最終回 百花繚乱
数年後、俺たちのクランハウスが完成した。タワーマンションの最上階。360度のパノラマビュー。東京の街が一望できる。
「いい景色だな」
俺はリビングの窓から外を見ていた。夕日がビルの窓をオレンジ色に染めている。
「綾斗、ご飯できたよ」
萌香がキッチンから声をかける。彼女の作る料理は相変わらず絶品だ。巴母さんに鍛えられた刀の腕もすっかり上達した。今ではS級探索者として堂々と戦える。
「今日は何だ?」
「すき焼き。最高級の肉よ」
「すごいな」
食卓には皐月、悠花、琴音、瑞葉、梨々香、瀬里奈が揃っていた。全員が俺の嫁だ。S級探索者になった俺たちは父さんと同じ重婚を認めてもらい、正式に結婚した。
「みんな揃ってるわね」皐月がグラスを掲げる。
「今日は何かあったっけ?」俺が聞く。
「何もなくても揃って食べるのが家族でしょ」悠花が微笑む。
「そうだな」
「綾斗、最近ダンジョンばかりで私たちと過ごす時間が少ないわよ」琴音が唇を尖らせる。
「そうか?」
「そうよ。S級探索者になってから忙しすぎ」
「ごめんごめん。でも若洲ダンジョンの定期攻略は必要だからな」
「わかってるけど」
「まあまあ」瑞葉が取りなす。「綾斗は私たちのために頑張ってくれてるんだから」
「瑞葉はいつも綾斗に甘いわね」瀬里奈が笑う。
「だって本当のことだもん」
「私はもっと綾斗と一緒にいたいだけよ」瀬里奈が小さく言う。
「瀬里奈‥」
「でも我慢する。綾斗はクランのリーダーだもん」
「ありがとう瀬里奈」
俺たちのクラン百花繚乱は500人を抱える大クランに成長していた。祝福の絆から移籍してきた者、新しく探索者になった若い子様々な人材が集まっている。同じタワーマンションにはクランメンバーたちが住んでいる。
「そういえばヒカリは元気にしてる?」萌香が聞く。
「ああ。自分のクランを作って逆ハーレムクランで頑張ってるよ」
「逆ハーレム?」
「男性を仲間にしてバフをかけるクラン。万夫奮起のスキルを活かしてる」
「ヒカリちゃんらしいわね」悠花が笑う。
「ヒカリのクランメンバーたちが年上なのに俺のことをお兄さんと呼んでくるのは慣れないな」
「お兄さん?」
「ヒカリの婚約者たちらしい。全員俺より年上なのに」
「へえ。ヒカリもやるじゃない」琴音が感心する。
「父さんに似たんだろうな」
「綾斗も人のこと言えないでしょ」皐月が笑う。
「そうか?」
「7人も嫁がいるんだから」
「それは…そうだな」
食後、俺たちは最上階の大浴場に向かった。ここがこの家で一番のお気に入りだ。広い浴槽に東京の夜景が一望できる。
「最高の景色ね」皐月が湯船に浸かりながら言う。
「こんなビルに住めるなんて、探索者って夢があるよね」萌香が湯船の縁に座る。
「綾斗の力だね」悠花が微笑む。
「父さんから受け継いだ力のおかげだよ」
「それも綾斗の力だよ」琴音が言う。
「そうかな」
「そうだよ。綾斗が頑張ったからここまで来れたんだよ」梨々香が頷く。
「あの時、協会で綾斗に出会って私たちの人生も変わったよ」瑞葉が言う。
「俺もだよ。みんなに出会って俺の人生も変わった」
「これからもよろしくお願いします」瀬里奈が頭を下げる。
「私が支えてあげるわ」皐月が笑う。
「頼もしいな」
「ええ。神級ダンジョンだって攻略してみせるわ」
「いつ神級が現れるかな?」
「いつかはわからないわね。でもその時は私たちが戦うわ」
「そうだな。俺たちが戦う」
俺たちは湯船に浸かりながら夜空を見上げた。星は見えないけど街の灯りが星みたいに輝いている。
「綾斗」萌香が俺の肩に頭を乗せる。
「ん?」
「幸せだね」
「ああ。幸せだ」
「ずっとこのままでいようね」
「ああ。ずっとこのままでいよう」
俺は7人の嫁たちと一緒に夜空を見上げた。父さんたちが守ってきた世界。俺たちが受け継いだ世界。これからも守り続ける世界。
「そういえばさ」俺が切り出す。
「何?」皐月が聞く。
「父さんたちが引退して後輩の育成に勤めてるんだよな」
「そうね。若い探索者たちの指導をしてるって聞いたわ」
「俺たちもいつかそうなるのかな」
「まだ早いわよ」琴音が笑う。
「まだまだ現役よ」瑞葉も頷く。
「私たちはこれからよ」悠花が微笑む。
「S級探索者になったばかりだもんね」梨々香が言う。
「もっと強くなるわよ」瀬里奈が拳を握る。
「そうだな。まだまだこれからだ」
「神級ダンジョンがこっちの世界にも現れるかもしれないしね」皐月が言う。
「その時は俺たちで攻略する」
「当然よ」
「よし、明日からまた頑張るか」
「ええ。でもその前に…」皐月が俺に近づく。
「何?」
「今夜は私たちとやるんでしょ?」
「ああ。もちろん」
「じゃあ上がりましょうか」
「そうだな」
俺たちは湯船から上がって寝室に向かった。8人で寝るには広すぎるベッドがそこにある。
「綾斗、こっち来て」萌香が手を引く。
「ああ」
「今日は私が一番よ」悠花が言う。
「何を決めてるんだ」
「順番よ。ちゃんと決めないと不公平でしょ」
「お前らな…」
「文句ある?」琴音が聞く。
「ないです」
「素直でよろしい」
「じゃあ始めましょうか」皐月が微笑む。
夜も更けて、俺たちはベッドに橫たわり、互いの温もりを感じながら眠りについた。明日もまた新しい一日が始まる。でも今はこの幸せな時間を大切にしたい。
「おやすみ、みんな」
「「おやすみ、綾斗」」
7人の声が重なる。俺は目を閉じて深い眠りに落ちていった。
数年後、俺たちはS級探索者として多くのダンジョンを攻略した。若洲ダンジョンは月に1回の定期攻略でモンスターの氾濫を防いでいる。そのついでに異世界旅行を楽しんだり、カグヤ母さんの家族に会って涙の再会をしたりもした。
父さんたちは引退して後輩の育成に勤めている。彼らが守ってきた世界を今度は俺たちが守る番だ。
「綾斗、準備できた?」萌香が声をかける。
「ああ。今日は若洲ダンジョンの定期攻略だ」
「今回は新人も連れて行くんでしょ?」
「ああ。百花繚乱の若い子たちをな。実戦経験を積ませるいい機会だ」
「私たちも負けないわよ」
「頼もしいな」
「当然でしょ。S級探索者なんだから」
「そうだな」
俺たちはクランハウスを出て若洲ダンジョンに向かった。空は青く晴れている。風が気持ちいい。
「父さん。俺たちは大丈夫です。あなたたちが守ってきた世界を、今度は俺たちが守ります」
俺は心の中でそう呟いて歩き出した。隣には7人の嫁たちがいる。後ろには500人の仲間たちがいる。
百花繚乱。花はまだ増え続ける。そして美しく咲き誇る。
これからも俺たちの冒険は続いていく。神級ダンジョンが現れるその日まで。俺たちは強くなり続ける。
「行くぞ、みんな!」
「「おー!」」
500人の声が空に響き渡った。百花繚乱の花たちは、今日も元気に咲き誇っている。
2回目の完結まで、お付き合いいただきありがとうございました




