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人間には向いていない  作者: 咲紫きなこ
三人なら
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27ページ

 今日は創麗学園の文化祭、生徒だけの部の日だ。

 二年生はA組とB組合同で喫茶店をやる事になっていた。

 女子はメイド服、男子はギャルソンに身を包み軽い食べ物と飲み物を用意して接客する。

 真希はメイド服、黒木はギャルソン、結居蘭はうさぎの着ぐるみを着て看板持ちをしていた。

 黒木の周りにはミツバチが今日も集まり騒がしい。


「黒木様かっこいいー」

「こっちむいてー!」

「みんなもかわいいよ」

「きゃー!」


 そんな姿を横目に、真希は接客をしていた。黒木も接客の時間なのだが、お客さんが少ない今はミツバチ達の相手をしていた。

 真希は黒木の元へと行くと早く戻れと言った。

 黒木はミツバチ達に投げキッスをした後、真希の元へと戻って来た。


「ったく一々うるせーミツバチだぜ」

「みんな、僕のかっこよさを分かってくれてるんだよ」

「それは良いけど、当番サボんなよな」

「いつも授業をサボるお前が珍しい」

「サボられたらあたしが困るからな」


 しばらくして当番交代の時間が来たので、真希と黒木は入り口にいる結居蘭の元へと急いだ。

 うさぎの着ぐるみを見つけると真希は肩を叩き結居蘭の名前を呼んだ。


「ゆずき?」

「当番変わりの時間きたから迎えにきた。ゆいらも行こうぜ」

「うん」


 着ぐるみの頭をゆっくりとり、体の部分も脱いだ。

 結居蘭は制服姿だ。


「ゆいらちゃん、お疲れ様」

「二人共おつかれ」

「あたし達も文化祭周ろうぜ」

「うん」


 三人はそう言って文化祭を周る事にした。

 かと言って周ると言っても食べ物屋が多い。

 お化け屋敷もあったのでそれに入る事にした。

 結居蘭と真希は普通に驚いたりしたが、黒木は女の子のお化けに対して「おばけ役の君、かわいいね」などと余計な事を言ったりして全く怖がらなかった。

 次に結居蘭と真希はクレープを買いチョコバナナを買った。黒木は購買でおにぎりを三つとお茶を買った。

 その後、結居蘭と真希は自動販売機でジュースを買った。

 そして西校舎へと向かい、階段を一番上まで登る。

 三人は西校舎の屋上へ来た。

 下を見ればちょうどチア部のステージがやっていたので、食べ物を食べながらそれを見た。

 誰かいるだろうと思っていたが、屋上には三人しかおらず快適だ。


「クレープうめぇ」

「美味しいね」

「良かったね」


 明日は一般客が来場してもっと忙しくなるだろう。


「明日めんどくせぇな」

「いろんな人が僕を見にくると思うと楽しみだよ」

「めんどくさいけど……三人なら、大丈夫」

「そうだな! 良いこと言うなゆいら」

「流石ゆいらちゃんだね」


 そのまま三人はステージを眺めた。


              ***


 次の日、一般客来場の日がやって来た。

 忙しさは昨日の比ではなく、沢山の人がやって来た。

 一般客にも黒木のかっこよさは通じたらしく「あの人かっこいい」と様々な人から言われたり話しかけられたりした。それに対して黒木は良い気分で機嫌が良かった。

 真希は忙しくて黒木の事を見ている暇はなく、珍しく文句などは言わなかった。

 今日は当番が変わる時間が被らなかった真希と黒木、先に黒木が当番を終えた。

 黒木は入り口に向かい、着ぐるみを着た結居蘭の肩を叩き名前を呼んだ。


「くろきさん?」

「そうだよ。外に宣伝しにでも行こうよ」

「良いよ」


 そうして結居蘭と黒木は外に向かって歩き出した。


「看板持とうか?」

「いや、大丈夫。私の仕事だから」


 外に出ても、黒木の人気は変わらず、女の子が集まって来たりした。それに一々対応しては「二年の教室で喫茶店をやっているから、良かったら遊びに来てね」と宣伝した。

 結居蘭はこれ見よがしに看板を動かしてどこでやっているかを教えた。

 人混みを二人で歩いてしばらくした頃、学校の入り口近くまで来た。


「ゆいらちゃん疲れてないかぃ? 平気?」

「大丈夫だよ」

「じゃあ行こうか」


 まだ周っていない所へ足を進めようとしたその時、結居蘭がその場から動かない事に気がついた。


「ゆいらちゃん?」


 結居蘭は入り口付近を見つめていた。その先には男子と女子の姿があった。

 先程まで動かなかった結居蘭が急に走り出し、入り口を後にする。黒木はそれにびっくりしたが、結居蘭の後を急いで追った。結居蘭よりも黒木の方が足が速いのですぐに追いついた。

 そして結居蘭の肩を掴み声をかけた。


「待って、ゆいらちゃん。どうしたの?」

「……」


 結居蘭は何も答えなかった。ただ、このままではいけないと思った黒木は、結居蘭の手を握り、西校舎の方へ急いだ。

 人が幾分少ない西校舎の脇で、結居蘭が被っているうさぎの着ぐるみの頭を取り去った。

 そこには涙を流し、顔を歪ませた結居蘭の姿があった。


「ゆいらちゃん⁉︎」

「ごめん……私……」


 涙が止まらない結居蘭の姿に驚きを隠せない黒木だったが、すぐに結居蘭を抱きしめた。

 その行動に、結居蘭は嫌気がさし、離れようとするが、黒木は結居蘭の手を握り声をかけた。


「大丈夫。僕はここに居る」

「やめて」

「大丈夫。僕は女だ。君の知る男じゃない」

「やめ……」


 はっとして結居蘭は今こうして私を落ち着かせようとしている人が、あの人ではない事に気がついた。

 そう気づいた途端に、結居蘭は体を黒木に預け、静かに泣いた。

 黒木は優しく結居蘭の背中を撫でてやった。


「大丈夫…‥大丈夫だよゆいらちゃん」


 しばらくして落ち着いた結居蘭は黒木から離れた。

 黒木は結居蘭の手を優しく握ってやると、そのまま顔を見つめた。


「何があったか、教えてくれる?」

「うん」


 そして結居蘭はゆっくりと話始めた。

 先程入り口で中学時代の彼氏がいたと言う。

 女の子と歩いていたが、顔を見たらすぐにその人だと分かったそうだ。

 結居蘭の中で一番嫌な出来事は彼氏に言われた言葉と行動だ。

 あんな事を言われる前は優しく頭を撫でられたり、抱きしめられたりしていたと言う。

 それを思い出し、あの人の前から逃げなければと言う気持ちになったそうだ。

 黒木に抱きしめられた時も、その時の記憶が思い出され、嫌な気持ちになったそうだが、そもそも黒木は女で友達で自分を落ち着かせようとしてくれているのに失礼な態度をとったと、結居蘭は黒木に謝った。

 黒木はそんな事気にしていないと笑った。


 二人はクラスに戻ると、真希とちょうど会ったので三人で外周りをした。

 そして文化祭は大盛況の中終わりを告げた。

読んでくださりありがとうございます。

よろしければブックマークや評価や感想やいいね等お願いします。

次回もお楽しみに。

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