命力を吹き飛ばすような、猛々しい嵐にも似ていた。こいつがドラゴンを使役してカッツェガルテンを襲い、ウェカを殺したんだ……そう思ったら、僕は自然に魔力を発動していた。


「……面白い。俺はマロン様の意見に従って貴様と手を結んでいるだけだ。エピメイアを倒したら、貴様こそ『魔族の掟』の厳しさを骨の髄まで味わわせてやる」


 僕が言うと、アルケーも魔力を発動し、


「ほう、俺の被造物の分際で『魔族の祖』に楯突くとは、お前は救いようもない怖いもの知らずのようだな?」


 そう言って、懐からピラミッド型の法器を取り出す。


 僕たちのやり取りを聞いて、マロン様とシェリーが、慌てて僕たちの間に入って来た。


「ちょっと、アルケー。今はジン様に喧嘩を売っている場合じゃありませんよ? 思うところはあるでしょうが、まずはエピメイアを倒すことです。でないと、世界が滅びます」


「ジン、今仲間割れはマズいわ。マロン様が言っていたじゃない、ジンとアルケー・クロウが手を結ばねば、『摂理の黄昏』は乗り切れないって。今必要なのは大人の対応よ、オトナのタイオー」


 僕たちは、シェリーやマロン様に抑えられながら、しばらくにらみ合っていたが、


「ご主人様! 正体不明の魔力を探知。85度方向、20マイル先です。移動速度は時速50マイル。30秒後には解析可能距離に入ります!」


 アイリスさんの緊急通報で、二人同時に東の空に目を向けた。



「……魔力属性、不明。魔力エネルギー値、拍動により測定困難。概算値で53万テラジュールから277万テラジュール。魔力スパイク値、測定不能。5マイル先まで来ていますっ!」


 もはや相手の姿は肉眼で視認可能だ。僕は命令を下した。


「戦闘準備っ!」


 僕を中心に、左にはチャチャちゃんとラムさんが、右にはシェリーとアイリスさんが並び、後ろにはエレーナ姉さまが控えている。


 一方でマロン様とアルケー・クロウは、僕たちの戦列から数十歩も先に出て、二人で敵を待ち受けていた。


「やはりここに来ていたか。あなたたちもしつこいわね、アルケー・クロウにマロン・デヴァステータ」


 そう言いながら、長い白髪を揺らして、12・3歳ほどの少女が地面に降り立つ。青く薄い生地の布を無造作に身体に巻き付け、腰には太い銀のベルトを巻いている。


 そのラピスラズリのような瞳が、マロン様とアルケーの間から僕を突き刺すように捉えた。


「そこに居るのはジン・クロウね? 7千年前はお世話になったわね。あなたのおかげで素晴らしい作品ができたわ」


 ……これは、僕から人体錬成の素材を採集したことを言っているのだろう。思い出したくもないことだったので、僕はあえて黙っていた。


 その代わり、ここに居る全員……マロン様やアルケーも含めて……に『大地の守護ホルストケッセル』を自動付与するための準備にかかった。


「さっきはうまく逃げおおせたが、今度は逃がさないぜ。エピメイア、おとなしく7千年前のように俺たちに封印されるんだな」


 アルケー・クロウが言うと、エピメイアはせせら笑って答える。


「あははは♪ 私の被造物が何を言っているの? 7千年前は単にあなた方の運が良かっただけ。まさかウェンディ・リメンが戦闘に加わるなんてね。

 今回は四神は誰も手出しできない。あの頃より数段落ちた魔力しかないあなた方と、人間たちの助太刀なんて、今の私には蟷螂の斧よ」


 するとマロン様が、ゆっくりと数歩前に出て、エピメイアに問いかけた。


「エピメイア、お久しぶりです。わたくしたちは以前、互いの考えを語り合い、数年の間互いの説を立証するため『暗黒領域』を彷徨いましたね。

 あの時のあなたの宿願である『真実の月』は見つかりましたか?」


 エピメイアは、17・8歳に見えるマロン様の顔をじっと見ていたが、


「……思ったよりも回復していますね。やはりアルケーが側にいると、あなたは表情からして違います。でも、ジン・クロウの側にいる時ほどのきらめきは感じませんが」


 そう言ってニヤリと意味ありげに笑う。


「……質問の意図が伝わらなかったのでしょうか? エピメイアにしては頓珍漢な答えでしたね。では質問を変えます。

 『摂理の黄昏』の向こうに、『真実の月』は昇るのでしょうか?」


 マロン様は、先ほどまでと違って鋭く斬り込むような声で、錐のような言葉をエピメイアに投げつけた。『錐のような』と感じたのは、後ろでエレーナ姉さまが、こうつぶやくのが聞こえたからだ。


「……『真実の月』は『虚影の空』には昇らない。マロン様はエピメイアに、あなたがやって来たことは無駄なこと、と言っているに等しいわね」


 案に相違してそれが戦闘開始の合図にならなかったのは、エピメイアがその言葉を受けて、たっぷり40秒は黙り込んだからだ。投げつけられた言葉に彼女が何を感じ、何を思ったのか、今となっては分からない。


 だが、不思議なことに、エピメイアは静かな声で


「……なるほど、それがマロン、あなたの悟性ですか」


 そう言った後、アルケーに向かって訊いた。


「アルケー、あなたもマロンと同じ考えですか?」


 アルケーは黙ってうなずいた。躊躇のないうなずき方だった。


 エピメイアはうなずくと、右手をゆっくりと見つめながら、


「……『虚影の空』しか見えぬ者たち、『世界の外側』に想像が及ばぬ者たちには、そう感じられるのでしょうね。

 いいでしょう、この『摂理の超越者』が、お前たちに『真実の月』がいかなるものか見せて差し上げましょう」


 そう言うと、いきなり強烈な魔法波動を叩きつけて来た。


 ズバウウウンッ!


 何物も地上に残ることを許さないほどの烈風と、空気すら焼き尽くすほどの高温の熱波が、僕たちに至近距離から襲い掛かった。


 やがて、爆風が巻き上げた砂塵が吹き払われ、焼け焦げた地表が露わになる。だが、エピメイアは深海のような瞳で僕たちを見据えていた。


「……エレクラの魔法だけではありませんね?『深淵の魔力』、ジン・クロウがその第一発現者だったのですか……納得しました」


 『大地の守護』に包まれた僕たちを見て……正確には僕を見て、エピメイアはそうつぶやく。そして、


「覚悟しろ、エピメイアっ!」

 バシュンッ!


 隙を突いてアルケーが空間規定魔法で攻撃を仕掛けるが、エピメイアはするりとそれをかわし、


「私の世界に来てもらいましょうか。『箱庭の風景(ロスト・ホライズン)』!」


 僕たちを『箱庭』に引きずり込んだ。


   (世界を狩ろう!その2:VSエピメイア戦 に続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

シェリーが復活しました。考えてみれば『乙女』が与えられた運命は、『伝説の英雄』が新たな世界を拓いた後に最期を遂げるのですから、あの段階での退場は違和感がありました。

左目も元に戻ったシェリー、騎士団に戻って来たスナイプことエレーナ・ライム。アルケー・クロウにマロンと役者はそろいました。

いよいよエピメイアとの戦い、そしてアルケーとの決着……で、『キャバスラ』は終わる予定ですが、最終的にどんな結果になるのか、終盤で出て来た『謎の女性魔導士』の正体も含めて、もう少し続くのかなぁ。次回もお楽しみに。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

【主な登場人物紹介】

■ドッカーノ村騎士団

♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させてきた。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』。だが、ワインとシェリーの死によって、『繋ぐ者』ではなく『破壊者』として覚醒し始めている。

♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。魔王との最終決戦で、魔王がバーボンに戻ったと思い込まされて殺されたが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』で復活している。

♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。『右鳳軍団』に先行し、ジンと合流を果たした。

♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。

♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形エランドール。ジンの魔力マナで再起動し、新たに仲間となった。

♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)28歳『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体ホムンクルスであることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。視力を失っていたが、ジンの魔力で取り戻した。

♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータだがその地位を剥奪された。現在『魔族の祖』アルケー・クロウと共にエピメイアを追っている。

■退場した仲間たち(退場順)

♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトでジンの騎士団に加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。

♡ウォーラ・ララ ジンの魔力マナで再起動した自律的魔人形エランドール。彼に献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。

♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。ジンの騎士団に所属して『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。

♡マディラ・トゥデイ 騎士団『ドラゴン・シン』事務長。金髪碧眼で美男子のような女の子。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに叩き潰された。享年20歳。

♡ソルティ・ドッグ 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。調査・探索が得意。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに握り潰された。享年21歳。

♤ブルー・ハワイ 『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。記憶力と変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。魔王親衛隊クン・バハと対峙し善戦したが、隙を衝かれて敗死した。享年25歳。

♤ウォッカ・イエスタデイ 『ドラゴン・シン』の副官兼親衛隊長。オーガの戦士長、スピリタスの息子で無口・生真面目な性格。大陸武闘大会で3連覇を果たすほどの戦士だったが、魔王親衛隊クン・バハに止めを刺しつつも力尽きる。享年21歳。

♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。ジンと永遠の友情で結ばれ、魔王親衛隊隊長ファルカロスを倒したが力尽きた。享年21歳。

♡ジンジャー・エイル 本名キュラソー・マッケンロウ。ジンの命を狙ったが許されてドッカーノ村騎士団に所属し、『PTD4・幽霊』を倒す。魔王の眷属と化したエレノアに挑み勝利するが、同じく眷属になった賢者スリングに殺された。享年21歳。

♤テキーラ・トゥモロウ 『ドラゴン・シン』団員で本名テキーラ・マッケンロウ。父はバーボンの異母兄コニャックでジンジャーは実妹。魔王親衛隊オデッシアに止めを刺した後、ジンの許に急行し、魔王の眷属・賢者スリングと相討ちになって果てた。享年24歳。

♤ダイ・アクーニン ドッカーノ村騎士団所属。賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。仲間のコア・クトーやシロヴィン・ボルドーの仇を討つため魔王と戦い善戦するが力及ばず敗死した。作戦ミスで魔王を完全復活させてしまった。享年28歳。

♤ワイン・レッド ジンの幼馴染みでエルフ族。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。実は11年前に事故死していたが、父母の依頼でエレノアが復活させていたという秘密がある。復活したスリングたちを摂理に戻すマロンの魔法で、彼も摂理に戻ってしまった。享年18歳。

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