第20話:奇縁
キュロの考案した作戦、うまく行っていたが大臣の横暴によって失敗。行き詰まった「UN」はどうするのか。
ー学徒監禁事件の終結から7時間後ー
ルナリスはマーレアの部屋に入る。
「叔母様…、話したいことがあるんだけど…良い?」
マーレアは読んでいた聖書を机に置いてルナリスを向く。
「ルナ、どうしたんだ?今日の事件のことなら私たちに任せてくれれば…。」
ルナリスが言葉を遮って話す。
「あの人達…『UN』は私たちを助けてくれたの。だから、その、死刑とか指名手配とかそういうのは…」
「駄目だとさっきも言ったろう。監禁を助けたとはいえ、その監禁を引き継ぎ、街の破壊、兵士への暴行、大臣殺害。十分すぎるほどに罪状は揃っている。」
ルナリスは不満そうな顔をしている。
「珍しいな、ルナ。今まで私の言う事をずっと聞いてきてくれたが、こんなに折れてくれないのは初めてだ。」
「だって、悪いのはわかってるけど、裁くのが完全に正しいとは思えないから…。」
マーレアは立ち上がって部屋のドアに手をかける。
「ルナ、一度だけだ。今回だけはルナの意見を尊重する。今までが私の横暴だったからな。今日は遅いからとにかく寝なさい。」
ルナリスは嬉しい顔をして私に目を合わせる。
「叔母様!ありがとう!おやすみなさい。」
ルナリスはウキウキして部屋に戻っていく。マーレアは部屋に鍵をかけて家の外に出る。
(流石に無罪放免とは行かない。元より平和を脅かす集団として警戒対象だった、ルナの願いは果たせないが…)
指を鳴らすとプレシオが瞬間的に現れた。
「プレシオ、前に資料庫に連れて行ったのは覚えているな?」
「勿論。」
「そこでカロカレッジに関する資料を見ただろう?それを記憶の限り書き写して『UN』に届けてくれ。」
(回りくどかったのは腹立たしいが、ルナを助けてもらった礼くらいはしてやろう。)
プレシオは一瞬驚いたような顔をするが、すぐに頷く。
「承知しました。明日の夜には出立できるよう致します。」
プレシオが消える。私は月を見上げる。
「凶兆…。」
私はなんとも言えない不安に包まれながら、また家に戻った。
ー翌日、『UN』ー
僕は作戦失敗に苛つきながら、キュロに話しかける。
「前にもらった情報の場所に行ってくるよ。暇だし苛つくから、発散のためにね。」
マップに前にキュロが調べてくれたカロカレッジの拠点を指さして話しかけると、キュロが
「私のスキルならすぐ連れていけますけど、そうしますか?」
「じゃあお願いしようかな。今すぐお願い。」
僕が魔法陣の上に立って、左小指を千切って置いた。
「『空間転送』!」
僕は血から視界が開けると、丘の上だった。丘下には3棟の建物が見える。
(右2棟が奴隷を管理する檻、左の建物が構成員のいる宿舎…。檻の鍵を全て外した上で、構成員を皆殺しにしてやる…。)
ー数時間後ー
外が暗くなってきたが、火が建物全体に燃え広がって辺りは昼のように明るい。
「なんなんだお前…!」
僕が倒れて叫ぶ男の頭を踏み潰した。僕の左手には他の構成員の首が、右手には千切った構成員の片腕が握られている。
(こんな平社員ばかりじゃあ情報なんて無いか…。気持ち良くもないし、来なくてよかったな…。)
僕の心には、16年間の焦りと苛立ちが蓄積した。
近くの池に両手の構成員だった物の一部を捨てると、木の上に気配を感じて見上げた。
木の上には、聖女長マーレアの腹心の部下、聖女長補佐プレシオが座っていた。前に港で出会った時とは違って、殺気立った目ではない。
「あぁ、前の聖女さん。なにか用?1人で捕まえに来た?」
プレシオが僕に手帳を投げる。それを受け取って開くと、中にはカロカレッジに関する詳細な調査が記されている。
「驚きだなぁ。なんで国賊の僕に情報を?」
「マーレア様のご指示だ。姪であるルナリスさんを助けてもらった借りだろう、それを受け取ってさっさと帰れ。」
僕は周囲の気配を感じ取った。
「帰っても良いけど…、君が生きて帰れないよ?」
僕が後ろを振り向いて、刃を素手で掴むと指から血が流れた。
(マナの強化を破る切れ味…、良い剣を持ってるな。)
刃は奥の森林から続いて伸びてきている。刃を掴んだまま使い手を引っ張り出そうとすると、急に刃が縮んで僕の眼の前に男が迫ってくる。
顔を狙う男の膝の間に右掌を割り込ませてダメージを抑えると、プレシオが顔を袖で隠した。
「ねぇ、こいつ誰?騙し討ち?」
「違う…!王国暗部だ。後をつけられていたか…。」
僕はプレシオに話しかける。
「気配的に、こいつ単独だよ。僕がこいつを殺せば君やマーレアの行為が国にバレず、僕も情報を持ち帰れる。どう?」
プレシオは疑いの目を向けていたが、振り返って走り出す。
「感謝する…!」
男が剣を振る。
「『エッジコブラ』。」
男は剣を変形させてプレシオの背中を高速で狙ったが、僕が殴って刃を弾いた。
「邪魔をするな国賊。俺は裏切り者を始末したいだけ、お前らには関係ないだろう?」
男は剣を普通の形に戻し、独特な構えを取る。僕は手帳をローブのポケットに仕舞って、切れた指をペロッと舐めて向き直る。
「いやぁ、協力者なもんで…。約束しちゃったし、君にここの取引の情報は持ち帰らせないよ?」
ー刺客との遭遇ー




