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第4話 帰る場所は、もうない
家に、帰る場所がなくなった。
「お姉様、これ……使ってもいいですか?」
美咲の手に、母のスカーフ。
(なんで、それを)
形見。
「似合うと思って」
「勝手に触らないで」
初めて強く言う。
空気が変わる。
「ごめんなさい……」
泣く。完璧な“被害者”。
「綾音」
父の低い声。
「何をしている」
「それは、お母さんの——」
「だからなんだ」
遮られる。
「もう終わったことだ」
(終わった?)
「私が悪いんです」
美咲が泣く。
「綾音、お前は冷たいな」
父が言う。
「思いやりを持て」
確定した。
私は、ここにいられない。
母の部屋。
鍵は変わっている。
(入れない)
もう、どこにもいない。
廊下の向こう。
父と美咲の笑い声。
(置き換えられた)
部屋に戻る。
空白だけが残る。
——ここにはもう、私の居場所はない




