Tournament165 The Demon King hunting:5(魔王を狩ろう!その5:ジンVS魔王)
ジンは遂に、魔王との戦いに臨むことになる。父バーボンの面影を思い起こさせる魔王の前に、ジンは苦戦を強いられる……。
【前回のあらすじ】
遂に魔王と対峙したドッカーノ村騎士団。しかし、ジンは魔王がバーボンであること、その護衛に賢者スリングとエレノアがいたことに衝撃を受ける。
ダイ・アクーニンたちが魔王と戦うが、テキーラとジンジャーはスリング、エレノアと相討ちになり、ダイは魔王を完全復活させるという失策を犯して散ってしまった。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
僕は混乱の極みにあった。
魔王が復活したことは知っていた。それによって父バーボンや母エレノア、そして伯母である賢者スリング様は、恐らく生存していないだろうことも覚悟していた。
しかし、魔王がバーボンを名乗って現れたことには驚いた。驚いたが、シェリーほど動揺しなかったのは、
(魔王は僕の精神を揺さぶるために、父さんの姿をしているだけではないか?)
そう疑っていたからだ。
相手は魔王である、勝つためならどんな手段だって取って来るだろう。その中には、『僕の父の姿で挑んで来る』という姑息な手段も含まれて当然だ。本気で戦えば、化けの皮が剥がれて本当の姿を現すに決まっている……そう思っていた。
しかし魔王の本体が、目の前に現れた父を名乗る男で間違いないのではないかと思い直したのは、その腰に佩いた剣を見た時だ。魔王が佩いていた剣は、シュバルツユニコーン族のランズロウ・ミステイルが持っていた、『運命の背反者』が与えたという魔剣だった。そして『魔王=マイティ・クロウ』を確信したのは、僕が呼びかけた時、明らかに過去のことを覚えているような反応だったからだ。
だが、それだけならいい。僕は父バーボンのことは、顔も含めてぼんやりとしか覚えていなかったからだ。だから、無理やり『目の前の魔王はマイティ・クロウとは別人だ』と思い込むこともできた。
混乱してしまったのは、かあさまが魔王の眷属を名乗って現れたからだ。
かあさまは僕が騎士団を立ち上げる前年まで一緒に過ごしていた。つい2年ほど前まで、かあさまは僕の側で僕を優しく見守ってくれていた。
かあさまは、ある日いきなりいなくなってしまったが、それでも後に賢者スナイプ様……母の妹と信じていたエレーナ・ライムから事情を聞いて、『暗黒領域』で会えることを楽しみにしていたのだ。
(どうすればいい?……いや、僕が『伝説の英雄』であるからには、たとえ魔王が父さんだろうと倒さねばならないし、かあさまだろうとそれを阻む者は排除すべきだ)
そのことは、頭では解っていた。実際、現れたのが魔王バーボンだけだったら、僕は今ごろ魔王との戦いを開始していたことだろう。
葛藤する僕を救ってくれたのは、意外にも、僕の騎士団に居ながらも今まであまり接点がなかったダイ・アクーニンだった。
彼が魔王を不倶戴天の敵とし、魔王討伐に人生を捧げていることは、賢者スナイプ様から聞いて知ってはいた。その実力が並みの魔法使いを遥かに超えていることも、それまでの彼の実績を聞けば納得したし、元木々の精霊王マロン・デヴァステータ様も折り紙を付けていた。
だから、彼が僕に代わって魔王へ挑戦した時は、正直救われた気がしたし、そのあとテキーラさんやジンジャーさんが助太刀に名乗り出るのを聞いて、
(運命かどう回るかは判らないが、今回の『魔王の降臨』には、僕の出番はないのかもしれない)
少しだけそう期待したのも嘘ではない。
けれど運命の非情さは、今まで何度も味わってきた。特に『テモフモフの遺産』たちとの戦い以降は、逆に僕は運命の女神から嫌われているんじゃないかとも思えるほどだった。
(……運命が示すところによれば、魔王を倒すのは僕の役目。だからきっと、ダイたちの戦いは最終的には無駄になるはずだ。だが、彼らの今までの生涯を無意味なものにしないため、僕はここに居なければならない)
そんな思いが、僕をその場に居続けさせた。ワインの一時退避の提案も、シェリーの『後退して』との懇願も、僕が受け付けなかったのはそういう訳だ。
目の前では、ジンジャーさんがかあさま……魔王の眷属エレノアに先制攻撃を喰らった。
呪文詠唱も術式宣言もない、いきなりの魔法攻撃にジンジャーさんは彼女らしくもなく虚を突かれた。目の前の敵が僕の母であることが、彼女の精神に影響を与えているのだろうか?
「『大地の護り』!」
僕は無意識に、ジンジャーさんを守るためシールドを付与していた。
ジンジャーさんは、それを僕の
『相手が何者であろうと気にするな』
という意思表示であることを理解したのか、こちらを振り向いて会釈すると、戦闘に専念した。
僕はただ、三人の戦いを凝視している。ダイが勝てば、僕の『魔王の降臨』に関する責任は雲散霧消する。後は『摂理の黄昏』に対応するだけだ……そうは思いながらも、そう上手くいかないだろうことは、心のどこかで判っていた。
「ジン……大丈夫? 辛くない?」
いつの間にか、シェリーが僕の腕に腕を絡めていた。僕はシェリーの心配そうな、そして悲しそうな表情を見て、小さく首を横に振り、
「……心配は要らないよ」
ただそれだけ答え、視線をまたジンジャーさんたちの方へと向けた。
どれだけの時間が過ぎたのだろう。実際は30分もしないうちに勝負はついたと思うが、長い時間が流れたように思えた。僕には何も聞こえなかったからかもしれない。僕はただ、目の前で繰り広げられる戦いを、音のない世界から見ていた。
「あっ!」
シェリーが小さく声を上げ、腕にしがみついて来る。ジンジャーさんがエレノアの魔槍に貫かれたのだ。
「……あのまま不用意にジンジャーさんに近付いたら、エレノアの負けだね」
僕が小さく言うと、
「えっ?」
シェリーは驚いたような顔で僕を見つめる。そして不意に涙を流して、僕の胸に顔をうずめて来た。
「……なぜ泣いているんだ?」
僕はシェリーの頭を撫でながら訊く。本当に、その時の僕は心が空っぽになっていたんだろう。彼女が何を悲しんで、何のために泣いているのか全く分からなかった。
そして、勝負は僕が言ったとおり、ジンジャーさんを倒したと思って近づいたエレノアが、ジンジャーさんの魔法で消滅させられた。
「ジンジャーさんっ、前へ跳べっ!!」
「えっ!?」
不意に、僕の隣でワインが驚愕の叫びを上げる。だが、ジンジャーさんはそれに即応できなかった。気が付いた時には、彼女の目の前には賢者スリングが立っていた。
「……我の妹を倒して、無事で済むと思うな?」
ジンジャーさんはスリングの魔力に捕えられた。
「ぐっ!」
「兄と二人がかりで来られたら、いかに我でも鬱陶しい。去ねっ!」
ズバウウンンッ!
「あがっ!」
「ジンジャーさんっ!」
ジンジャーさんは、賢者スリングの『終焉を呼ぶ陣風』で、粉々になって吹き飛んだ。
シェリーやワイン、そしてラムさんやアイリスさんとチャチャちゃんは、その様を茫然として見守ることしかできなかった。
「……9人目だ……」
「えっ?」
僕のつぶやきに、みんなが僕を見る。
「レイラさん、スナイプ様、ウォーラさん、ガイアさん、アントンさんとドーラさん、コアさんとシロヴィンさん、そしてジンジャーさん。僕の騎士団に所属してくれながら、僕が失った団員は9人目だ。今度は、今度は一人だって失いたくはなかったのに……」
「ジン……」
シェリーが、辛そうな顔で僕を見てそうつぶやくと、後は何も言わずに僕の胸を撫でた。
「……団員だけじゃない。ド・ヴァンさんをはじめ、『ドラゴン・シン』のかけがえのない親友を何人も、何人も失った。今度は誰も失わないつもりだったのに……」
茫然とつぶやく僕は、傍から見ても異様だったのだろう。ワインがいきなり僕の肩をつかんで揺すぶって来た。
「ジン、しっかりしろ!『魔王の降臨』にしても、『摂理の黄昏』にしても、『伝説の英雄』一人がどれだけ気張っても乗り切れないほどの事象なんだ。
誰が生き延び、誰が散っていくか、そんなことは終わってみなければ誰にも判らない。
だからみんな、精いっぱい戦ったし、現に今戦っている。それは散って行ったレイラさんはじめ団員のみんなや、ド・ヴァン君だってそうだったはずだ。
それは全員が精いっぱいやったうえで掴んだ結果だ。ジンのせいじゃないんだ!」
その時、僕の目の前で、テキーラさんがスリングにしがみつき、漆黒の魔力を噴き出し始めた。その魔力は、テキーラさんと共にスリングをじわじわと包み込んでいく。
(……テキーラさんも逝くのか。『地獄の河原』を見て以来、僕の周りからどんどん仲間がいなくなっていく……)
僕の心がズキズキと痛みだした。いや、ずっと心は痛みを訴えていたのかもしれない。それが魔王と対峙することで、表面に出て来ただけなのだろう。
(僕の心は、ずっと血を流してきたのかもしれない……)
そう思った瞬間、僕の目の前に、白髪で白い服を着て腰に太い銀のベルトを巻いた少女が現れた。
「ジン・クロウ、いよいよあなたも最期ね?」
その少女が現れた時、僕の左手は無意識に『払暁の神剣』の鞘を握る。どんなに心が空っぽでも、僕の身体は向けられる感情を映して反射的に動く。その時僕が感じ取ったものは、『殺気』と『傲慢』だった。
「……何の用だ、『運命の背反者』。わざわざ魔王と一緒に消滅しに来たか?」
僕がそう言うと、ワインはじめみんなが武器を構えた。だがエピメイアは、僕たちをさらっと見回して、皮肉を込めて言う。
「歓迎してくれて嬉しいわ。でも、私が用事があるのはジン・クロウ、あなただけよ。他の人は、悪いけれど……」
パアァンッ!
そう言いかけたエピメイアの額に、ぽつりと小さな穴が開く。エピメイアは能面のような表情になり、狙撃魔杖を構えるチャチャちゃんに視線を向けた。
「だ、団長さんに危害を加える奴は許さないっ!」
パンッ、パパンッ、パァーンッ!
チャチャちゃんは物凄い速さで5発の魔弾を撃ち切る。エピメイアの額には3つの穴が開いていた。そのうち2つは少し大きめだったから、ダブルタップしたのだろう。
「……腕はいいわね……」
エピメイアがそうつぶやくと、遊底を引いて弾倉に5発の魔弾を装填しようとしていたチャチャちゃんの手が止まる。彼女は手を動かそうとしているようだが、何か見えない力で抑えつけられているようだった。
「俺に用事とは?」
僕がエピメイアに訊くと、彼女は薄く笑いながら、楽しそうに訊いてきた。
「あなたを捨てたバーボンと、あなたを置いていなくなったエレノアに再会した感想を聞かせてもらえないかしら?」
それを聞いて、シェリーが激怒した。
「なんてこと言うの、この冷血女! こんなのが『運命の供与者』とか言われて崇められていたなんて信じられない!」
そう言いながら両腰の短剣に手を伸ばすシェリーを、エピメイアは冷たい目で一瞥し、
「ふん、お前みたいな『乙女』には、これ以上ないくらい惨たらしく、苦しい最期を与えてあげるわ。それまでおとなしくしていなさい」
そう言ってシェリーの身体を動かなくした。
「……エレノアはうちの団員が始末した。バーボンもダイ・アクーニンが始末するだろう。
そもそも、二人に会えるとは思っていなかった。魔王に倒されたと覚悟していたからな。
そういうことで、いなくなった存在について今さら感想も何もないな」
僕の声は、エピメイアをして驚かせるほど冷たかった。
だって仕方ない。その時僕は、エピメイアをすぐさま叩き斬りたいほどの殺意が沸いていたのだから。その理由は、父や母のことを訊かれたからではない、シェリーに対して『これ以上ないくらい惨たらしく、苦しい最期を与え』ると言ったからだった。
僕の気持ちを読んだのか、エピメイアは少し不機嫌な声で言った。
「私とすぐにでも勝負したいところでしょうけれど、物事には順序ってものがあってね?
まずは魔王とその眷属にあなたの相手をしてもらうわ。私とのお遊びは、その後だからお楽しみにね?」
「俺がさっき言ったことが聞こえなかったのか? エレノアやスリングはすでに消滅しているぞ」
僕が言うと、エピメイアは僕を憐れむような眼で見て、『魔王の心臓』の方へ視線を向ける。僕がつられてそちらを見ると、物凄い量の漆黒の魔力が天に沖するのが見えた。
「……魔王の完全復活ね。では、ジン・クロウ、父や母の手にかかって果てるもよし。父母をその手で処断するもよし。健闘を祈るわ」
そう言うと、清冽な青い光を放って消えた。
「あいつ、今度会ったら絶対に許さない!」
「あたしもです! シェリーお姉さま、絶対あいつを仕留めましょう!」
やっと動けるようになったシェリーとチャチャちゃんは、そう言いながら弓と狙撃魔杖を準備する。エピメイアの別れ際の言葉で、戦闘は避けられないと感じたのだろう。
「ジン、いったんここを退いた方がよかったと今でも思うが、事ここに至っては一戦交えるしかない。だがくれぐれも言っておく。平常心は忘れないでくれよ」
ワインがそう言って槍の鞘を払うと、
「エピメイアの奴め、まさか二人を蘇らせるつもりじゃないだろうな。自分が四神の上位存在だからって、そんなチートが許されると思っているのか」
ラムさんが長剣を抜き放ってそう言う。彼女もかなり怒っているのだろう、赤い髪は帯電して膨らみ、周囲にパシッ、パシッと放電していた。
「……すごい魔力ですね。データにある記録と照合すると、ダントツ1位です。
それに、魔王の側に二つの魔力を感じますが、これは間違いなく先ほどの眷属二人です」
槍を背中から手に取りながら、アイリスさんが言う。自律的魔人形である彼女には、すでに相手の力量が手に取るように分かっているようだ。
「……さて、ここからが本番か。みんな、無理はするな」
僕がそう言って『払暁の神剣』を抜き放った時、思いもよらぬ味方が駆けつけてくれたのだった。
★ ★ ★ ★ ★
「ジン様、ここにエピメイアが来ませんでしたか!?」
やって来てくれたのは、翠の瞳と新緑のような髪を持つ女性、元木々の精霊王マロン・デヴァステータ様だった。だが、僕にはすぐにそれと分からなかった。なぜなら、12・3歳ほどだった見た目が、僕たちと同じくらいになっていたからだ。
「え、と……あなたは、まさかマロン様?」
僕がそう訊くと、マロン様は少し頬を膨らませて、
「え? わたくしが誰だかすぐに判らなかったんですか? ジン様ってそんなに薄情なお方だったなんてちょっとショックです」
そう可愛らしく抗議してくる。
「拗ねるなマロン。魔力が戻って元の姿になったんだ。前のような少女からだいぶ見た目が変わっている。俺たちは急いでいるんだ、ジン・クロウとじゃれている暇はないぞ」
そう言いながら姿を現したのは、白髪で緋色の眼を持つ男だった。忘れもしない、アルケー・クロウだ。僕は思わず魔力を開放してしまう。
「おっと、早まるなジン・クロウ。今はお前と剣を交えるつもりはないぞ。俺たちはエピメイアを追って来たんだ。お前とはあいつと決着を付けた後、ゆっくりと勝負してやる。
だから魔王ずれに負けるんじゃないぞ」
意外にもアルケーは、戦意がないことを示すように両手を広げて僕に見せつつ言う。その言葉をマロン様が補足した。
「エピメイアがわたくしを狙っていたため、アルケーが匿ってくれたんです。そのことでエピメイアとは完全に決裂しましたので、二人でエピメイアを追跡しています。
どうやら彼女は、『摂理の黄昏』のために『摂理の調律者』様との戦いを目論んでいるようです。エピメイアがプロノイア様を狙って動き出したら、四神もエピメイア討伐に動き出すでしょう。そうなれば世界は戦火に包まれてしまいます。それは阻止せねばなりません」
「確かに、ついさっきまでエピメイアはここに居た。俺に魔王との戦いの後、勝負してやると言っていた。精霊王マロン、安心しろ。俺が魔王を倒した後、エピメイアも始末してやる」
僕がそう言うと、マロン様は頼もし気に僕を見てうなずき、近付いて来る魔王たちを一瞥するとため息と共に首を緩く振って言った。
「はぁ、何度も蘇らせられる方も災難ですね。しかし、そこまでしてジン様の精神を揺さぶらねばならないほどエピメイアも追い詰められているってことでしょうか?
ジン様、魔王はともかく、左右の二人はすでに摂理の住人であるべき存在。二人の処遇はわたくしにお任せください」
そう言って僕がうなずくのを見ると、マロン様は魔王たちに正対して胸の前で手を組み、目をつぶって呪文を唱え始めた。
「花が散るのは種のため、すでに眠りし生命なら、『散り逝く詠』を口ずさみ、命よ芽生えの時を待て……」
それを聞いた時、ワインが
「えっ? まさか」
小さく声を上げた。
マロンさんの呪文詠唱は続く。
「……『時待ちの詩』を聞いたなら、息吹を感じて空を目指す、『芽生えの歌』を懐かしめ。
やがて『花萌える唱』そのままに、萌え盛る今を高らかに、笑いさざめく時が来る。
そしてまた来る秋の日は、豊穣のときを感謝し踊れ、『実り多き謳』を聞きながら。
巡り巡りし時を知り、生命は摂理にまた還る。巡り巡りし時は今、眠るべきを眠らざる、命を側に迎え入れん……生命を預けし摂理の二柱の聖名において、マロン・デヴァステータが命じます。『四季循環の頌歌』よ、眠るべきものを眠らせよ!」
マロン様が魔力を開放し術式を展開すると、目に見える範囲の大地がパッと翠の光に覆われ、そして静かに地面から淡い緑色の光の玉がいくつもいくつも現れて、空に昇って消えていった。
「では、わたくしたちはエピメイアを追いかけます。魔王を倒したら『約束の地』から東に進んでください。『伝説が生まれる地』でお待ちしています」
マロン様は輝くような笑顔でそう言うと、アルケーと共に転移魔法陣でエピメイアを追跡して行った。
「ご主人様、魔王の隣にいた二人の魔力が消えています!」
アイリスさんが、嬉しそうにそう報告してくる。ということは……
「木々の精霊王は、癒しの力を持つ豊穣神であるとともに、生命力を侵奪する死神の役割も併せ持っていたんだ。さっきの術式は、摂理に戻らない存在を、強制的に摂理の中で眠りに就かせるものなんだ……」
博識のワインがそう説明してくれる。だが、彼の顔色はいつになく真っ白だった。『真っ青』ではない、本当に『真っ白』だったのだ。
「ワイン、大丈夫か? 気分が悪いなら戦闘圏外で休んでいてくれ。シェリーを護衛につけようか?」
僕が言うと、ワインは何か諦めたような表情で首を横に振り、
「……気にするな。ちょっと僕がミスっただけだ。まさかマロン様がここであの術式を使うとは思っていなかったからね」
そう言うと、パッと水色の魔力を一瞬だけ燃え立たせた。
僕はそんなワインに、何か胸騒ぎを覚えたが、
「団長、魔王がそこまでやって来ました!」
「戦闘態勢を整えますっ!」
ラムさんとアイリスさんの声に促されて、僕たちは二人を両翼に魔王に正対した。
「貴様には元木々の精霊王がついていることを忘れていた。スリングもエレノアも摂理に還ってしまったが、本来は眠っているべきだからな。少し安心している」
魔王が最初に言った言葉がこれだった。ひょっとしたらマロン様の魔法の影響で、自分が『伝説の英雄』と呼ばれていたことや、僕のことも思い出しかけているのかもしれない。
だが、身にまとった雰囲気は、ダイと戦う前よりもさらに猛々しいものになっている。魔力も段違いに増え、眼光も炯炯として、視線だけで山を突き崩せそうだった。
「ダイ・アクーニンは返り討ちにあったみたいだな」
僕が言うと、魔王は居住まいを正して、
「うむ、想定していたより強かったな。アルケー様直々に魔法を教わったと言っていた。感覚操作の魔法はかなりの精度を持っていた。危うく俺も騙されかけたほどだ。
ダイが狙うべきものを間違えなければ、ひょっとしたら俺が負けていたかもしれないな。何にせよ、いい敵だったし、戦士らしい最期だったと思っている」
静かに、真面目な顔でそう言った。
(この、戦士の心は、魔王が元から持っているものなのか、それとも父上の性格が反映しているものなのか? いずれにしても、『魔王』といいつつも形振り構わないような勝ち方は望まないようだな……)
僕はそう思いつつ、ゆっくりと『払暁の神剣』を構える。それを見て魔王は満足そうにうなずき、
「うん、ちゃんと剣はお前を信頼しているようだな。それでこそ『伝説の英雄』だ。俺が死力を尽くして戦う相手に相応しいと言えるな」
魔王も魔剣を抜いた。どす黒かった魔力が、なぜか鮮やかな若葉色になっている。
「どっちから掛かる? お前から掛かって来ていいぞ、ジン」
まるで剣の稽古でもしているように、ぜんぜん気負った様子もなく魔王がそう言ってくる。僕は一瞬、今『伝説の英雄』として魔王と向かい合っているのではなく、ドッカーノ村の自宅で父上に剣を教わっているんではないかという錯覚に襲われた。
僕が黙っていると魔王はさらに訊いて来る。
「最初はそなたの剣技を見てみたい。お互い攻撃のための魔力を使わず、剣だけで勝負しようではないか。シールドは使っていいことにするが、どうだ、ジン?」
僕がうなずくと、魔王は人のいい笑顔で嬉しそうに言った。
「よし、それなら1回戦は剣技での勝負だ。そこのユニコーン族の戦士、悪いが審判をしてくれるか?」
「ふぇっ!? わ、私がか? 審判をだと? 魔王、貴様正気か!?」
ラムさんは、突然審判を依頼されて慌てる。魔王と血みどろの戦いを覚悟していた僕たちにとって、これは本当に想定外の出来事だった。
「俺が信用できないか? こんなことで勝っても卑怯者の名を残すだけだ。戦士の誇りにかけて約束は守る」
魔王があんまり真剣に言うものだから、さしものラムさんもとうとう首を縦に振った。
「……では、剣での勝負を開始する。どちらも攻撃には魔法を使用しないこと。剣を主体に戦うこと。戦士の決め事以外のルールは以上だ。
では、始めっ!」
ラムさんの声とともに、僕と魔王の『剣技勝負』が始まった。
魔王は、『始め』の合図と共に、一瞬で僕の目の前まで間合いを詰めて、嵐のような横殴りの斬撃を放つ。
ビュンッ! ガツッ!
シールドが間に合わなかった僕は、『払暁の神剣』で魔剣を受け止める。なお、僕も魔王の方も、剣の魔力は遮断していた。だから魔力による斬撃波などは発生しないので、通常の『剣の間合い』だけを気にすればよい。
「ふむ、お前には幼い頃に基礎だけ教えたが、自分でもたゆまず修練を積んだようだな。しっかりとした『護りの剣』だ。やはり、お前が魔族の運命を握っていたか……」
押し合う剣の向こう側で、魔王はそう言って僕を真っ直ぐ見詰めてくる。その翠色の瞳を見て、僕は幼い頃の記憶を呼び起こした。
『父さん、どうしていきなり剣を教えてくれるの? 今まではどれだけ頼んでも木剣すら握らせてくれなかったのに』
……あれは、僕が7歳の時だ。父がいきなり
『ジン、お前に剣を教える。ついて来るがいい』
そう言って、セー・セラギ川のほとりで剣の基礎……構え方、手入れの仕方、攻撃と防御の代表的な型……を教えてくれたのは。
その時の父は、いつもに似合わず厳しい顔で僕に稽古を付けた。そして、それまで僕は、母から
『お父様は、名の知られた戦士だったのですよ。今は訳あって剣を手にすることはありませんが、いつか時が来たら、あなたにも剣を教えてくれるでしょうね』
そう聞かされてはいたが、いつでも優しい表情をしていた父が、実は名のある戦士だっただなんて信じてはいなかった。
でも、この稽古で僕は、父の隠された一面を見た思いがした。
『……やはりお前は筋がいい。クロウ一族の血のせいかもな。お前に任せねばならないのは不本意だが、それもまた運命って奴かもな……』
稽古を始めて1週間ほど経った日、父はそうつぶやいて僕に笑いかけた。そして次の日、僕が目を覚ました時には、父は家からいなくなっていたのだ。
父が最後につぶやいた言葉の意味を、その時の僕は理解できなかったが、今なら解る。きっと父は、自分がやり残してきたことを僕に託すと同時に、その運命に対して愚痴を言いたかったのだろう。あるいは運命に対する呪詛だったかもしれない。
「……魔族の掟に従い、おまえは俺を倒さねばならない。だがジン、それで終わりじゃないんだ。俺はそんな運命の選択をお前にさせたくはなかった」
剣の向こうの魔王の顔が、悲しそうに歪む。やはり、魔王はマイティ・クロウだった自分を、そして息子である僕のことを思い出しているのだろう。
「……戦うしか道はないのか? お互いの運命は視えているのに? 何をすべきかも判っているのに?」
僕が訊くと、魔王はうなずいた。
「摂理が決めたことなんだ。お前は全力で俺を倒さねばならない。さもないと、『虚空』はいつまで経っても『真実の月』を『虚影の空』に昇らせない……やっ!」
「くっ!?」
魔王はそう言いながら、僕を突き飛ばすようにして間合いを開けた。
「さてジン・ライム。これでお前は俺に挑むに相応しい戦士だと確認できた。これからは真の殺し合いだ。お互いが護るべきものを賭けての勝負になる。
俺も手段は選ばないから、お前も全力で掛かってこい」
魔王はそう言うと、瞳を緋色に変え、全身から魔力を噴き出した。
★ ★ ★ ★ ★
魔王の魔力は、今まで僕が対峙したどんな相手よりも猛々しく、禍々しかった。さっきまでの若葉色の魔力は影を潜め、漆黒の魔力を噴き出す様を見たら、並みの戦士や騎士ならそれだけで戦意を喪失してしまうだろう。
「ラムさん、下がれっ!」
「……! わ、分かりました!」
僕は、さっきまで僕と魔王の『剣での勝負』を審判役として見守っていたラムさんが茫然として突っ立っているのを見て、鋭く後退を指示する。魔王の圧に押されて固まっていたラムさんだが、ハッと我に返ってすぐさま後退したのはさすがと言っていい。
僕は、チラリと後ろを見る。ラムさんが、同じく魔力に気圧されて動けないシェリーやチャチャちゃんを、アイリスさんと共に下がらせている。
だが、ワインだけは二人の説得に耳を貸さず、青白い顔のままそこに突っ立っていた。槍は鞘を払っているが、身体の右側に沿わせて立てている。
「ワイン、君も下がれっ!」
僕が叫ぶと、ワインはうっすらと笑みを浮かべて首を振り、
「ボクの役目が来るまで、ボクはここに居るよ。気にせず魔王にかかりたまえ」
ワインの声と表情には、梃子でも動かないといった響きが籠っていた。こうなったワインをどうにかできるのはワイン自身だけだ……そのことを、僕は長い彼との付き合いで知っている。
(ワインのことだ、賢者スナイプ様か賢者マーリン様に、何かの役割を託されているのだろう。側にはシェリーたちもいるし、大丈夫だ)
僕は、何か心に引っ掛かるものを覚えたが、無理やり自分を安心させる。これから相手をするのは『本気モード』の魔王だ。集中を欠けば、そこで勝負は決まってしまう。
僕はワインに一度うなずいて見せてから、意識を魔王に集中する。『伝説の英雄』に定められた運命に従い、『魔王の降臨』を止める戦いを始めるために。
「『大地の守り』!」
僕は土の精霊覇王エレクラ様から許可されたシールドを展開する。だが、魔王の魔力は僕の想定をはるかに超えていた。
「ふん、エレクラのシールドか。子ども騙しだな」
魔王は冷たく笑うと、魔剣で僕に斬り付けてくる。
ジャンッ!
魔王の斬撃は速くて重かった。だが、僕はそんな鋭く重厚な攻撃を弾き続けた。
ジャン、シャランッ、パンッ、チィィンッ!
僕の剣は『守りの剣』だとよく言われる。それは相手と争うことを好まない僕の性格から来ているところも大きかったが、どっちかって言うと父から『剣は自分の身を守るため、大切なものを護るためのものだ』と聞かされていたため、練習では相手の剣を弾くことを意識していたからかもしれない。
だけど、もっと別の理由もあって……。
「……よく守るな。だが、俺はそんな意味で『剣は自分の身を守るもの』と言ったわけじゃないぞ!」
ジャンッ!
「むっ!?」
僕は魔王の斬撃を弾いたが、魔王は剣を滑らせるように動かし、逆に僕の剣を弾き飛ばす。僕の身体は魔王に対して完全に無防備な状態になってしまった。
「お前には、守るべきものは何もないのか!?」
ジャッ、パアンッ!
魔王の剣が、僕のシールドを一撃でぶち割った。
「エレクラ様のシールドが!?」
僕は瞬間的に後ろへと跳び下がる。追ってきた魔王の斬撃を、『払暁の神剣』で辛くも受け止めた……はずだった。
ジャリィィィンッ! バスンッ!
「うぐっ!」
目の前で甲高い音と共に『払暁の神剣』が二つに折れ、僕の身体に鋭い痛みが走った。
「ジン!」「団長!」「団長さんっ!」「ご主人様っ!」
シェリー、ラムさん、チャチャちゃん、アイリスさんの悲鳴が聞こえたが、僕は歯を食いしばって何とか倒れるのだけは我慢した。胸が、お腹が、酷く熱い……。
(『払暁の神剣』が折れた……それにたった一撃で、僕のシールドを……)
僕にとってはこれほど衝撃的なことはなかった。だが、どんなに大きなショックを受けたとしても、今は戦闘中だ。決着が付くまで諦めないのが戦士の務めだ。
「……ほ、『大地の慈愛』……」
僕は治癒魔法を発動する。だがそこに、魔王の二の太刀が迫っていた。
「くそっ!」
ブシュッ!
僕は身体をねじるようにして斬撃をかわす。傷口は引きつって鋭い痛みを起こし、鮮血が噴き出して僕の服を濡らしていくが、シールドがない今、あと一撃でも受けたら致命傷になる。
(……『大地の慈愛』の効きが遅い……どうしたんだろう?)
『大地の慈愛』は速効魔法だ。本来ならかけた次の瞬間には傷口は塞がるはずだ。だが、今回に限ってその効果が発現するのが遅い。まるで何かに邪魔されているようだ。
「……お前には覚悟ができていないようだな。だから何を護るべきかが分かっていない。あの、ダイとかいう若造と同じだ」
血を失いすぎて、ふらふらとし始めた僕を、憐れむような眼で見て魔王が言う。
「……失わねば解らぬか。俺と一緒だな。だが、お前はもう『英雄の天命』の重さを理解する必要はない。理解する時間がもう無くなるからな」
魔王はそう言うと、緋色の眼を怪しく輝かせ始める。僕の視線は魔王に眼光に捉えられ、身体を動かすことができなくなってしまった。
「……動か、ない……?」
僕のつぶやきに、魔王は冷たい声で答えた。
「英雄はな、自らの命を大事にするが、それ以上に護りたいものを大事にする。それがないお前は『伝説の英雄』になり切れなかった、それだけだ。
さらば、ジン・ライム。さらばだ、我が息子よ」
魔王はそう言って、剣を僕に振り下ろした。悲しみに満ちた瞳だった。
その瞳を見ながら、僕はぼうっとしてきた意識で考えていた。
(……僕が、護りたいもの……)
「隙を付けるのはほんの一瞬だっ!」
ズバンッ!
その時、水色の魔力が走り、魔王の右手首を剣ごと斬り飛ばした。
「……来たか、『運命を紡ぐ者』。だが、『繋ぐ者』が目覚めていない今出て来ても無駄だ、犬死にになるぞ?」
魔王はそう言うと、地面に転がった右手に右腕を伸ばす。切断面からあふれ出る魔力は、右手首を包み込み、あっという間に腕につなげてしまう。
「……ボクには時間がないんでね?『運命を紡ぐ者』とかいう役割は、他の人たちに任せるさ」
ワインはそう魔王に言うと、再び身体を水の魔力で覆い、
「ジン、キミの旅を最後まで見届けたかったが、どうやらボクの役目はここで終わりらしい。詳しいことは賢者スナイプ様……エレーナさんに聞いてくれ」
そう言うと、魔王に突き掛って行った。
「ワインっ!? ぐっ!」
ワインを追おうとした僕は、鋭い痛みで声を上げる。そこに、シェリーたちが駆け寄って来た。
「ジン、ちょっと下がって。ここはアタシとワインで何とかするから。ラム、ジンをお願い。アイリスさん、ジンの治療を!
チャチャちゃんは、下がってアタシとワインを援護して!」
シェリーが副団長として命令を下す。ラムさんはその命令に従って急いで退き、
「分かった。副団長も無茶はするな。アイリス、手伝ってくれ!」
「分かりました。ご主人様、ちょっと失礼いたします」
アイリスさんも、僕を抱え上げて、急いで50ヤードほど後方の岩場の後ろに退いた。
「……魔王の剣には特殊な魔力が込められています。この魔力が、ご主人様の治癒魔法の効きを遅らせています。見たところ、魔族の魔力にとても似ていますので、魔族の術式に拡散魔法があれば、それで影響を除去できると思います」
アイリスさんは、僕をここに連れてくる間に魔力を解析していたのだろう。僕を地面に下ろすとすぐに、解析結果を教えてくれた。
「……魔族の魔力……分かった、やってみよう」
僕はそう言うと、自身をシールドで包んで、その中で魔族の術式を起動した。
「『終焉の輪廻』っ!」
「痛くしないからねっ!(意味深)」
ズバンッ!
ワインの『海嘯の一閃』が炸裂する。
「子ども騙しだな」
バンッ!
魔王は左手を伸ばし、ワインの奥義を難なく受け止める。
「行けぇーっ!『拡散の陣風』っ!」
ワインの一撃に刹那の時間遅れて、シェリーの拡散魔法が魔王を捉える。そしてシェリーは引き続き、火焔魔法を込めた矢を魔王に叩き込んだ。
「ワイン、お願いっ!『烈火の突風』っ!」
ドシュンッ!
「任せろり!『海嘯の一閃』っ!」
ドズバアァンッ!
「うむっ!?」
ワインとシェリーの連携攻撃に、魔王は少しよろめいて呻き声を上げる。水魔法への耐性を下げた後の蒸発特効を込めたワインの奥義は、魔王にしばし息を整えねばならないほどのダメージを与えていた。
「今よ! 追い込んでやるわ!」
勢いに乗ったシェリーは、次から次へと『烈火の突風』を魔王に叩き込む。だが、ワインががっくりと膝をついているのを見て、彼女は驚いて声をかけた。
「どうしたのワイン!? 具合でも悪いの?」
声をかけながらも、シェリーの手は止まらない。相変わらず『烈火の突風』と『拡散の陣風』を交互に叩き込み続けている。
ワインは、そんなシェリーに弱々しい笑みを見せて、
「残念だけど、ボクはここでお別れだ。まさかマロン様が『四季循環の頌歌』を使われるとはね……マズったよ」
そう言う。
「何バカなこと言ってんの!? 早く下がってジンと一緒に休んで!」
シェリーがそう言うと、ワインは首を横に振った。
「シェリーちゃん、ジンの父上がいなくなった時、ボクらも子ども心に『ジンのためにお父さんを探してあげよう』と話したことを覚えているかい?」
突然の昔話に、シェリーは少し混乱して、つい強い口調でワインに注意する。
「ワイン、戦闘中に昔話は止して!」
だが、ワインはそれに構わず話し続けた。
「ボクたちもあっちこっちを探し回ったねぇ? それでボクが数日いなくなったこともあっただろう?」
「だから! 今はそんな昔話を……」
シェリーは、怒った顔をワインに向けたが、そこで声が止まる。ワインの身体が翠の光を放って薄れていきつつあったからだ。
「……ワイン、どういうこと? 何その光? それになんでアンタ、影が薄くなってんのよ?」
シェリーは魔王を攻撃することも忘れて、ワインに駆け寄る。ワインは諦めの境地にいるような笑いを浮かべて、自分の秘密をシェリーに話した。
「あの時、ボクは誤ってカーミガイル山の崖から落ちて死んだんだ。けれど父上と母上が、ボクの蘇生をエレノア様に願って、ボクは死体錬成によって蘇った。
だからボクはスナイプ様に特別な関心を寄せていただいていたんだ。スナイプ様も人工生命体だったから」
シェリーは衝撃のあまり卒倒しそうになる。幼馴染3人組として長年同じ時を過ごしたワイン、その彼が実は10年以上も前に死んでいたなんて嘘だと思いたいが、現に目の前で消えかけているワインを見ると、シェリーはそれが真実だと信じざるを得なかった。
「……イヤだ。アタシはジンも大事だけど、ワインだって大事な幼馴染なんだ。なんで、なんで今さらそんなこと言うの?」
震える声で言うシェリーに、ワインは言い聞かせるように優しい顔で言った。
「マロン様の『四季循環の頌歌』によって、生命力のつなぎ止めの術式が解除されてしまったんだ。マロン様だって悪気があったわけじゃないから恨みはしない、ボクが呪文を聞いた瞬間にどこかに転移すればよかったんだ。
シェリーちゃん、最後まで付き合えなかったことをジンに謝っておいてくれ。それと、これを……」
そう言いながらワインは懐から小さな瓶を取り出して、シェリーに渡しながら言った。
「それは賢者マーリン様から教わった秘薬『諸刃の韻律』だ。何かの役に立つだろう。チャチャちゃんに持たせておいてくれないか? 彼女にはそれの使い方を教えておいたから」
「……分かった」
シェリーが小瓶を受け取ると、ワインはすがすがしい顔で笑った。
「一生って短いって聞くが、本当だね。でも、ボクはキミたちに出会えて、キミたちとこうして旅ができて幸せだったよ。シェリーちゃん、ジンと幸せに暮らしてくれ……」
「ワインっ!」
シェリーが叫んだ時、ワインは光のチリになって天へと昇って行った。
★ ★ ★ ★ ★
僕は、アイリスさんの助言に従って、魔族の魔法で魔王の魔力を吹き飛ばした。その途端、『大地の慈愛』によって僕は完全に治癒した。
「……シェリーとワインが戦っている。魔王は僕しか倒せないんだ、戦闘に復帰する」
僕はそう言って立ち上がったが、なにしろ血を失いすぎていた。
「団長! まだ戦闘復帰は無理です! 剣も失ったんですよ!? 今戦うのは無謀です!」
「団長さん、あたしたちでシェリーお姉さまたちを援護していますから、もうしばらくだけ身体を休めてください!」
「……ご主人様のバイタルは56パーセントまで下がっています。せめてバイタルが85パーセントまで回復した後の戦闘参加を推奨いたします。推奨レベルまでの回復に要する時間は12分ほど、完全回復までは48分程度だと推定いたします」
立ち上がってよろけた僕を、ラムさんとアイリスさんが支えてそう言う。確かに、この状態で魔王の相手ができるはずはない……そうは思うが、僕はシェリー以上にワインのことが気にかかっていた。
「とにかく、団長はここで少なくともあと15分は休んでいてください。私がチャチャと一緒にシェリーたちを援護します。アイリス、団長の看護と護衛を頼む!」
「お任せください!」
黙りこくってしまった僕を見て、ラムさんがそう決断を下す。そしてラムさんとチャチャちゃんは、シェリーたちの所へ一目散に駆けて行った。
だがその時、アイリスさんがつぶやいた一言が、僕の運命を変えたと言えるだろう。
「……ワインさんの魔力が?」
僕の耳はその言葉を聞き逃さなかった。
「アイリスさん、ワインの魔力がどうした?」
するとアイリスさんは、口を手で押さえて『しまった』という顔をする。それを見て、僕は魔王と戦闘に入る前から感じていた悪い予感が当たってしまったと悟った。
僕は鋭い目でアイリスさんを見て訊く。
「アイリスさん、ワインが死んだんだね? 正直に答えてくれ」
アイリスさんは、何かを考えていたが、うなだれると答えた。
「ワインさまの魔力を感じられなくなったのは確かです。ただ、死んだときのようにいきなり消えるのではなく、燃え尽きるような消え方でしたので、ワインさまが死んだのかどうかまでは断言できません」
「……転移した、とかとも違うんだね?」
もしそうなら、ワイン生存の可能性は高くなる。重傷を負ったため、『ドラゴン・シン』の物資集積所まで下がったのかもしれない。ド・ヴァンさんたち幹部団員は全員戦死したと言っても、あそこにはまだ後方幕僚としてメアリー・ブラッドレイさんがいるはずだ。
「転移魔法陣発動の魔力は感じませんでしたが、うちが捉えそこなったのかもしれません。ワインさまが後方に下がった可能性はあります」
それがアイリスさんの答えだった。
アイリスさんは、自律的魔人形といって、魔法博士アイザック・テモフモフが作り上げた、魔力を動力とする機械だ。索敵・戦闘に特化した性能を持っている。高度な魔力や生命力を探知する装置を搭載し、その性能は個人単位で魔力を特定するほどだ。
そんな彼女が、転移魔法陣ほどの魔力を捉えきれないはずはない。恐らく、ワインはここに存在しなくなったのだろう。
「……僕も出る」
どんな経緯であれ、ワインがいなくなったのなら、僕はその仇を取らねばならない。じっとしている場合ではなかった。
「ご主人様、せめてあと5分ほどここに留まることを推奨いたしますが……」
心配顔のアイリスさんに、僕は薄く笑って答えた。
「……ワインは僕の幼馴染で、親友で、ドッカーノ村騎士団を立ち上げる際の功労者だ。
彼が魔王のせいでいなくなったのなら、僕は騎士として彼の仇を取らねばならない。アイリスさん、援護をお願いするよ」
シェリーたちの援護のために岩陰を飛び出したラムたちだったが、すぐに異変に気付いた。向こうでは魔王が片膝をついて剣に取りすがっているのだが、シェリーはそれを攻撃することもせず、ただぼんやりと突っ立っているだけだったのだ。
「……シェリーはなぜ攻撃しない? それにワインはどこに行ったんだ?」
ラムはそうつぶやき、『ワインの戦死』という最悪の事態を想像する。だが、ワインの遺体らしきものはどこにも見つからない。
(仮に、遺体すら残さぬほどの攻撃でワインが戦死したのなら、それなりの魔力を感じるはずだし、この辺りももっと悲惨な状態になっているはずだ……としたら、何があった?)
「シェリーお姉さまっ!」
チャチャがシェリーに駆け寄って、その身体を揺さぶる。ボーっとしていたシェリーは、それでハッと我に返った。
「あ、チャチャちゃん」
「どうしたんですか、戦闘中にボーッとするなんてお姉さまらしくありません。それにワインお兄ちゃんはどうしたんですか? まさか、戦死?」
チャチャがそう言うと、シェリーは悲し気に顔を歪めたが、激しく首を振った。
「そんなことない! ワインは戦死したんじゃない! ただいなくなっただけなの」
「お、お姉さま?……落ち着いてください」
「シェリー、下がるぞ!」
そこにラムが駆け寄って来て、二人に後退を促す。戸惑いの表情を浮かべるチャチャと、取り乱しているシェリーを見て、ラムはきっぱりと言った。
「ワインのことは後だ。とにかく下がって団長を守るんだ!」
「それは無理だな。お前たちはここで摂理に還ってもらう!」
ラムの声を遮るように、ブリザードのような荒々しく冷たい声が轟く。魔王バーボンはシェリーの攻撃が途切れているうちにダメージから回復し、再び漆黒の魔力をまとって立ち上がっていた。
「……くっ! さすがは魔王、恐るべき魔力だ。だが、父上たちはマイティ・クロウ様と共に一度この魔力と戦っているのだ。私だって……」
ラムがシェリーとチャチャを庇うように、長剣を構えて前に出る。額の白い角は薄く白い光を放ち、赤い髪は帯電して膨らみ、周囲に空電を放っている。
「ユニコーン族か……。いいことを教えてやろう、『勇士の軍団』は我が魔族の軍によって壊滅したぞ。オーガ侯国のスピリタスも、ユニコーン族のシールも、冷たい骸を野に曝して居るわ」
魔王が嘲るような笑みを浮かべてそう言った瞬間、
「紫電連撃っ!」
ズガガガガっ!
ラムの目にも止まらぬ連撃が炸裂した。空電は大気を斬り裂き、魔王の四方八方から長剣の斬撃が飛んだ。
「……うむ、『ステルス・ウォーリアー』の名は伊達ではないな。確かに速く、正確な攻撃だった。普通の魔族では勝てないのもうなずける」
……だが、雷と剣の嵐のような攻撃を、魔王はあっさりと受けきった。かすり傷一つ受けず、息一つ乱していない。
「……ほざけっ! 父シールやスピリタス侯、そして軍団の勇士たちの無念、このラム・レーズンが晴らす!『灼熱の鳳翼』っ!」
ドウンッ!
ラムは、パッと炎を燃え立たせると、炎をまとわせた長剣を振り抜く。炎は翼を広げた鳳のように、魔王に向かって飛んで行った。
「……ムダだと言っている」
バシュンッ!
魔王は左手を上げ、ラムの『灼熱の鳳翼』を消滅させた。
「くそっ、私の『紫電連撃』も、『灼熱の鳳翼』も効かないだと?」
歯噛みするラムに、魔王は静かに言った。
「お前には用はない。俺はそっちの弓遣いに用があるんだ」
そう言うと、シェリーに向かって優しい声で呼びかけた。
「久しぶりだな、シェリー嬢ちゃん」
私は、『紫電連撃』や『灼熱の鳳翼』という必殺技をいとも容易く破られて、自分の無力さを感じてはいたが、目の前に立ちふさがる魔王にどうにか一矢報いたいと考えていた。
目の前にいるのは、最早、私が愛するジン・ライム様のお父上ではない。21年前に『伝説の英雄』として『魔王の降臨』から両大陸を救ったお方ではない。父シール・レーズンやオーガ侯を倒し、両大陸に混沌と悪夢をまき散らす、魔王だ。
(こうなったら、シェリーたちと力を合わせて、ジン様が回復するまでの時間を稼ぐしかない。ジン様が戦闘に復帰されたら、一緒に魔王を倒す!)
自分が情けなかった。こんな時のために、ジン様の力になれない自分の未熟さと非力さが悔しかった。だが、現実問題として、こいつを地獄に叩き落す方法はそれしかない。
「シェリー、チャチャ、一緒に魔王を抑えよう。アイリスの話では、あと10分も抑えていればジン様は戦闘に参加できるようになる」
私がそう言った時、シェリーはチャチャを差し招き、何かを手渡す。ひょっとしたらワインの形見かもしれないと思ったが、今はワインのことを偲んで涙にくれる時ではない。
私が長剣を握り直し、魔王に視線を向けた時、
「久しぶりだな、シェリー嬢ちゃん」
魔王がシェリーにそう呼び掛けた。魔王の風貌は優しいものに変わり、声すら暖かな春の風を思わせるのんびりしたものになっている。これがバーボン・クロウ、つまりジン様のお父上の素だとしたら、確かにジン様によく似ていた。
「バーボンおじさま!? アタシを思い出してくれたんですか?」
シェリーが弓から矢を外してそう叫ぶ。その声には魔王の罠を疑う気持ちは微塵もなかった。
「シェリー、攻撃だ! 魔王の声を聞くな。罠かもしれない!」
私の注意に、ハッとしたシェリーだったが、魔王の次の言葉を聞いて、彼女はゆっくりと魔王の方へ歩みだした。
「シェリー嬢ちゃん、カーミガイル山に野ウサギを獲りに行ったことを覚えているか?
あの時はジンと一緒にしばらく行方不明になって心配したが、山菜を見つけて違う道に入ったジンを追いかけてくれたんだったな。
あの頃から、俺はエレノアと話していたんだ。シェリー嬢ちゃんがジンと結婚してくれればいいのになってな」
「……おじさま……」
「俺を探してずいぶん旅をしてきたんだろう? ジンは立派な騎士になったようだが、シェリー嬢ちゃんはジンから大事にしてもらえているか?」
「……は、はい。大切にしてもらっています。アタシもジンのことが大好きです……」
「それは嬉しいことだ。エレノアはもういなくなってしまったが、ジンの父として嬢ちゃんに祝福をしたい。もう少し側に来てくれないか?」
魔王がそう言う。私はシェリーを大声で止めた。これは罠以外の何物でもない。
ワインがいなくなった今、『乙女』であるシェリーまでいなくなったら、ジン様がどうなるのか、私には想像がつかないし、ジン様の嘆く姿を見るのも忍びない。
そして、私がジン様の心に空いた穴を埋められるとは、到底思えなかった。
「止めろ、シェリー! 目を覚ませ!」
私は魔王の魔力が急速に膨らむのを感じて、シェリーを引き戻すため、
「間に合えっ!『雷楔転移』!」
シェリーの近くに瞬間移動の楔を打ち込む。しかし、遅かった。
「シェリー嬢ちゃん、俺の息子はすぐに側に送ってやるぞ」
魔王の顔が、慈愛溢れるマイティ・クロウのそれから、醜悪な笑みを浮かべた魔王バーボンの表情に変わった。
「えっ!?」
シェリーが顔を青ざめて立ち止まった時、
ズブシュルッ!
地面から突き出した槍が、シェリーを串刺しにした。
「シェリーっ!」
槍はシェリーの両足の間から体幹を貫いて、左の首筋から出ている。槍が突き立った瞬間、シェリーの背中の透明な羽がパッと開いたが、それはすぐに細かく震え始め、10秒ほどで力なく垂れ下がった。
僕は、アイリスさんの観測結果を受けて、ワインに何か変事が起きたことは確実だと判断した。だとしたら、シェリーや、彼女を援護しに行ったラムさん、チャチャちゃんも危険だ。一刻も早く魔王と決着を付けねばならない。
「ワインは僕の幼馴染で、親友で、ドッカーノ村騎士団を立ち上げる際の功労者だ。
彼が魔王のせいでいなくなったのなら、僕は騎士として彼の仇を取らねばならない。アイリスさん、援護をお願いするよ」
僕はそう言って立ち上がる。先ほどのようなふらつきはなかった。
「……承知いたしました。ご主人様」
アイリスさんも、僕を止めることはできないと思ったんだろう。アンバーの瞳で僕を見て、そう返事をすると背中の槍を構えて僕に言った。
「ご主人様、うちの記憶媒体にはウォーラやガイアの記憶も残されています。二人とも、ご主人様のことが好きでした。もちろん、うちもご主人様のことが大好きです。
ですから、無茶だけはしないようにお願いいたします。ご主人様が無茶されたら、うちは自分の動きを制御できなくなりますので」
アイリスさんはそう言うとニコッと微笑んだ。その顔は、彼女の後継機であるPTD11『お姉さま』であるガイアさんや、PTD12『妹ちゃん』であるウォーラさんにそっくりだった。
「……分かった。善処しよう」
僕はそう答えて岩陰から出る。そして、いきなりアイリスさんとの約束を破ることになった。
「止めろ、シェリー! 目を覚ませ!」
ラムさんの声が聞こえたと思った次の瞬間、
ズブシュルッ!
何かが肉を突き刺す嫌な音と、
「シェリーっ!」
ラムさんの悲痛な声が響いた。
僕はそれを聞いた瞬間、『風の翼』を広げて魔王へと突進していた。
そして、その途中で『それ』を見た。
それはシェリーだった。槍に貫かれたシェリーだった。槍はシェリーの両足の間から体幹を貫き、左の首筋に抜けている。一目で、もう助からないと分かった。
シェリーの頭がゆらゆらと動き、どんよりとした目が僕を見る。シェリーは辛そうな顔をして、擦れた声で言った。
「ごめん、ジン。約束……破っちゃったね……」
シェリーはそう言って、がっくりと首を倒した。
「……う……そ……だ……」
僕は、目の前の光景が信じられなかった。僕の『乙女』、今度こそ、絶対に死なせはしない、ウェカみたいな目には遭わせない……そう誓った僕の目の前で、シェリーは息を引き取った。
『アタシは、絶対にジンの命令なしではジンより先に死なないから! だからジンも絶対に生き延びて!』
……そう約束したはずなのに。
「ジン、やっと復活したか。さあ、お前の花嫁があの世で待っている。今度こそ往生するんだな」
魔王がそう言って剣を振り下ろしてくる。だが僕は、もう何もかもがどうでも良くなっていた。何かどす黒いものが心の中で渦巻き、大声で叫びたい衝動が沸き上がってくる。
だが、僕は動けなかった。心の熱さと裏腹に、冷え冷えとした感情が僕をその場にくぎ付けにした。運命はどう足掻いても変えられなかった。だったら……
「死ねっ、『伝説の英雄』!」
……だったら魔王の運命も、俺に討たれるのだと、遠い昔からすでに決まっている。
ガキッ!
「何ッ!?」
僕は、無意識に魔王の剣を左腕で受け止めていた。剣は僕の腕に傷一つ付けられなかった。僕の身体は、翠色のハローを伴った金色の魔力で覆われ、紫紺の魔力がまるで煙のように僕の回りを揺蕩っていた。
「……俺が決めた『掟』を、勝手に書き換えるな」
ジンは静かにそう言って、魔王を睨みつける。その時、空中から声が聞こえた。
「『大いなる風が止んだ時、親子が相討つことになる/枝の親が子を倒し、摂理の外を破壊する』……わが、『破壊者』よ、予言の半分を成就せよ」
その声に促されるように、ジンの手刀が魔王の腹に突き立った。
ドムッ!
「があああっ!?」
魔王の絶叫が響く。ジンは魔王の手から剣をもぎ取り、
「……摂理に反する者が創り上げた剣か……魔剣パラグラムよ、汝は近い未来に汝を創りし者の血を吸うことになるだろう」
そうつぶやくと、
ドスッ!
「がはっ!」
魔王の胸に魔剣を叩き込む。
「魔法が、魔法が発動しない!? なぜだ、俺は摂理を超えた存在であるはずだ!」
魔王は口から血泡を吹きながらそう叫ぶ。しかし、空中に現れた女性は、冷たい声で魔王に告げた。
「魔族は摂理の最後の1ピース、汝魔王とて摂理を超えられぬ。摂理を超えし者はただ、我が生んだ『破壊者』のみ」
「……ぐぐっ……では、では『運命の背反者』すら……」
魔王が胸に突き立つ魔剣を両手で握りながら歯噛みすると、ジンは能面のような顔で、
「魔王よ、貴様に贈ろう。魔族の掟第5を。『勝って驕るな、負けて足掻くな。滅ぶときは王者のごとくあらねばならぬ』……先に虚空に還っていろ」
そう言った時、ジンの背中には黒い翼が生え、魔王を紫紺の魔力が包み込んだ。
(世界を狩ろう!その1に続く)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
退場しないと思っていたキャラが退場してしまいました。そう、ワインです。
ただ、バックナンバーをお読みいただくと分かりますが、ワインくんは自分の運命をかなり前から予見していたように思えます。最後の最後までジンのことを考えてくれたワインくん、作者のお気に入りの一人でしたが、ゆっくり眠ってほしいです。
それと、シェリーがやられてしまいました。『乙女』であるシェリーの退場はもっと後かなと思っていましたが、意外です。でも、まだ大事なキャラがジンくんの側にいませんので、何かちゃぶ台返しがあるのかもしれません。
魔王は、バーボンの気持ちを取り戻していたのでしょうか? もしそうなら、魔王にあるまじき『剣だけでの勝負』は、不器用だったバーボンの、『父としての最後の挨拶』だったのかもしれません。
さて、次回からは最終エピソード、『世界を狩ろう!』に入ります。最後まで『キャバスラ』をよろしくお願いいたします。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
【主な登場人物紹介】
■ドッカーノ村騎士団
♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させてきた。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』。
♤ワイン・レッド 18歳 ジンの幼馴染みでエルフ族。結構チャラい。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。
♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。
♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。『右鳳軍団』に先行し、ジンと合流を果たした。
♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。
♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形。ジンの魔力で再起動し、新たに仲間となった。
♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)28歳『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体であることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。現在、視力を失っている。
♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータだがその地位を剥奪された。『魔族の祖』アルケー・クロウの関係者で、彼を追っている。現在アルケー・クロウに囚われている。
■退場した仲間たち(退場順)
♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトでジンの騎士団に加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。
♡ウォーラ・ララ ジンの魔力で再起動した自律的魔人形。彼に献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。
♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。ジンの騎士団に所属して『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。
♡マディラ・トゥデイ 騎士団『ドラゴン・シン』事務長。金髪碧眼で美男子のような女の子。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに叩き潰された。享年20歳。
♡ソルティ・ドッグ 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。調査・探索が得意。『魔王親衛隊』のオデッシアが召喚したゴーレムに握り潰された。享年21歳。
♤ウォッカ・イエスタデイ 『ドラゴン・シン』の副官。オーガの戦士長、スピリタスの息子で無口・生真面目な性格。大陸武闘大会で3連覇を果たすほどの戦士だったが、魔王親衛隊クン・バハに止めを刺しつつも力尽きる。享年21歳。
♤ブルー・ハワイ 『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。記憶力と変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。魔王親衛隊クン・バハと対峙し善戦したが、隙を衝かれて敗死した。享年25歳。
♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。ジンと永遠の友情で結ばれ、魔王親衛隊隊長ファルカロスを倒したが力尽きた。享年21歳。
♡ジンジャー・エイル 本名キュラソー・マッケンロウ。闇魔法の使い手で、『PTD4・幽霊』を倒すも、右腕を失った。兄のテキーラと共に魔王の眷属と化したエレノアに挑み勝利するが、同じく眷属になった賢者スリングに殺された。享年21歳。
♤テキーラ・トゥモロウ 『ドラゴン・シン』団員で本名テキーラ・マッケンロウ。父はバーボンの異母兄コニャックでジンジャーは実妹。魔王親衛隊オデッシアに止めを刺した後、ジンの許に急行し、魔王の眷属・賢者スリングと相討ちになって果てた。享年24歳。
♤ダイ・アクーニン ドッカーノ村騎士団所属。賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。仲間のコア・クトーやシロヴィン・ボルドーの仇を討つため魔王と戦い善戦するが力及ばず敗死した。作戦ミスで魔王を完全復活させてしまった。享年28歳。




