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第6話 もったいない命
死ぬ場所を、探していた。
橋の上。
風が強い。
(ここなら終われる)
手すりを越える。
怖い。
でも、それ以上に——何もない。
父の声。
悠真の声。
美咲の涙。
(違うのに)
誰も信じなかった。
(疲れた)
一歩、踏み出す。
「——もったいないな」
振り返る。男。
「誰」
「通りすがりだ」
「死ぬ理由は?」
「関係ないでしょ」
「ある。価値あるものを捨てるな」
(価値?)
「全部、奪われた」
「なら、取り返せばいい」
(は?)
「何もないなら作れる。賭けられる。それは強さだ」
刺さる。
「できると思う?」
「できる。お前は、あの人の娘だ」
「……知ってるの?」
「黒崎玲子を」
涙が落ちる。
「俺は、あの人に救われた」
手が差し出される。
「全部、奪い返す気はあるか?」
震える手。
でも——終わりたくない。
「……ある。全部、取り返す」
「いい目だ。神代蓮だ」
「黒崎綾音」
もう一度、名乗る。
前を向く。
今度は、生きるために。
——この日、私は“奪われる側”をやめた。




